研究課題/領域番号 |
23K20286
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補助金の研究課題番号 |
20H02970 (2020-2023)
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 基金 (2024) 補助金 (2020-2023) |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分39020:作物生産科学関連
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研究機関 | 高知大学 |
研究代表者 |
宮崎 彰 高知大学, 教育研究部自然科学系農学部門, 教授 (00304668)
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研究分担者 |
辻本 泰弘 国立研究開発法人国際農林水産業研究センター, 生産環境・畜産領域, プロジェクトリーダー (20588511)
阪田 光和 高知大学, 教育研究部総合科学系黒潮圏科学部門, 講師 (50843322)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
15,080千円 (直接経費: 11,600千円、間接経費: 3,480千円)
2024年度: 3,380千円 (直接経費: 2,600千円、間接経費: 780千円)
2023年度: 3,380千円 (直接経費: 2,600千円、間接経費: 780千円)
2022年度: 3,380千円 (直接経費: 2,600千円、間接経費: 780千円)
2021年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2020年度: 3,510千円 (直接経費: 2,700千円、間接経費: 810千円)
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キーワード | 陸稲 / 深根化 / 天水条件 / 根系構造 / 水利用効率 / 天水栽培 / 施肥利用効率 / 局所コントロール / 養水分 |
研究開始時の研究の概要 |
アフリカの天水栽培においてイネ収量の安定生産を阻む大きな制約は水や養分の欠乏であり、イネに水と養分のストレス耐性を付与することが重要である。このためイネの根系を発達させ、根を深く伸長させる深根化を誘導する必要性がある。本研究では天水栽培において陸稲の深根化を促すため、深根化の有効性を評価するとともに、深根化を促すための技術開発を行う。技術開発では局所における施肥および保水技術の効果を検証する。本研究を通じて不利な環境ストレス下でも成長可能な理想的根系構造について議論する。
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研究実績の概要 |
アフリカの天水陸稲栽培において収量の安定生産を阻む大きな制約は水や養分の欠乏である。2023年度は天水陸稲栽培において水利用効率を向上させるための技術開発を目的とし、研究成果を以下のようにとりまとめた。 (1)アフリカ天水稲作において収量を減少させる主要要因は土壌水分ストレスであり、土壌水分を保持するための有効な方法の開発が必要である。溝底播種法は畝間の溝底に作物種子を播種する方法で、降雨を効率的に回収し、土壌含水率を高く維持する効果が期待される。本研究では、西アフリカ・ベナン共和国中部の6農家圃場で、天水陸稲栽培における土壌水分含率および収量に及ぼす溝底播種の効果を検証した。その結果、溝底播種では従来の播種法と比較し、土壌水分が1.6%増加し、収量(t ha-1)が平均11%増加した。収量増加は面積当たり株数で3%、1000粒重で2%、登熟歩合で6%増加したことに起因した。これらの収量構成要素の増加は、各構成要素が関与する期間の土壌水分含有率の有意な増加と密接な関係を示した。 (2)乾燥条件下における土壌含水率の維持には、近年農業利用が検討されている高吸水性ポリマー(SAP)の施用が期待される。SAPの局所施用が土壌含水率および陸稲の根系構造および地上部成長に及ぼす影響を明らかにした。3種類のSAPを土壌に全層施用および局所施用したところ、SAPの施用により積算蒸発量が3~18%有意に減少した。その抑制効果は潅水量が多い処理区で高い傾向を示した。また、SAPの効果は局所施用区で全層施用区より大きい傾向を示した。根箱実験では、土壌含水率はSAPが施用された深さで高くなり、その上昇の程度は平均で1~8%であった。SAPによる上昇は潅水間隔を2日毎にした低水分条件下でも認められ、深層ほど顕著であった。しかし、地上部の成長形質および根系形質には明瞭な変化は認められず、SAPの種類および量を変えてさらに詳細な検討が必要である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
1) アフリカ天水陸稲栽培における溝底播種法の有効性に関する学術論文を1件公表した。また、2) 乾燥条件下における局所施肥法の施用効果に関する学術論文を投稿中であり、3) 乾燥条件下における陸稲の深根化の重要性に関する論文を執筆中である。さらに、2023年度は、4) 土壌含水率を高める技術としてSAPの土壌施用効果を調査し、その途中経過を学会講演会で発表した。また、5) 乾燥条件下で発芽から初期生育を促す技術として種子プライミングを試み、発表準備中である。6) 海外調査では、中央アフリカのカメルーンを訪問し、陸稲農家の栽培の現状を調査した。また、東アフリカ・マダガスカルにおいて、2022年同様に種子コーティング施肥の圃場試験を行ったが、種子自体の発芽が不十分であり、明瞭な処理間差が得られなかった。 全体として当初期待した通りの結果が出ているとはいえないが、次善の計画を毎年度検討している。3)の執筆中論文の進捗が予定より遅れているため、「やや遅れている」とした。
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今後の研究の推進方策 |
1) 乾燥条件下における陸稲の深根化の重要性に関する論文を投稿し、本年度中の受理を目指す。2) 種子コーティング施肥の効果をポット試験で確認し、技術改良を図る。3) 高吸収性ポリマーが土壌からの蒸発散量および陸稲の成長に及ぼす効果を調査し、その局所施用が根系発達に及ぼす効果を明らかにする。植物成長に及ぼす効果が不明瞭であればSAPの種類を変える。4) アフリカ3か国の陸稲栽培の現状を比較し、収量改善の課題について統計解析を行う。5) 最終年であることから、研究全体を総括し、次の課題と方針を検討する。
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