研究課題/領域番号 |
23K20296
|
補助金の研究課題番号 |
20H03146 (2020-2023)
|
研究種目 |
基盤研究(B)
|
配分区分 | 基金 (2024) 補助金 (2020-2023) |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分42020:獣医学関連
|
研究機関 | 東京農工大学 |
研究代表者 |
吉田 敏則 東京農工大学, (連合)農学研究科(研究院), 教授 (80726456)
|
研究分担者 |
臼井 達哉 東京農工大学, (連合)農学研究科(研究院), 准教授 (80727652)
|
研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2025-03-31
|
研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
|
配分額 *注記 |
16,380千円 (直接経費: 12,600千円、間接経費: 3,780千円)
2024年度: 2,860千円 (直接経費: 2,200千円、間接経費: 660千円)
2023年度: 2,860千円 (直接経費: 2,200千円、間接経費: 660千円)
2022年度: 3,120千円 (直接経費: 2,400千円、間接経費: 720千円)
2021年度: 3,250千円 (直接経費: 2,500千円、間接経費: 750千円)
2020年度: 4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)
|
キーワード | 脂肪肝 / オートファジー / 肝前がん病変 / ラット / LC3 / NAFLD / 肝がん / 前がん病変 / 選択的オートファジー / ミトファジー / ペキソファジー / AMBRA1 / 小胞体ファジー / PEX5 / p62 / FAM134B / 非アルコール性脂肪性肝疾患 / オルガノイド |
研究開始時の研究の概要 |
本研究では、非アルコール性脂肪性肝疾患から発生する肝がんの初期過程におけるオートファジーの役割を検討する。高脂肪飼料給餌モデル動物を用いて脂肪滴の非分布領域である肝前がん病変部をオートファジーの依存度の高い組織内飢餓領域と位置づけ、選択的オートファジーの取り込み対象の特定と取込み機序を明らかにする。比較のため、取込み対象の明確なモデル動物を種々の薬剤で誘発する。これらの肝臓から前がん病変オルガノイドを作製し、生体とオルガノイドを併用した新規のモデル研究により、脂肪肝関連初期肝発がん過程における巧みな微小エコシステムであるオートファジーの役割を明らかにする。
|
研究実績の概要 |
本研究では、非アルコール性脂肪性肝疾患から発生する肝がんの初期過程における微小エコシステムであるオートファジーの役割について、脂肪肝モデルとオルガノイドを併用した新規のモデル研究を用いて明らかにする。解析にあたり高脂肪飼料または超高脂肪飼料給餌モデル動物を用いて脂肪滴の非分布領域である肝前がん病変部をオートファジーの依存度の高い組織内飢餓領域と位置づけ、種々の選択的オートファジーの役割を明らかにしていく。本年度は、ペルオキシソームを取り込むペキソファジーとミトコンドリアを取り込むマイトファジーについて検討した。超高脂肪飼料(58 kcal%、ココナッツオイル含有)とペルオキシソーム増殖因子活性化受容体α(PPARα)アゴニストを投与し、脂肪肝と肝前がん病変解析と合わせて、選択的オートファジーマーカーp62、ペキソファジーマーカーPEX5とライソゾームマーカーLAMP2の発現解析を行い、ペキソファジーフラックスの変動を予測した。PPARαアゴニスト投与では、脂肪化の抑制のためにペルオキシソームが過剰に増殖し、それを処理するためのペキソファジーの誘導が生じていることが示唆された。超高脂肪飼料との併用処置では、過剰なペルオキシソームが処理できず残存していることが示唆された。高脂肪飼料給餌(45 kcal、ラード含有)モデル動物を用いてミトコンドリアを選択的に取り込むマイトファジーに着目し、ミトコンドリア傷害剤の影響を検討した。