研究課題/領域番号 |
23K20397
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補助金の研究課題番号 |
20H04404 (2020-2023)
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 基金 (2024) 補助金 (2020-2023) |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分80010:地域研究関連
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
溝端 佐登史 京都大学, 経済研究所, 特任教授 (30239264)
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研究分担者 |
横川 和穂 神奈川大学, 経済学部, 准教授 (10537286)
Gorshkov Victor 新潟県立大学, 国際経済学部, 准教授 (10742322)
林 裕明 立命館大学, 経済学部, 教授 (30336903)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
17,420千円 (直接経費: 13,400千円、間接経費: 4,020千円)
2024年度: 3,250千円 (直接経費: 2,500千円、間接経費: 750千円)
2023年度: 3,770千円 (直接経費: 2,900千円、間接経費: 870千円)
2022年度: 2,730千円 (直接経費: 2,100千円、間接経費: 630千円)
2021年度: 4,030千円 (直接経費: 3,100千円、間接経費: 930千円)
2020年度: 3,640千円 (直接経費: 2,800千円、間接経費: 840千円)
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キーワード | ロシア / ソーシャル・キャピタル / 人的ネットワーク / 国家 / 制度 / 社会構造 / 信頼 / 国家主導性 / 階層 / ネットワーク / 市民社会 |
研究開始時の研究の概要 |
ロシア経済・社会はウクライナ侵攻および厳しい経済制裁を通しても安定的に推移している。本研究はその安定性の基盤に位置する人びとの信頼・社会的ネットワーク・市民参加といったソーシャルキャピタルに関するデータの解析に基づいて、21世紀に入ってロシア社会に生じている社会階層・企業社会・地域社会の変動と変わらない構造を明らかにする。とくに、国家依存の強さを全体として析出し、それが社会・市場・国家の質を規定していることを明らかにする。本研究は、紋切り型の権威主義的な社会の見方を否定し、下からの国家を支える意識・行動研究により、新しいロシア社会の見方を理論・実証的に提起する。
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研究実績の概要 |
ソーシャル・キャピタルに関する先行研究をチーム全体でサーベイしたうえで、ロシアにおけるソーシャル・キャピタルに関するレビューを現地海外研究協力者の協力を得て、チーム内で行った。そのうえで、ロシアにおける社会調査のための質問票を作成するため、2021年9-12月に15回程度、海外研究協力者を交えて毎週研究会を実施した。調査項目を精査したうえで、日本語、英語、ロシア語で質問票を作成し、2022年2月初から実施に移した。質問票は、ソーシャル・キャピタルに関する事項以外に、新型コロナ感染症に対する人々の意識及び行動変容を含めており、さらに実施の段階でロシアのウクライナ侵攻を受けそれに対する意識調査も急遽盛り込んでいる。質問票の精査と論文化は、次年度に国際共同研究の形で進める予定である。パンデミックの厳しい環境に加え、ロシアのウクライナ侵攻というきわめて特殊な状況の中で実施した社会調査は、世界的に見ても希少かつ重要なデータであり、単にソーシャル・キャピタルの実証研究だけに限定できない意義を有する資料と考えている。また、関連して、国際比較研究を進めるために、日本のソーシャル・キャピタルおよび新型コロナ感染症に対する意識・行動に関してもオンラインによる社会調査を2022年1月に実施した。この調査結果もまた実証研究の途上にある。 同時に、研究課題の前提条件として、ロシアの社会階層、企業組織、地域社会の3つの領域での経済制度とパフォーマンスをそれぞれ分担して実証的に研究し、その成果を研究報告するため、研究会を4回開催した。また、関連する課題で、代表者・分担者は国際学会・研究集会に成果を公表している。 海外の研究協力者とも緊密に連携し、オンラインを通じて意見交換を行ったが、新型コロナ感染症のために本年度も現地調査・海外現地参加ができなかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本研究課題においてその成否を左右するポイントは、ロシアにおけるソーシャル・キャピタルに関する社会調査のための質問票を作成することと、それを確実に実施することである。とくに質問票の作成は研究成果にそのまま直結する以上、本研究課題のもっとも重要な作業に当たる。そのために2021年秋に相当の時間をかけて、かつ現地の海外研究協力者を交えて質問項目を精査した。本質問票は今後、この研究分野におけるひな型になりうるもので、3か国語で作成した。また、実施時期と実施対象を綿密に、現地の実施担当者と打ち合わせを行い、2000件弱の対象者に電話での詳細な聞き取りを実施することに成功した。さらに、新型コロナ感染症だけではなく、実施の段階でロシアのウクライナ侵攻という事態に直面し、質問項目にそれを反映することで、世界に類のない社会調査を実施することができた。この点で、当初の計画以上の成果を獲得できたと考えている。また、ほぼ同じ質問項目を日本においても実施することができ(4000件ほどのサンプル)、この調査は当初の予定には含まれていなかったが、国際比較の視座で研究課題を広げる手がかりを獲得できたと考えている。調査結果は、今後適時解析を進め、国際的に成果を公表する予定である。 また、研究の基盤となるロシアを見る視座を確かなものにするために、共同研究成果として図書の刊行を複数行った。
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今後の研究の推進方策 |
ロシアおよび日本におけるソーシャル・キャピタルに関する社会調査結果をそれぞれ精査し、共同研究・国際共著論文の形で、研究成果の取りまとめを進める。研究成果は、ソーシャル・キャピタルだけではなく、新型コロナ感染症と経済システム、ロシアのウクライナ侵攻に関する国民統合の課題にもかかわっており、順次それぞれのテーマに関して成果の公表に努める。社会調査結果を計量的に解析することで、あるいは先行研究を計量的に考察することで、Annual MAER-Net Colloquium (Meta-Analysis of Economics Research Network)と欧州比較経済学会をはじめ国際学会で公表する準備をしている。 当初の研究計画では、現地での聞き取り調査と専門家との会合により、調査結果をより精査することを考えていたが、本年2月のロシアによるウクライナ侵攻によりロシア現地調査が難しくなっており、研究計画の変更は避けられない。それでも、ロシアだけではなく、カナダ、アメリカの現地海外研究協力者とオンラインでの研究打ち合わせを行う。同時に、調査結果に関しわが国のソーシャル・キャピタルに関する専門研究者と意見交換を行うことで、研究水準の確保に配慮する。
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