研究課題/領域番号 |
23K20246
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補助金の研究課題番号 |
20H02010 (2020-2023)
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 基金 (2024) 補助金 (2020-2023) |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分17040:固体地球科学関連
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研究機関 | 大阪公立大学 (2022-2024) 大阪市立大学 (2020-2021) |
研究代表者 |
柵山 徹也 大阪公立大学, 大学院理学研究科, 准教授 (80553081)
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研究分担者 |
清水 健二 国立研究開発法人海洋研究開発機構, 超先鋭研究開発部門(高知コア研究所), 主任研究員 (30420491)
羽生 毅 国立研究開発法人海洋研究開発機構, 海域地震火山部門(火山・地球内部研究センター), センター長代理 (50359197)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
17,160千円 (直接経費: 13,200千円、間接経費: 3,960千円)
2024年度: 1,820千円 (直接経費: 1,400千円、間接経費: 420千円)
2023年度: 2,340千円 (直接経費: 1,800千円、間接経費: 540千円)
2022年度: 2,080千円 (直接経費: 1,600千円、間接経費: 480千円)
2021年度: 2,730千円 (直接経費: 2,100千円、間接経費: 630千円)
2020年度: 8,190千円 (直接経費: 6,300千円、間接経費: 1,890千円)
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キーワード | 玄武岩 / 揮発性成分 / 停滞スラブ / メルト包有物 / 含水量 / 上部マントル / マグマ生成過程 / 超背弧域 / ユーラシア大陸東縁部 / 背弧域 / 水 |
研究開始時の研究の概要 |
ユーラシア大陸東縁部上部マントルにおける熱・物質循環過程を明らかにすることを目的に,中国,韓国,西南日本を中心に,新第三紀後期から第四紀にかけて噴出した,特に高発泡度かつ未分化になるべく近い玄武岩試料を採取する.それらの試料について全岩化学組成,斑晶化学組成,および斑晶に含まれるメルト包有物の揮発性成分組成分析を行い,初生的なマグマ揮発性成分量を推定する.その上で当該地域下の上部マントル化学組成・マグマ生成条件の時間・空間変化を明らかにし,海洋プレート沈み込みを通した島弧から超背弧域にいたる上部マントル物質における循環過程を解明する.
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研究実績の概要 |
韓国・済州島で採取したスコリアから分離したかんらん石斑晶の研磨作業を進め,メルト(ガラス)包有物約100粒の表面出しを行った.研磨したメルト包有物中の揮発性元素組成(水,二酸化炭素,フッ素,塩素,硫黄)を測定するために二次イオン試料分析装置(SIMS)を用いた分析(JAMSTEC高知コア研究所),主成分元素組成を測定するために電子線マイクロプローブアナライザ(EPMA)分析(大阪公立大学)を実施した. 前年度までの実績から,神鍋火山のデータを増やす必要があると判断し,追加でスコリア試料を採取した上で,分離したかんらん石斑晶約1万個から分析に最適なメルト包有物約300個を新たに研磨した. SIMSによる揮発性成分分析,EPMAによる主成分元素組成分析,レーザーアブレーション誘導結合プラズマ質量分析装置(LA-ICP-MS)を用いた微量元素・Pb同位体比分析を行った.一部の試料において,揮発性成分量や元素比(Cl/F, H2O/F等)が,先行研究で報告のある他地域の結果を内挿して予想される値と大きく異なること,微量元素比,Pb同位体比のいずれもが,従来のモデルでは説明できない値を示すことが確認された.その原因として下に沈み込むスラブや従来考えられていた沈み込み帯上部マントル物質とは異なるマグマ起源物質がある可能性が考えられる. 