前がん病変におけるLC3とAMBRA1、LC3とParkinおよびAMBRA1とParkinの各発現率をk-means法により3つのクラスターに分類してマイトファジーフラックスを解析し、マイトファジーの前がん病変形成に与える影響を検討した。試験条件によって、マイトファジーの抑制と誘導が前がん病変形成に関与することが示唆された。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ペルオキシソームを取り込むペキソファジーに着目し、超高脂肪飼料とPPARαアゴニスト投与の影響を検討した。超高脂肪飼料(58 kcal%、ココナッツオイル含有)給餌実験では、肥満、肝障害、肝細胞脂肪化と風船様変性のスコア、さらに脂肪滴膜蛋白質ADRP陽性脂肪滴が増加した。PPARαアゴニスト投与群では、肝細胞内のp62とLAMP2陽性顆粒が増加し、ペルオキシソーム処理のためのペキソファジーの誘導が生じていた。超高脂肪飼料との併用群ではp62とLAMP2陽性顆粒の増加に加え、Pex5陽性顆粒の明らかな増加がみられ、ペキソファジーの誘導によっても処理されないペルオキシソームが残存していることが示唆された。肝遺伝子発現解析では、併用群におけるβ酸化に関わる遺伝子発現が顕著であり、併用群における肝前がん病変形成との関連性が示唆された。 高脂肪飼料給餌(45 kcal、ラード含有)動物を用いてミトコンドリアを取り込むマイトファジーに着目し、ミトコンドリア傷害剤の影響を検討した。高脂肪飼料群およびミトコンドリア傷害剤との併用群では肝前がん病変が増大した。前がん病変におけるLC3とAMBRA1の発現率をk-means法によりクラスター解析したところ、高脂肪群ではLC3の低下とAMBRA1の増加で示されるマイトファジー抑制クラスター比率が増加し、肝前がん病変増大との関連性が示唆された。併用群ではこれらのクラスター比率が減少し、ミトコンドリア傷害剤群と同様にLC3の増加とAMBRA1の低下で示されるマイトファジー誘導クラスター比率が増加傾向を示したが、肝前がん病変はむしろ増大傾向を示し、マイトファジーの2面性が示唆された。LC3とParkinおよびAMBRA1とParkinのクラスター解析により、ミトコンドリア傷害剤投与によるマイトファジーはParkin非依存性であることが示唆された。
|
今後の研究の推進方策 |
R4年度に引き続き、栄養学的アプローチにより高脂肪飼料を給餌し、約8週間の脂肪肝関連初期肝発がんモデルを構築する。ラードを含超高脂肪飼料(60 kcal%)は前がん病変形成能を示す傾向にある。しかし、摂餌量に影響がでるため、やや低い濃度の高脂肪飼料(50 kcal%)を設定して比較する。前がん病変指標GST-Pの発現と、オートファジー膜指標のLC3、選択オートファジー受容体p62、リソソーム膜指標LAMP2、脂肪滴膜指標アディポフィリン等を比較することで、前がん状態の進行に伴うオートファジーの流れ(フラックス:初期停止、後期停止、誘導等)を周囲肝細胞(非前がん病変)と比較する。リソソーム指標を加えることで、オートファゴソームからオートリソソームの形成を検証することが可能となる。 前項に加え毒性学的アプローチとして、脂肪肝関連初期肝発がんモデルと並行して、医薬品等を利用し各種細胞内小器官のオートファジーが発現すると考えられる肝前がん病変モデルラットを作製し、比較解析を行う。令和5年度は、リボソームの選択的オートファジーであるリボファジーに着目する予定である。動物用医薬品メトロニダゾールをモデルラットに投与すると、脂肪肝とともにGST-P陽性肝前がん病変が増強され、選択的オートファジー指標の発現が増強するが、選択的に取り込まれる細胞小器官については未詳である。リボソームは小胞体付着型と遊離型が存在するため、小胞体のオートファジーであるレティキュロファジーと連動するとの仮説をたて、リボファジーとレティキュロファジーの各指標を比較しながら解析を行う。比較薬剤として、化学構造が類似するジメトリダゾールを用いる。 また、病態モデル動物から非前がん病変(周囲肝細胞由来)オルガノイド及び前がん病変オルガノイドの作製を検討し、生体における選択的オートファジーのモデル動物との比較解析を行う。
|