研究課題/領域番号 |
23K20307
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補助金の研究課題番号 |
20H03322 (2020-2023)
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 基金 (2024) 補助金 (2020-2023) |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分45040:生態学および環境学関連
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
中川 聡 京都大学, 農学研究科, 准教授 (70435832)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
17,940千円 (直接経費: 13,800千円、間接経費: 4,140千円)
2024年度: 4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)
2023年度: 2,210千円 (直接経費: 1,700千円、間接経費: 510千円)
2022年度: 2,340千円 (直接経費: 1,800千円、間接経費: 540千円)
2021年度: 2,470千円 (直接経費: 1,900千円、間接経費: 570千円)
2020年度: 6,630千円 (直接経費: 5,100千円、間接経費: 1,530千円)
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キーワード | 糖鎖 / 共生 / 深海底熱水活動域 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究は、深海底熱水活動域において強固な共生関係にある生物間の相互作用を、世界で初めて第三の分子生物学(=糖鎖生物学)の観点から体系化することを目指している。深海底熱水活動域は、多様な大型生物が特定の微生物と絶対的な共生関係にあり、生物間の相互作用・相互認識の研究にとって最適のフィールドである。また深海共生系は、共生と感染の分子機構の類似性を進化の時間軸を加味して研究する絶好のモデルであり、本申請研究は極めて先駆的・独創的かつ分子生物学・進化学・社会生物学・病理学・免疫学といった幅広い研究分野への波及効果が極めて大きい。
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研究実績の概要 |
本研究の目的は、深海底熱水活動域において強固な共生関係にある生物間(微生物-大型生物や古細菌-古細菌等)の相互作用を、世界で初めて糖鎖生物学の観点から体系化することにある。本研究において、『共生微生物の糖鎖によるタンパク質/脂質の修飾量と組み合わせ(微生物が纏うドレス)が、深海底において生物間の共生を成立させる普遍的分子基盤である』という独自の仮説を検証するため、①超高分解能質量分析技術を用いた糖鎖修飾分子の網羅的同定と構造解析、②糖鎖修飾蛍光ビーズ(人工共生菌)を用いた感染実験による糖鎖の機能解明、を実施し目的を達成する。本研究は、深海底における異種生物間の分子的コミュニケーション手段の研究を通じて、人類に蔓延する病原性微生物の誕生過程の解明、さらには共生(感染)機構を標的とした革新的治療法の開発に益することを目指している。 2023年度は、(メタ)ゲノム解析や質量分析器を用いたグライコプロテオーム解析だけでなく、バルクタンパク質からの酸加水分解や精製糖鎖のメチル化分析・計算機シミュレーションを駆使し、特に深海底熱水活動域に棲息する細胞内共生微生物における宿主-微生物間相互作用に重要であると考えられる糖鎖および糖タンパク質についてその詳細な構造を解析した。これにより、細胞内共生モードにある深海微生物において発現する多様な糖タンパク質や糖鎖を、これまでの研究を圧倒する正確性で同定し、さらにはその機能に関する知見を得ることに成功した。なお、本年度の研究に関連する成果の一部は学会や国際誌等で報告した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
超高分解能質量分析技術を駆使し、これまでの研究より極めて少ない生物サンプルを用いて、多様な糖タンパク質や糖鎖をほぼ網羅的に同定することに成功しており、今後の古細菌を対象とする研究において強力な技術基盤を確立することができているため。
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今後の研究の推進方策 |
これまでの研究において、深海底熱水活動域にみられる真正細菌-大型生物間の共生系を対象に確立した方法論を、古細菌の共生系に適用する。一般に、古細菌の細胞表面はSレイヤーと呼ばれる、高度な糖鎖修飾を受けたタンパク質で覆われている。過去の全ゲノム解析により、共生古細菌においては必須遺伝子の多くが欠如していることが明らかとなっているものの、宿主の認識機構や相互作用は未解明である。可能な限り多くの古細菌共生系を解析し、これまでに得てきた深海底熱水活動域の真正細菌-大型生物間の共生系に関する知見と比較検証することにより、深海底に限らず様々な生態系において生物間相互作用を成立させる分子基盤の普遍性や特異性を、それらが経験してきた空間軸(環境)と時間軸(進化)を加味して理解することを目指す。なお古細菌が有するN結合型糖鎖は真核生物のN結合型糖鎖と構造が類似することから、バイオ医薬品の糖鎖エンジニアリングに代表される糖鎖創薬分野への応用が期待できる。
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