研究課題/領域番号 |
23K20260
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補助金の研究課題番号 |
20H02296 (2020-2023)
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 基金 (2024) 補助金 (2020-2023) |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分23010:建築構造および材料関連
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
山崎 真理子 名古屋大学, 生命農学研究科, 教授 (70346170)
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研究分担者 |
森 拓郎 広島大学, 先進理工系科学研究科(工), 准教授 (00335225)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
17,420千円 (直接経費: 13,400千円、間接経費: 4,020千円)
2024年度: 2,210千円 (直接経費: 1,700千円、間接経費: 510千円)
2023年度: 2,990千円 (直接経費: 2,300千円、間接経費: 690千円)
2022年度: 3,120千円 (直接経費: 2,400千円、間接経費: 720千円)
2021年度: 5,070千円 (直接経費: 3,900千円、間接経費: 1,170千円)
2020年度: 4,030千円 (直接経費: 3,100千円、間接経費: 930千円)
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キーワード | 木材 / 力学性能 / 生物劣化 / 耐久性評価 / 古材 / 力学的耐久性 / 経年劣化 / XRD測定 / 疲労試験 |
研究開始時の研究の概要 |
木造建築の維持管理および新築木造建築物の長寿命化において,木材の耐久性を把握することは非常に重要である.木材の経年による力学的変性は負荷方向によって異なり,またある時期を超えると低下することが知られている.しかし,部材としての残存寿命や力学的変性のメカニズムについては未だ確定的な知見が得られていない.本研究の目的は,木材の力学的耐久性とそのメカニズムを古材化と生物劣化の両面から検討することである.
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研究実績の概要 |
本研究では,木材の耐久性を検討するために,表1に示す実験群(古材・熱処理材(人為的な古材モデル)・生物劣化材・複合劣化材を設定し,以下に示す2種類の研究を行う計画である. (A)力学的耐久性評価:劣化処理剤の疲労試験および衝撃試験とエネルギー解析(木材バルクの耐久性試験)①木材の繊維の引き抜きが起こる曲げ試験(建築物のはり材に作用する負荷様式)と②細胞壁内の空洞を圧縮する部分横圧縮試験(接合部に作用する負荷様式)である.これらについて,下記の研究計画を立てた.・静的試験ならびに疲労試験を実施し,疲労試験より得られたサイクル毎の応力-ひずみ曲線より,剛性・残存ひずみ・ひずみエネルギーの経時変化を解析すること.・両試験から各種劣化によるエネルギー吸収能の低下量を求めること.・これらより,古材化によるエネルギー吸収能の低下を定量評価すること.・残存エネルギー吸収能と合わせて耐久性の評価法を導出すること.・さらに,これに及ぼす生物劣化の影響を明らかにすること.現在,古材に関する予定の実験をほぼ終了し,解析手法を確立するとともに,古材化の定量化を行っている.また,生物劣化(腐朽材)の部分横圧縮試験について,疲労試験を開始しており,今後の研究も順調に遂行できる. (B)劣化/経年使用による力学的変性の機構解明:細胞壁内のセルロースの力学挙動の把握(内部構造の力学応答):この課題については次の研究段階を予定した.・測定装置の改良と細胞壁2次壁各層の測定方法の確認・古材実験・熱処理実験 これまでに,実験を概ね終了し,順調に進んでいる.今後は,古材の実験を充実させ,木材の強度発現機構に及ぼす劣化の影響を解明するとともに,ひずみエネルギーの吸収能に及ぼす影響を調べる.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
強制劣化(腐朽)の手法を確立し,実験も順調に進んでいる.強制腐朽材について、現場でよく利用される非破壊検査法であるピロディン値を使って試験群を作成した.現在のところ,3段階の強制腐朽材について部分横圧縮試験(静的および疲労)を終了し,解析を終えた.その結果,軽度の腐朽を与えた群について,力学性能にほとんど影響がない試験体がある一方で,力学性能が大きく低下する場合もあることを見出した.この結果は,軽度の腐朽であっても看過できないこと,軽度の腐朽材の中で力学性能の劣化の開始点をピロディン値だけでは判断できないことを示している.今後,この点について解析を進める方針である. また,細胞壁内のセルロース鎖の力学挙動について,実験手法を確立し,新材,古材,熱処理材の実験を概ね終了した.単軸応力下におけるセルロース(004)面の力学挙動を解析したところ,古材の特徴は,新材と比べて引張と圧縮の両荷重に対して遅延した応答を示す点にあることを見出した.圧縮荷重では,セルロースは最大ひずみが増加し,セルロースの配向角の変動が有意に増加したことから,座屈的な蛇行挙動を示す可能性が示唆された。これらの結果は,木材の経年変化による細胞壁中のヘミセルロース含量の減少に基づいて説明することができる。すなわち,細胞壁中の非晶質物質が,細胞壁レベルで木材の力学的挙動に影響を及ぼしていることが示唆された。
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今後の研究の推進方策 |
(A)力学的耐久性評価:劣化処理剤の疲労試験および衝撃試験とエネルギー解析(木材バルクの耐久性試験)①木材の繊維の引き抜きが起こる曲げ試験(建築物のはり材に作用する負荷様式)と②細胞壁内の空洞を圧縮する部分横圧縮試験(接合部に作用する負荷様式)である. 今後は,経年劣化材として,生物劣化(腐朽材)の実験を継続する.昨年度得られた生物劣化材の挙動解析を進め,耐久性評価と事前に建物内で実施可能な非破壊測定値との関係を検討する. (B)劣化/経年使用による力学的変性の機構解明:細胞壁内のセルロースの力学挙動の把握(内部構造の力学応答).1.これまでの実験結果(古材および熱処理材)について,剛性および力学的挙動のタイムラグを解析し,セルロース鎖の面間隔や配向性のバラツキ,エネルギー吸収能に及ぼす古材化の影響を調べる.2.150度熱処理材の実験結果について,熱処理による質量減少率とセルロース鎖の力学協働の関係を解明する.
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