研究課題/領域番号 |
23K20301
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補助金の研究課題番号 |
20H03230 (2020-2023)
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 基金 (2024) 補助金 (2020-2023) |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分43040:生物物理学関連
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研究機関 | 明治大学 |
研究代表者 |
光武 亜代理 明治大学, 理工学部, 専任准教授 (00338253)
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研究分担者 |
丸山 豊 明治大学, 研究・知財戦略機構, 研究推進員(客員研究員) (80390665)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
17,940千円 (直接経費: 13,800千円、間接経費: 4,140千円)
2024年度: 1,950千円 (直接経費: 1,500千円、間接経費: 450千円)
2023年度: 1,950千円 (直接経費: 1,500千円、間接経費: 450千円)
2022年度: 3,770千円 (直接経費: 2,900千円、間接経費: 870千円)
2021年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
2020年度: 8,580千円 (直接経費: 6,600千円、間接経費: 1,980千円)
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キーワード | 分子シミュレーション / 生物物理学 / 生体高分子 / 計算化学 / 計算物理学 / タンパク質 / 溶媒効果 / 膜蛋白質 / 化学物理 / 蛋白質 / 3D-RISM / 環状ペプチド / ペプチド |
研究開始時の研究の概要 |
これまで、タンパク質系の分子シミュレーションに関して、物理化学の理論に基づく手法の開発を行ってきた。サンプリング手法である拡張アンサンブル法の開発や、タンパク質の周りの溶媒の効果を取り入れるRISM理論、動的解析手法である緩和モード解析の導入を行ってきた。 本研究課題では、これらの方法を駆使して、ペプチドやタンパク質の構造安定性やダイナミクスを調べる。構造安定性の解析には、溶媒効果を見積もることができるRISM理論を用いる。タンパク質が巻き戻る際に重要なアミノ酸を特定してフォールディングメカニズムを明らかにしたり、特に膜タンパク質の機能に重要なアミノ酸を特定し、リガンド設計を目指す。
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研究実績の概要 |
これまで、蛋白質の分子シミュレーションに関して、物理化学の理論に基づく方法論の開発を行ってきた。本研究課題では、これら手法の開発を継続するとともに環状ペプチドや膜蛋白質系に関しての機能メカニズムを理解するための理論的な基盤の構築を行う。開発した方法を駆使して、アミノ酸置換により蛋白質やペプチドのデザインを行う。 今年は特に、膜蛋白質の睡眠に関係するGPCRであるオレキシン受容体2の研究を進めた。昨年度までに、脂質膜を取り入れた系の構築を行い、いくつかの変異体のシミュレーションを複数本実行して、独自の解析手法である緩和モード解析を用いて解析を行い、成果として論文にまとめた。今年度は、アンタゴニストやアゴニストが結合した構造やクライオ電子顕微鏡で解かれた活性構造をもとに、大規模な複数のMDシミュレーションを実行した。緩和モード解析を適用して、不活性構造と活性構造の違いについて、明確にした。特に3番目の膜貫通ヘリックス上の3つのアミノ酸残基の状態の違いが明確になり、これについて詳細に調べた。現在、論文作成中である。 方法論の開発として、moving RMSDという解析手法が、大きな構造変化が生じるフォールディングシミュレーションのトラジェクトリーを解析するのに適していることを示した。通常、天然構造からどれくらい構造が違うか調べるのに天然構造をレファレンスとしてRMSDを計算することが多いが、ここでは、時間差の構造間のRMSDを計算する。安定な構造や準安定な構造は、その構造に滞在する時間が長いので、この解析をすると、RMSDが小さい時間領域は、安定構造であることが示唆でき、天然構造がわかっていないトラジェクトリーに関しても、この解析を行うと安定な構造を特定できる。この研究に関して論文にまとめた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
膜蛋白質系のシステム構築に関しては、昨年度、蛋白質の欠損部位のモデリング、脂質膜を取り入れた系の構築などの経験を得た。今年度は、低分子リガンドの力場の作成、複合体シミュレーションシステムの構築を行なって、大規模なシミュレーションを実行した。他の膜膜蛋白質系のシミュレーションに関しても共同研究を開始している。 方法論の開発に関しては、以下の2つを継続的に進めている。1つは膜蛋白質のアミノ酸置換による安定性の評価を行う計算システムの構築である。特に溶媒効果も含めた安定性の評価を行うシステムの構築を行っている。そして、膜の効果を取り入れる方法論の開発をしている。2つ目は大きな構造変化をするトラジェクトリーに関しての解析手法の開発である。今後、大規模な長時間シミュレーションが実現できるようになり、トラジェクトリー中に複数の安定構造が存在する場合、この方法を用いることにより、これらの構造を特定することができると考えられる。方法論の開発に関しても確実に進んでいる。 これまで分子シミュレーションを主として研究を行ってきた。昨年度は、NMRの実験家と共同研究を行い、実際に10残基のシニョリンのNMRスペクトルの解析を行った。また、環状ペプチドに関して、単体のシミュレーションと複合体のシミュレーションを行い、アミノ酸配列による結合能の違いについて知見を得た。これらに関しては、昨年度論文にまとめる予定であったが、以下の研究を進めたため、現在も継続中である。
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今後の研究の推進方策 |
シニョリンや環状ペプチド、他にもコロナ関係のRBDとACE2の結合エネルギーに関してリガンドが結合した系のシミュレーションを実施しており、これらに関して、追加計算を行い早急に結果を論文にまとめる必要がある。 膜蛋白質系においては、リガンドが結合したシミュレーションに関する結果をまとめる必要がある。活性化メカニズムについての原子レベルでの知見を得る。また、現在主に細胞内のオレキシン2受容体の構造変化に注目して解析を行なっているが、リガンド結合部位に関しても、解析を行い、アロスティック効果について調べる必要がある。アンタゴニストとアゴニストの結合様式の違いについて原子レベルで知見を得て、最終的には、低分子リガンドの提案ができたらと考えている。オレキシン2受容体を主として解析しているが、他のGPCR に関するシミュレーションも実施して構造解析を行い、GPCRに共通な原子結合様式の違いによる機能選択性について知見を得る。膜蛋白質のアミノ酸置換による安定性の評価を計算化学の手法を用いて行いたいと考えている。膜蛋白質系の溶媒効果を取り入れた安定性の違いを評価できるシステム構築を継続して行う。 また、RISM理論を用いたアミノ酸毎のエネルギー解析を既存のソフトウェアの力場を用いて簡単に行えるシステムを構築して、フォールディングトラジェクトリの溶媒効果も取り入れたアミノ酸毎の安定性の解析を行い、溶媒効果も含めたフォールディングに重要なアミノ酸間の相互作用について知見を得る。
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