前年度までに採取済みの隠岐島後玄武岩,五島列島福江島玄武岩,丹後半島に分布する第三紀玄武岩試料(約18-21 Ma)試料,兵庫県北部第四紀火山玄武岩(扇ノ山火山,田倉山火山,目坂火山)について,岩石薄片を追加で作成し,EPMAを用いて斑晶鉱物の化学組成分析を行った.五島列島福江島玄武岩については全岩微量元素・Sr-Nd-Pb同位体比分析を共同研究機関(北海道大学)の協力の下実施し,福江島全体の火山分布と化学組成の間に系統的な変化があることを新たに見出した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
計画当初予定しいた中国東部大同地域における第三紀・第四紀玄武岩試料の採取は,新型コロナウィルスによる出入国制限により研究期間中での試料採取は断念している.一方それ以外の地域(韓国,西南日本,中国東北部)における試料採取や各種分析は,予定は若干ずれ込んではいるもののほぼ計画通りの内容で進められており,2024年度までに完了する見込みである.特に 韓国・済州島では現地研究者との国際連携により,変質の程度が小さく,未分化に近い良好なスコリア試料を多数採取し,日本へ持ち出したうえで研究を進められている. 中国東北部五大連池,西南日本神鍋火山から採取した高発砲度試料に含まれるメルト包有物については,計画通りの分析を行い(XRF,EPMA,SIMS,LA-ICP-MS),それぞれ新しい知見を得ることができている.最終年度ではあるが,韓国・済州島,中国地方阿武火山群から採取したスコリア試料に含まれるメルト包有物についても着実に分析を進めている. 良質なスコリア試料を採取できる見込みのない北西九州や中国地方(女亀,隠岐,横田,黒岩高原)に産するその他玄武岩,既に採取済みの中国の玄武岩試料についても,全岩/鉱物化学組成分析作業は順調に進んでおり,初生マグマ含水量,マントル融解条件の推定を着実に進めている.たとえばその成果として,五島列島の第四紀火山活動,中国地方黒岩高原第三紀玄武岩に関しては,他機関との共同研究により,全岩微量元素組成分析,同位体比分析を実施し,系統的な時空変化があることを見出すことに成功している.また兵庫県北部周辺(西の扇ノ山から東の京都・田倉山や丹後半島までの範囲)の第四紀・第三紀火山岩試料については,従来考えられていたより初生マグマ含水量が高かったらしいことが明らかになりつつあり,日本海拡大以降の西南日本のテクトニクスと上部マントルの変遷を考える上で重要な成果が期待できる.
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今後の研究の推進方策 |
蓄積した分析結果を総括し,モデルの構築,論文としての公表を進める.特に中国東北部五大蓮池,北西九州・五島列島福江島,中国地方黒岩高原玄武岩,神鍋火山についてはそれぞれで必要十分な結果が得られていることから速やかに論文としてまとめ投稿する.それと同時に,採取済み試料の各種分析作業も継続する.令和4年度に採取し,令和5年度に分析を進めた済州島のスコリア試料について,最終年度ではあるが追加のメルト包有物の抽出・研磨・SIMS/EPMA分析を行うと同時に,LA-ICP-MSを用いた微量元素濃度,Pb同位体比分析を実施し,済州火山下上部マントルの起源マントル組成の特徴や融解条件の推定を行う. 西南日本中国地方西部に位置する阿武単成火山群から採取した良質なスコリアや玄武岩試料に含まれるかんらん石斑晶内メルト包有物について,2024年度にSIMS・EPMA・LA-ICP-MS分析を行い,西南日本の第四紀に産する海洋島タイプアルカリ玄武岩火山の成因の解明を目指す.また,隱岐島後島,兵庫県北部地域の第四紀玄武岩試料については, EPMAによる鉱物化学組成分析を進め,マグマ分化プロセスの解明,初生マグマ含水量の推定,マントル融解条件の推定を行う.さらに,新鮮かつ未分化に近い試料について,微量元素組成,同位体組成分析を他機関と共同で行い,マントル起源物質の変遷についても明らかにしたい.また,日本海拡大イベントに伴うマントル流入と,沈み込みスラブとの関連を明らかにすることを目的に,丹後半島の第三紀玄武岩試料については,他機関との共同研究による微量元素組成・同位体組成分析の実施も視野に入れて,斑晶鉱物のEPMA分析を継続してマグマ含水量,マントル融解条件や初期マントル含水量の推定を行う.
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