研究課題/領域番号 |
23K20334
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補助金の研究課題番号 |
20H03899 (2020-2023)
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 基金 (2024) 補助金 (2020-2023) |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分57080:社会系歯学関連
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
渡邊 裕 北海道大学, 歯学研究院, 准教授 (30297361)
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研究分担者 |
飯島 勝矢 東京大学, 大学院工学系研究科(工学部), 教授 (00334384)
小原 由紀 地方独立行政法人東京都健康長寿医療センター(東京都健康長寿医療センター研究所), 東京都健康長寿医療センター研究所, 研究員 (00599037)
平野 浩彦 地方独立行政法人東京都健康長寿医療センター(東京都健康長寿医療センター研究所), 東京都健康長寿医療センター研究所, 研究部長 (10271561)
池邉 一典 大阪大学, 大学院歯学研究科, 教授 (70273696)
岩崎 正則 北海道大学, 歯学研究院, 教授 (80584614)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
17,420千円 (直接経費: 13,400千円、間接経費: 4,020千円)
2024年度: 3,250千円 (直接経費: 2,500千円、間接経費: 750千円)
2023年度: 3,250千円 (直接経費: 2,500千円、間接経費: 750千円)
2022年度: 3,250千円 (直接経費: 2,500千円、間接経費: 750千円)
2021年度: 3,640千円 (直接経費: 2,800千円、間接経費: 840千円)
2020年度: 4,030千円 (直接経費: 3,100千円、間接経費: 930千円)
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キーワード | オーラルフレイル / コホート統合研究 / 高齢者 / 保健事業 / 介護予防 |
研究開始時の研究の概要 |
高齢者の歯科受療率は75歳から急減する。これは定期的な歯科受診と口腔健康管理の在り方、その効果が明らかでないためと考える。そこでオーラルフレイルの有病率と低栄養、要介護等の発生、併存疾患や医療費との関連を明らかにするための大規模コホート統合研究、地域包括ケアシステムにおける住民主体の通いの場と歯科診療所との共同によるオーラルフレイル予防のための地域介入調査、オーラルフレイル改善プログラムの効果検証のための無作為化比較対照試験を行い、歯科受診と口腔健康管理の在り方、それら効果を明らかにする。さらに歯科医療と地域包括ケアシステムのサービスを連携させ、その効果を検証し、普及啓発に資する根拠を得る。
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研究実績の概要 |
①オーラルフレイルの有病率と低栄養、要介護等の発生要因に関する調査 2023年度は2022年度に行われた口腔機能に関連する大規模長期コホート研究(板橋)、後期高齢者歯科健診(鳥取県)のデータを2018~2021年のデータと統合し、それぞれ1,517名、5,215名のデータベースを構築した。後期高齢者歯科健診と国保データベースの統合研究では、オーラルフレイルと医療費との関連について論文化した。また、オーラルフレイルと食欲、食品摂取の多様性について分析し、オーラルフレイルと食、食品摂取の多様のほか、年齢、性別、簡易フレイル指数、服薬数に有意な関連があることを明らかにした。さらに本年度から愛知県後期高齢者医療制度加入者の2020年1,039,830名と2021年1,069,381名のデータベースを取得分析し、口腔に問題がある者、歯科受診がなかった者を集計した。 ②地域包括ケアシステムにおける住民主体の通いの場と歯科診療所との共同によるオーラルフレイル予防のための地域介入研究、③オーラルフレイル改善プログラムの効果検証 岩見沢市でのオーラルフレイル予防のための地域介入研究は感染対策のため、地域在住高齢者400名に対して保健センターとオンラインでオーラルフレイル改善プログラムを実施した。