研究課題
基盤研究(B)
後期第四紀の気候変動の代表的なメカニズムとして,氷期・間氷期変動(ミランコビッチサイクル),ダンスガード・オシュガーサイクル,ハインリッヒイベント,ボンドイベントがある.私たちが復元した温度に,これらがどのように影響を与えたのかについて解析を進める.さらに,気候・ヒト・社会や文化のつながりの枠組みで,「気候・環境」が影響を与える主要な因子には「食糧・生業・経済」,「ヒト」,「人間社会・文化・文明」がある.特に,日本社会が経験した10の革新的な出来事において,その関係を明らかにする.
江戸時代は,北半球の平均気温が0.6℃ほど低下したと推定される「小氷期」と呼ばれる寒冷な時代であった.このように寒冷化が常態化した条件で,火山噴火やエルニ-ニョなどが起こると,極端な冷夏が訪れる.日本では江戸時代後半に顕著な冷夏により天明・天保の大飢饉などを経験した.天明の大飢饉は主に極端な冷夏によって引き起こされた.これは1782~87(天明2~7)年の6年もの長期間継続した.特に甚大な被害を被ったのが東日本と東北日本であったが,九州,四国でも被害が報告されており,被害は全国的規模であった.幕府による1780年と1792年の人口調査によると,人口は1,119,059人減少となり,全人口の約3%に達する人命が失われたことになる.従来,天明の大飢饉の主たる原因は,浅間山の噴火であると説明されてきたが,文献調査をしした結果,これは正しくないことが判明した.浅間山の本格的な噴火は1783年7月で,それ以前に飢饉の前兆となる「ヤマセ」が三陸海岸では吹いていた.1783年には青森県弘前市にある岩木山も噴火したので,東日本と北日本の耕作地は降灰を被った.降灰は農作物の収量低下を引き起こし,量が多くなると大凶作となる場合が多い.東北地方は「天明・天保の大飢饉」を経験し,仙台藩の文書によれば米の収量が30%以下まで落ち込んだことが記録されている.私たちのこれまでの成果に基づくと,「天明・天保期の寒冷イベント」は過去8,000年間で最寒期であると予想される. 今回,松島湾内で堆積物柱状コアの入手ができた.松島湾は内湾で水深が4mと浅いが,江戸時代の環境復元に最適で,天明・天保期の堆積物は,海底面より20から40cmの深さにあると推定される.海底柱状試料を採取し,日本の歴史記録と環境の関係を明らかにしたい.
2: おおむね順調に進展している
予定されたコアを採取し,2024年の向けて試料が準備された.
2024年度に高時間解像度(1から10年)で,定量的な環境復元(水温,降雨,塩分,生物生産など)の分析を行う予定である.
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