研究課題/領域番号 |
23K20276
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補助金の研究課題番号 |
20H02727 (2020-2023)
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 基金 (2024) 補助金 (2020-2023) |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分33010:構造有機化学および物理有機化学関連
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研究機関 | 神奈川大学 |
研究代表者 |
辻 勇人 神奈川大学, 理学部, 教授 (20346050)
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研究分担者 |
山岸 正和 富山高等専門学校, その他部局等, 講師 (20615827)
小島 広孝 舞鶴工業高等専門学校, その他部局等, 准教授 (70713634)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
17,160千円 (直接経費: 13,200千円、間接経費: 3,960千円)
2024年度: 3,250千円 (直接経費: 2,500千円、間接経費: 750千円)
2023年度: 3,640千円 (直接経費: 2,800千円、間接経費: 840千円)
2022年度: 2,600千円 (直接経費: 2,000千円、間接経費: 600千円)
2021年度: 4,940千円 (直接経費: 3,800千円、間接経費: 1,140千円)
2020年度: 2,730千円 (直接経費: 2,100千円、間接経費: 630千円)
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キーワード | 熱電変換 / 構造ー機能相関 / 有機分子結晶 / 縮環π電子系 / 構造-機能相関 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究では、熱を電気に変換する「熱電変換」において、有機分子の構造ならびに結晶構造と変換効率の相関の理解を目的とする。そのために、電荷輸送に有利な積層構造をとり、構造パラメータと機能の相関を明確化しやすい有機分子に注目し、そのコア形状と置換基の組み合わせから得られる構造的要因を系統的に精査し、実験と計算を組み合わせることで高効率化に必要な分子および集合体の構造的要因を系統的に探索する。
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研究実績の概要 |
当該年度は、-239 mV/Kという過去最大の巨大ゼーベック効果を示すトリフェニルベンゾトリフラン(Ph3-BTF)誘導体の熱電変換特性について、C3対称分子構造をもつ物質である示すスマネン(ゼーベック係数-30 mV/K)と比較することで構造-物性相関の理解を深めた。理論計算によって算出したPh3-BTFの再配列エネルギーλeは0.128 eVと、スマネン(λe = 0.358 eV)に比べて小さいことがわかった。結晶中の隣接層との距離は3.32Åと、スマネン(3.86Å)や他の分子に比べても小さいが、結晶構造を元に計算したトランスファー積分は11-28 meVと、スマネン(95 meV)に比べて小さかった。以上のことから、Marcus理論に基づいた電荷移動の観点からはスマネンに対するPh3-BTFの優位性は見出せなかった。両者のパッキング構造の相違や、熱振動によるゆらぎを考慮する必要があるのではないかという新たな仮説が浮上した。 並行して、ジベンゾクリセン(DBC)誘導体の熱電変換に対する構造-物性相関の評価についても継続しているが、上記の熱振動の効果を考慮しつつ熱電変換特性との関連性について再評価を試みている。 辻グループでDBCの重水素化を行った際に、選択的に五員環構造が形成されるという分子内環化を研究開始直後に見出しており、この検討も深めた。白金触媒触媒使用前後の状態をEXAFSを用いて調べた結果、使用前の酸化白金が反応後には白金0価に還元されていること、使用後の白金0価が環化反応の活性を示すこと、類似の多環芳香族炭化水素にも適用可能なことなどを確認した。基質や生成物が反応系中で再水素化されるという問題もあったが、酸化鉄を加えることでこれが抑制され、環化体の収率を向上させることにも成功し、合成反応として利用可能なレベルに至らせることができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
概要欄に記したように、巨大ゼーベック効果を示す物質と類似物質の構造やその他のパラメータの比較によって、巨大ゼーベック効果発現の要因として新たに時間というパラメータを考慮する必要性が示唆された。このことから、より精密で本質に迫る考察ができるのではないかと期待している。また、当初予定外であった分子内環化反応についても合成反応としての有用性を確立し、本研究課題遂行のための新物質創製につながるものと期待できる。
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今後の研究の推進方策 |
前年度までの検討から新しい作業仮説と、それを定量化するという課題が新たに浮上した。これらがゼーベック効果を説明する新たな有意なパラメータとなるか否かを検証すべく、研究グループメンバーに加えてシミュレーションの専門家との議論を交えて研究を推進していきたい。具体的には、結晶中のパッキング構造の揺らぎをシミュレーションし、トランスファー積分の変化量の評価あるいは時間平均などの方法が考えられる。後者では正確性は高いと期待される一方で計算量が膨大になることが予想されるため、適切な方法を見極めたい。データセットを収集して、機械学習等による相関性の検証にもつなげていきたい。 白金触媒を用いた環化反応によって生成するシクロペンタ多環芳香族炭化水素(CP-PAH)生成物の応用や反応性のさらなる検証も行っていきたいと考えており、これらについても並行して検討する方針である。
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