研究課題/領域番号 |
23K20239
|
補助金の研究課題番号 |
20H01947 (2020-2023)
|
研究種目 |
基盤研究(B)
|
配分区分 | 基金 (2024) 補助金 (2020-2023) |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分16010:天文学関連
|
研究機関 | 東北大学 (2024) 大阪大学 (2020-2023) |
研究代表者 |
野田 博文 東北大学, 理学研究科, 准教授 (50725900)
|
研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2025-03-31
|
研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
|
配分額 *注記 |
15,600千円 (直接経費: 12,000千円、間接経費: 3,600千円)
2024年度: 2,080千円 (直接経費: 1,600千円、間接経費: 480千円)
2023年度: 2,860千円 (直接経費: 2,200千円、間接経費: 660千円)
2022年度: 3,250千円 (直接経費: 2,500千円、間接経費: 750千円)
2021年度: 3,250千円 (直接経費: 2,500千円、間接経費: 750千円)
2020年度: 4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
|
キーワード | X線天文学 / 活動銀河核 / ブラックホール / 精密X線分光 / 多波長観測 / 超巨大ブラックホール / 多波長モニタ観測 / XRISM / X線マイクロカロリメータ / X線CCDカメラ / 巨大ブラックホール / X線CCD |
研究開始時の研究の概要 |
超巨大ブラックホールのスピン(角運動量)を測定する有効な手段の一つが、X線帯域に現れるFe-Kα輝線のプロファイルから相対論的効果の度合いを見積もる方法である。しかしこれまでは、連続スペクトルの決定精度やX線分光性能が十分でなかったことが要因となり、高い信頼度での測定が困難だった。本研究では、2023年9月7日に打ち上げに成功したX線天文衛星XRISMを用いて活動銀河核からのX線放射を精密に分光するとともに、地上望遠鏡も組み合わせて多波長の同時観測を行い、時間変動解析によって連続スペクトルを精確に定量化する。これらの手法を組み合わせ、超巨大ブラックホールのスピンを高い信頼度で測定する。
|
研究実績の概要 |
当該年度は、本研究に不可欠となる精密X線分光を実現するX線天文衛星 XRISM (X-Ray Imaging and Spectroscopy Mission) の搭載検出器の打ち上げ前準備を進 め、2023年9月7日、無事、打ち上げに成功した。その後は、軌道上運用を進め、検出器を立ち上げ、X線マイクロカロリメータ (Resolve) およびX線CCDカメラ (Xtend) を用いて活動銀河核 NGC 4151 を含む複数の天体の観測に成功した。活動銀河核の相対論的 Fe-Kα 輝線プロファイルを作成するための連続X線スペクト ルの評価に重要となるX線CCDカメラは、地上試験で確認された撮像領域の外で生じた異常電荷が撮像領域に侵入する事象は発生せず、良好な性能を軌道上で達成 した。今後は、XRISM を用いて本研究に適した活動銀河核の観測を行い、Resolve による精密X線分光データおよび Xtend による撮像分光データの解析を進め る。 XRISM と同時に多波長で活動銀河核を観測するため、岡山天体物理観測所のせいめい望遠鏡や西はりま天文台のなゆた望遠鏡をはじめとする複数の地上望遠鏡に 観測提案を行った。そして、XRISM とほぼ同時に、これらの地上望遠鏡でも活動銀河核からの可視光と赤外線の観測を行うことに成功した。その結果、Fe-Kα 輝 線の速度幅と広輝線領域から生じる Hβ 輝線のプロファイルを直接比較できるデータを取得することに成功し、Fe-Kα 輝線の放射源に強い制限を与えられる見 込みが得られた。国際会議や国内の研究会において、これまで本研究で得られたXRISM搭載検出器の開発や XRISMによる天体観測の結果、XRISM と多波長での同時 観測の展望について招待講演や口頭発表を行った。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
X線天文衛星 XRISM は数度の打ち上げ延期があったものの、2023年9月7日に無事打ち上げに成功した。また、搭載したX線マイクロカロリメータ (Resolve) は ゲートバルブを開くための運用がまだ完了していないものの、本研究で焦点を当てる 6 keV 周辺の精密X線分光は実現し、すでに複数の活動銀河核の観測に成功 している。連続X線スペクトルの評価に不可欠となるX線CCDカメラ (Xtend) は、打ち上げ後、分光性能を向上させるために人工的に電荷注入を行う行が天体の像 と重なってしまうことが判明したため、行の位置を変更する想定していなかった運用を行った。今のところ地上試験で発生した異常電荷事象が軌道上で発生して おらず、良い性能を発揮し続けている。したがって、観測時期が想定より遅れたり、一部想定外の状況は発生したものの、本研究に適した活動銀河核の XRISM の 観測データは順調に取得できつつあると考えている。 地上望遠鏡による多波長観測も、XRISM の打ち上げ延期に伴って時期が想定より遅れたが、XRISM が打ち上がり検出器が稼働し始めた後、岡山天体物理観測所の せいめい望遠鏡や西はりま天文台のなゆた望遠鏡など、当初から想定していた主要な望遠鏡を用いて無事に XRISM と同時に可視光および赤外線の観測に成功し た。これらの望遠鏡を用いて良質な可視光分光データも得られている。XRISM による観測の間の期間も観測を継続しており、反響マッピングなどを利用して活動 銀河核の広輝線領域やダストトーラスの構造を制限するためのデータも取得しつつある。これらのことから、精密X線分光と多波長観測の双方において、本研究は おおむね順調に進展していると考えている。
|
今後の研究の推進方策 |
XRISM はすでに本研究に適した活動銀河核を複数観測してきたが、2024年8月ごろまでは Performance Verification (PV) 期間としてこれまで計画してきた天体 の観測が順次行われる予定である。そこで今後はまず、これらの活動銀河核の新たな XRISM 観測データの解析を進める。相対論的 Fe-Kα 輝線プロファイルを作 成する際、そこに系統的に影響を与えると考えられる中性の非相対論的 Fe-Kα/Kβ 輝線、Fe XXV/XXVI 吸収線、コンプトンショルダーなどの微細スペクトル構 造を正確にモデル化し、差し引く。さらに、XRISM PV 期間終了後から始まる公募観測においても、本研究に適した複数天体の XRISM 観測を提案した。これらが 受理されれば、2024年9月ごろから観測が始まるため、新たな天体データが得られしだい解析を進めていく。 PV および公募観測による XRISM の観測時期に合わせて、岡山天体物理観測所のせいめい望遠鏡や西はりま天文台のなゆた望遠鏡などに可視光・赤外線の観測提 案を行い、観測を進める。この時、XRISM の観測時期以外の時期も観測を行い、XRISM 観測時の活動銀河核の状態を探る。得られた撮像データや分光データを解 析し、XRISM 搭載 X線 CCD カメラの観測データと組み合わせることで、連続X線スペクトルを精確に定量化する。 微細スペクトル構造と連続X線スペクトルが定量化できたら、データからこれらを差し引き、相対論的 Fe-Kα 輝線プロファイルを作成する。これを、超巨大ブ ラックホール (SMBH) 周辺の降着円盤の内縁半径や emissivity radial profile などをパラメータとする放射モデルで再現することで、内縁半径から SMBH スピ ンを高い信頼度で決定する。
|