2022年、2023年の参加者の分析では、半年間のオーラルフレイル改善プログラムによって、77.3%が維持改善していた。以上の結果からオーラルフレイル改善プログラムによる改善効果が期待された。海老名市では848名に対して歯科診療所でオーラルフレイル改善プログラムを実施し、介入前後の比較を行った。また、国保データベースとの突合を行い3年間の総医療費がオーラルフレイル該当者は非該当者よりも有意に高く、3年間の要介護の発生と重度化のリスクが2倍以上高くなることを明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
これまで新型コロナウイルスの感染拡大のため一部のコホート調査、介入研究は中断していたが、2023年は大規模コホート調査、介入研究ともに感染対策を継続し実施することができた。また、2018~2022年の既存データの統合解析作業は順調に進んだ。その結果、1,517名、5,215名のデータベースを構築でき、後期高齢者歯科健診と国保データベースの統合研究では、オーラルフレイルと医療費との関連、オーラルフレイルと食欲、食品摂取の多様性の関連についてそれぞれ明らかにできた。さらに愛知県後期高齢者医療制度加入者の2020年1,039,830名と2021年1,069,381名のデータベースの分析では、「半年前に比べて硬いものが食べにくくなった」「お茶や汁物等でむせることがありますか」のどちらか又は両方に「はい」と回答した者(口腔に問題がある者)は41.9%で、歯科受診がなかった者は45.3%であり、年代が上がるごとに口腔に問題がある者が増加していることを明らかにした。北海道岩見沢市での通いの場におけるオーラルフレイル予防のための地域介入研究については、通いの場でのプログラムを開始するとともに、オンラインでのプログラムも継続し、それぞれプログラムの改善効果を検証することができた。これらは保健事業と介護予防の一体的実施に関する市の事業として、2025年以降も継続実施することが決定した。海老名市の研究についても、国保データベースとの突合作業が完了し、分析を行ったところ、3年間の総医療費がオーラルフレイル該当者は非該当者よりも有意に高く、3年間の要介護の発生と重度化のリスクが2倍以上高くなることを明らかにできた。以上のように本研究事業が当初目標としていた成果は順調に上がってきており、最終年に向けてさらなる成果の創出と、今後の発展に向けた新たな研究シーズの発掘を行っている。
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今後の研究の推進方策 |
①オーラルフレイルの有病率と低栄養、要介護等の発生要因に関する調査 2018~2022年度の口腔機能に関連する大規模長期コホート研究(柏、草津、高島平、板橋、SONIC研究)、後期高齢者歯科健診(神奈川県、鳥取県、愛知県)、介入調査(岩見沢、海老名)のデータに2023年度データを統合し、オーラルフレイルについて縦断的に検討し、フレイル、各種疾患、要介護、死亡等の発生や重度化とオーラルフレイルとの関係を検討する。また、医療費との関連を縦断的に検討し、オーラルフレイルが食事栄養摂取と全身の健康に与える影響について検討する。なお後期高齢者歯科健診のデータについては、2024度から新たに茨城県と長野県阿南町、小樽市を加える予定となっている。 ②地域包括ケアシステムにおける住民主体の通いの場と歯科診療所との共同によるオーラルフレイル予防のための地域介入研究 これまでと同様に岩見沢市の後期高齢者歯科健診受診者のうち、オーラルフレイル該当者に対してオーラルフレイル改善プログラムを通いの場、保健センター、歯科診療所、オンラインで実施する。2020、2022、2023年度参加者の長期経過を調査するとともに、2024年度も新たな後期高齢者歯科健診受診者に対して、オーラルフレイル改善プログラムを実施する。通いの場での活動は昨年と同様に保健事業と介護予防にかかる市の保健師、歯科診療所の歯科医師、歯科衛生士が共同で支援し、地域包括ケアシステムと地域の歯科診療所の共同のモデルと位置づけその効果を検証する。 ③オーラルフレイル改善プログラムの効果検証 岩見沢市、海老名市の介入研究について、それぞれ国保データベースとの突合を進め、本年度中に分析を完了し、オーラルフレイル改善プログラムの効果を明らかにする。さらにオーラルフレイルに関する口腔健康管理の在り方を検討し公開する。
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