研究課題/領域番号 |
23K20291
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補助金の研究課題番号 |
20H03084 (2020-2023)
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 基金 (2024) 補助金 (2020-2023) |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分41010:食料農業経済関連
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
鈴木 宣弘 東京大学, 大学院農学生命科学研究科(農学部), 特任教授 (80304765)
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研究分担者 |
前田 幸嗣 九州大学, 農学研究院, 教授 (20274524)
佐藤 赳 東京大学, 大学院農学生命科学研究科(農学部), 准教授 (30756599)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
17,160千円 (直接経費: 13,200千円、間接経費: 3,960千円)
2024年度: 2,470千円 (直接経費: 1,900千円、間接経費: 570千円)
2023年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
2022年度: 2,470千円 (直接経費: 1,900千円、間接経費: 570千円)
2021年度: 5,720千円 (直接経費: 4,400千円、間接経費: 1,320千円)
2020年度: 4,810千円 (直接経費: 3,700千円、間接経費: 1,110千円)
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キーワード | 双方寡占 / 不完全競争空間均衡 / 貿易 / 二重構造寡占 / 需要分析 / 農産物貿易 / 政策評価 / シミュレーション / 二重構造不完全競争空間均衡モデル |
研究開始時の研究の概要 |
まず,統計データ収集と,各流通主体に対するインタビュー調査を実施し,モデル化の前提となる市場構造を改めて確認する.双方寡占のパワーバランスを計測し,生産者・消費者及び社会全体の厚生変化を推定して効率性と公正性を適切に評価する.国際備蓄・コメ輸出国機構等の輸出カルテル・FTA等の自由貿易協定,それぞれの貿易政策や協調的行動が実施された際の,貿易参加国全体の厚生変化をシミュレーション分析し,公正かつ効率的な市場構造とそれを導く施策を導出する
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研究実績の概要 |
今日のフードシステムは,市場の競争構造を明らかにし,社会経済厚生への影響を定量的に評価することが極めて重要な課題となっている.このとき,川上から川下までの農産物流通を俯瞰的に考察するためには,特定の流通段階・地域に限定された構造推定を行うだけでなく,生産者・サプライヤー・バイヤーによって構成される多段階の垂直的競争を分析すること,また,空間的な競争を伴う水平的競争を同時に明らかにすることが不可欠である.本研究は,多段階の双方寡占モデルの推定と,双方寡占空間均衡モデルのシミュレーションによりフードシステムの市場構造を明らかにする. 市場構造の社会厚生への影響評価に基づき,生産者・消費者双方に公正かつ効率的な市場構造,及び,適切な農産物貿易政策を導出することを目的として,生産者・メーカー/卸売・小売という多段階の不完全競争構造と価格伝達のパラメータ推定を行った.特にここまでの研究では,多段階の垂直的なパワーバランスについて初めて同時推定し,モデルを発展させ双方寡占と水平的競争をミクロ経済理論に整合的に同時に特定化することに成功した.他方,不完全競争空間均衡モデルでは,主体毎に逐次最適化を行なう逐次解法によって,需要側にも供給側にも不完全競争を取り入れたモデルの均衡解が得られることが確認できた. さらに,近年行われた農協改革による市場支配力への影響を新たに研究テーマに取り込みその効果を検証したところ,産地・農家側の垂直的パワーバランスが大きく低下し,卸売側のパワーが大きく増大しているということが明らかになった.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
令和3年度の研究は新型コロナウィルスの影響が緩和され,各生産地への現地調査や打ち合わせを実施することで,理論モデルの構築やより適切な最適化条件の検討,および,さまざまな統計データの取得や確認等を行うことで,研究を大いに進めることができた. 本研究課題の最終的な目標は,双方寡占のパワーバランスを計測することで公正性を評価し,公正かつ効率的な市場構造とそれを導く施策を導出するというものである. これまでは,インターネット通話を通じて感染のリスクを最小限に留めつつ研究会や調査を行っていたが,令和3年度に入り,現地でのデータの取得のほか,政策インプリケーションについて,現場の意見をより多く交換したことで,より現実的な政策と,寡占状況についての知見を得ることができた. さらに,特にコメや酪農業における市場の双方寡占モデル推定において,農協改革による市場支配力への影響を定量的に推定することができた.以上のことから,本研究計画はおおむね順調に進展しているということができる.
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今後の研究の推進方策 |
令和4年度もインターネットミーティング等を活用し,適切な連携を取って研究を行うこと,また,取得した経営データの分析,経済モデルの検討に多くのエフォートを割くことを計画している. さらに,研究室においてはGTAPモデルでのシミュレーション分析のほか、Python等のプログラミングを行い,最適化の演算・シミュレーションを行える人材も育ちつつある.以前より分析を進めていた貿易政策のシミュレーションモデルのシナリオ別の推定において,より円滑に経済予測分析を行うことができるものと考えられる.幸い,コロナ感染のリスクは低下しつつあり,学術研究会の実施による研究の推敲,研究成果の発表等が積極的に行えるものであると考えている. 他方,最終年度における成果として,アウトリーチ活動にも力をいれ,学術のみではなく,一般の市民でも参加できるような形で,積極的に成果を報告・共有し,また,農家や,流通業者,生産支援組織等それぞれのステークホルダーの知見を得て,最終的な考察,政策インプリケーションの検討に繋げていく考えである.
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