研究課題/領域番号 |
23K20227
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補助金の研究課題番号 |
20H01841 (2020-2023)
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 基金 (2024) 補助金 (2020-2023) |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分13020:半導体、光物性および原子物理関連
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研究機関 | 奈良先端科学技術大学院大学 |
研究代表者 |
松下 智裕 奈良先端科学技術大学院大学, 先端科学技術研究科, 教授 (10373523)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
17,680千円 (直接経費: 13,600千円、間接経費: 4,080千円)
2024年度: 2,470千円 (直接経費: 1,900千円、間接経費: 570千円)
2023年度: 2,470千円 (直接経費: 1,900千円、間接経費: 570千円)
2022年度: 2,860千円 (直接経費: 2,200千円、間接経費: 660千円)
2021年度: 4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)
2020年度: 5,590千円 (直接経費: 4,300千円、間接経費: 1,290千円)
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キーワード | 原子分解能ホログラフィー / ドーパント / 原子配列 / 光電子ホログラフィー / 蛍光X線ホログラフィー / 光電子ホログラフィ / 原子分解能ホログラフィ / 原子像再構成理論 / 層状半導体 / インターカレーション / 元素別局所構造解析 |
研究開始時の研究の概要 |
機能性物質を作成する際に多くの場合はドーピングして物性を制御する。申請者が研究してきた原子分解能ホログラフィー(光電子、蛍光X線、中性子によるホログラフィー)は直接ドーパントの立体原子配列を可視化できる。ホログラムから実空間像に変換する理論が重要な鍵である。本研究では、原子分解能ホログラムを実測し、それを用いてインフォマティクス応用した新たな像再生理論の研究を進める。
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研究実績の概要 |
物質中のドーパント(不純物)の原子配列を立体的に測定する方法として、光電子ホログラフィーの研究を進めている。ドーパントの立体原子配列の測定は既存技術では難しいため、この研究の進展により物性物理学に新たな分野が切り開かれると考えられている。測定方法は、サンプルに軟X線を照射し、ドーパントから放出された内殻光電子の放出角度分布を測定することである。これがドーパントの周囲の原子配列を記録した光電子ホログラムとなる。ホログラムであるため、基本的には初期情報を必要とせず立体原子配列を再構成できるが、実測データへの適用には様々な困難が伴う。本研究の主目的は、立体原子配列を再構成するためのデータ処理とアルゴリズムの開発である。そのために、様々な物質の光電子ホログラムを実測している。まずインターカレーションした層状半導体のグラファイト、MoS2、Bi2212などについて光電子ホログラムの測定を行っている。加えて共同研究者と共に、ダイヤモンド、GaN、SiC、ペロブスカイトなどのドーパントの光電子ホログラム、ダイヤモンドやGaN上の絶縁膜界面の光電子ホログラムの測定を行っている。このように多様なサンプルに対する実測データを用いることが、実測データを処理するプログラムの開発には重要である。この多様なデータを利用して汎用的に適用できる理論の開発を進めている。実データにホログラム再生計算を適用するには、バックグラウンド処理などの多くの事前処理計算が必要であり、このデータ処理法の開発を進めている。また、複数の原子像再生法の研究を進めており、SPEA-L1の高度化を進めると共に、ニューラルネットワーク、リバースモンテカルロ法や遺伝的アルゴリズムなども試し、それぞれの計算法の有効性の検討を行っている。これらの成果は日本物理学会や放射光学会で報告した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
新しい立体原子像再構成理論の確立に向けて、その基礎データとなる多くの光電子ホログラムの測定を進めた。連携する研究者と共にSPring-8に課題を申請し、光電子ホログラフィー関連で14件の課題が採択され、研究を遂行した。測定装置は研究代表者が発明した阻止電場型電子エネルギー分析器である。まず、従来の原子像再構成理論SPEA-L1の問題点であった、強度の弱い原子像が再生されない点について改良を行った。計算の途中にガウスニュートン法を挿入することで、原子像が改善されることがわかり、学会で報告した。ニューラルネットワークやリバースモンテカルロ法についても研究し、その有効性を学会で報告した。また、光電子運動エネルギーを操作しながら測定した多重エネルギーのホログラムに対して、情報理論で用いられる主成分分析を用すると精度良く情報が引き出せることが判明し、これも学会で報告している。これらの開発した理論を応用して、グラファイト、MoS2、Bi2212にアルカリ金属を蒸着してインターカレーションした原子配列や、ペロブスカイト、半導体など多くの物質について学会で報告した。開発したデータ処理手法は申請者が開発しているソフトウェアプラットフォーム3D-AIR-IMAGEに実装を進め、インターネット上に公開した。
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今後の研究の推進方策 |
2023年度は多くの光電子ホログラムのデータセットを計測することに成功した。さらなるデータ取得に向けて、2024年のSPring-8のビームタイム申請を進めている。得られた多様な光電子ホログラムデータに対して、有効な実測データ処理技術の確立と立体原子配列の再生アルゴリズムを深化させていく。具体的には、原子サイト毎の光電子ホログラムを高精度で分離するための主成分分析によるアルゴリズムの確立、原子像再構成のためのSPEA-L1の高速化と精緻化、ニューラルネットワークによる原子像再生理論の開発、事前情報を用いて高精度に原子配列を再構成するリバースモンテカルロ法の開発などである。これらを元に、層状半導体のインターカレーションや様々な物質のドーパントなどの研究を進め、論文化を行う予定である。
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