研究課題/領域番号 |
23K20361
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補助金の研究課題番号 |
20H04040 (2020-2023)
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 基金 (2024) 補助金 (2020-2023) |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分59010:リハビリテーション科学関連
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研究機関 | 大阪公立大学 (2022-2024) 大阪府立大学 (2020-2021) |
研究代表者 |
宮井 和政 大阪公立大学, 大学院リハビリテーション学研究科, 教授 (60283933)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
16,510千円 (直接経費: 12,700千円、間接経費: 3,810千円)
2024年度: 1,950千円 (直接経費: 1,500千円、間接経費: 450千円)
2023年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2022年度: 3,120千円 (直接経費: 2,400千円、間接経費: 720千円)
2021年度: 4,940千円 (直接経費: 3,800千円、間接経費: 1,140千円)
2020年度: 5,070千円 (直接経費: 3,900千円、間接経費: 1,170千円)
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キーワード | 神経機能再建 / シナプス新生 / 運動学習 / 強心配糖体 / 運動機能回復 / 不飽和直鎖脂肪酸 / 自発運動活性 / 樹状突起スパイン |
研究開始時の研究の概要 |
脳損傷が生じると、残存した神経細胞間に新たなシナプス・神経回路が形成されて神経機能が回復するが、この回復には時期的な制約が存在する。我々が発見したシナプス新生シグナル経路を人為的に活性化できれば、時期的な制約に囚われないシナプス新生が可能となり、神経機能再建を促進できる可能性がある。本研究では、シナプス新生シグナルを薬理学的に活性化することで、①成熟期マウス脳内のシナプスがどの程度効率よく新生されるか、②健常マウスにおける運動学習行動がどれほど促進できるか、③脳損傷モデルマウスにおける運動機能の回復がどの程度促進されるか、また、運動療法との併用効果が期待できるか、を検討する。
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研究実績の概要 |
前年度までの研究で、強心配糖体ジゴキシンの低濃度単独投与により新生樹状突起スパイン密度が増加し、運動学習能が向上すること、およびジゴキシンと不飽和中和脂肪酸DAEEの併用投与が特に運動学習後期の協調運動能を向上させることを明らかにした。そこで本年度は、これらの成果を更に発展させるため、以下の2点の研究を実施した。 ①ジゴキシンが成熟スパイン密度に与える作用 新生スパインを増加させるジゴキシンが、成熟スパイン密度にも影響を与えるかどうかをゴルジコックス染色法を用いて解析した。その結果、正常な野生型マウスにおいても、スパイン新生に障害のあるニューロトリプシン遺伝子欠損マウスにおいても、ジゴキシン投与は成熟スパインに特徴的な構造である短いスパイン(長さ2 mcm未満)の密度には有意な作用を示さないことを明らかにした。ジゴキシンは主にスパインの新生に関わるものの、その成熟には影響を与えない可能性が示された。 ②大脳皮質損傷マウスの運動機能回復におけるジゴキシンの作用 大脳皮質感覚運動野に径3 mm、深さ1 mmの損傷を与えたマウスを用い、当該マウスの運動機能障害からの自然回復にジゴキシン投与が与える影響を検討した。その結果、低濃度のジゴキシンを損傷1日後から14日後まで2週間継続投与することで、運動機能回復を促進できる可能性を見出した。この結果は、ジゴキシンが運動学習の促進のみならず、運動機能障害からの回復にも貢献できることを示唆している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ジゴキシンが樹状突起スパインにあたえる影響を全てのタイプのスパインで検討できたこと、運動機能回復にも有益である可能性を示せたこと、また前年度のまでの研究内容を論文化できたことから、おおむね順調に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、大脳皮質傷害からの運動機能回復に対して、ジゴキシンをより後期に投与しても有効かどうか、また運動リハビリテーション(有酸素運動負荷)や不飽和中鎖脂肪酸デセン酸エチルエステルとの併用でさらに効果を高めることが可能かどうかを以下の研究で明らかにする。 ①脳損傷作成装置を用いて、ブレグマの2 mm右方の大脳皮質に直径3 mm、深さ1 mmの損傷を生じさせた大脳皮質損傷マウスを作成する。大脳皮質損傷マウスの損傷後8週間までの運動機能の自然回復を行動実験(1. ラダー歩行試験、2. ステアケース試験、3. シリンダー試験、4. ロータロッド試験)により観察する。損傷後1日目、15日目、43日目を開始時期として低濃度ジゴキシンの腹腔内投与を1日1回、2週間連続で実施し、上記行動試験の成績が溶媒投与群と比較して向上したか否かを検討する。ジゴキシンの投与濃度は、脳内Na/K ATPaseを活性化し樹状突起スパイン新生を促進する濃度(65 mcg/kg)と、より低い臨床用量での濃度(4 mcg/kg)とする。 ②上記の大脳皮質損傷マウスを用い、ジゴキシンの投与時期と同期間に、1)不飽和中鎖脂肪酸デセン酸エチルエステルの投与(500 mcg/kg;1日1回)や、2)トレッドミル走行による有酸素運動負荷(最大酸素摂取量55%相当;30分間/日)をジゴキシン投与と併用し、運動機能回復をさらに促進できるかどうか、特に運動機能回復の後期に適用しても回復を促進できるかどうかを検討し、臨床応用に向けた最適な条件を探る。
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