研究課題/領域番号 |
23K20406
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補助金の研究課題番号 |
20H04456 (2020-2023)
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 基金 (2024) 補助金 (2020-2023) |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分80040:量子ビーム科学関連
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研究機関 | 国立研究開発法人日本原子力研究開発機構 |
研究代表者 |
SAHA Pranab 国立研究開発法人日本原子力研究開発機構, J-PARCセンター, 主任研究員 (10391335)
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研究分担者 |
米田 仁紀 電気通信大学, レーザー新世代研究センター, 教授 (00210790)
柴田 崇統 大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構, 加速器研究施設, 助教 (20773956)
原田 寛之 国立研究開発法人日本原子力研究開発機構, J-PARCセンター, 副主任研究員 (30601174)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
17,420千円 (直接経費: 13,400千円、間接経費: 4,020千円)
2024年度: 2,080千円 (直接経費: 1,600千円、間接経費: 480千円)
2023年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2022年度: 1,950千円 (直接経費: 1,500千円、間接経費: 450千円)
2021年度: 5,590千円 (直接経費: 4,300千円、間接経費: 1,290千円)
2020年度: 6,240千円 (直接経費: 4,800千円、間接経費: 1,440千円)
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キーワード | レーザー荷電変換 / レーザー開発 / レーザーイオン励起 / 大強度陽子加速器 / レーザー制御 / レーザー光源開発 |
研究開始時の研究の概要 |
大強度陽子加速器が供給する陽子ビームは、学術・産業の研究基盤として利用されており、ビーム強度はそれらの最先端実験の精度や効率を決める。世界中で稼働している大強度陽子加速器は、負水素イオンを陽子へと荷電変換する入射方式で大強度ビームを蓄積している。しかし、炭素膜を用いた従来の方式では、膜の寿命などからビーム強度に限界が見えてきた。本研究は、新たに提案したレーザーによる荷電変換の入射方式を実験的に評価し、実用化に向けたシステムの最終設計を達成することを目的とした基盤研究である。本研究で開拓されうるビーム強度の飛躍は、様々な最先端科学をさらに加速させるため、我が国に限らず他分野への波及効果も大きい。
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研究実績の概要 |
2022年度は、各担当者が以下の5項目(①~⑤)の開発、全員でレーザー荷電変換実験を実施した。①レーザー光源開発・レーザー制御では、分担者:米田と原田が最短100psのパルス幅を加速器のタイミング信号に同期して安定に出力するフロントエンド部、数100MHzのパルス列を一定出力になるように増幅するファイバー増幅器及び数μJのパルス出力を達成する最終段増幅器で構成する多段増幅レーザーシステムを開発した。②深紫外光レーザー開発では、分担者:米田が深紫外光発生のために非線形光学素子を用いた2倍波・4倍波とそれらの加算である5倍波の生成ならびに高耐久の光学ミラー開発を進めた。③レーザー出力の低減化では、分担者:米田と原田がイオンビームに照射するレーザー光を再度照射領域に16回像転送させる光学系を開発した。④イオンビーム最適化・相互作用理論研究では、代表者:サハがイオンビームライン(エネルギー:400MeV)のレーザー照射点におけるイオンビームの実空間・運動量空間の光学パラメータの最適化に向け、イオンビームのみの調整試験を実施し、ビームラインにおける大きなビーム損失がない状態で、分散関数の傾きを目標の半分まで調整することに成功した。⑤レーザー荷電変換実験整備では、分担者:原田が400MeVビームラインでのレーザー荷電変換実験に向けた準備として、50mの長距離の区間において真空パイプによるレーザー輸送光路を2本整備し、レーザー安定輸送を確立した。上記①と③で開発した光源と光学系を用いて、3MeVテストビームラインにおけるレーザー荷電変換実験を実施し、昨年度の実験結果である16.8%を上回る25%の荷電変換効率に成功した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
レーザー荷電変換実験研究の基盤であるレーザー光源開発・レーザー制御では、数100MHzのパルス列の多段増幅レーザーシステムを開発し、時間制御及びジッター抑制に成功した。本レーザー光源を用いて、3MeVテストビームラインにおけるレーザー荷電変換実験を実施し、イオンビームとの時空間マッチングに成功し、1パルスあたり1.5%以上の荷電変換効率を達成した。さらに、必要なレーザー出力低減に向けたイオンビームに照射するレーザー光を再度照射領域に32回像転送させる光学系の開発に成功し、その光学系を用いることで、最大25%の荷電変換にも成功した。深紫外光レーザー開発では、波長変換試験の実施及び高出力化に向けた試験を進めている。400MeVビームラインでの実験に向けたレーザー光路の整備に関しては、昨年度に予定した通りに、空気の揺らぎの影響を低減するための真空パイプへのアップグレード、2本の50mの光路の増設を完了した。その上で、50mのレーザー光路の終端にレーザー用カメラを設置し、低出力レーザー光源を用いて50mの光路の安定性を4か月間計測した結果、非常に安定な光路を確立した。以上のことから、計画通りにおおむね順調に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
今後、本研究をさらに推進すべく、以下を実施していく。 2022年度に開発したレーザー光源の出力部に増幅器を追加し、現状の数倍の高出力化を行い、3MeVテストビームラインにて25%を超える荷電変換を目指す。次に、400MeVビームラインでの実験に重要となる深紫外光レーザー開発では、既存のレーザー光源から出力されたレーザー光(波長:1064nm)に対して非線形光学素子を用いて波長変換(1064nmから213nm)を行い、効率が最大となるような光学素子の設置角度や温度などのパラメータの探索を継続して行う。必要に応じて、追加で光学素子を購入する。遷移状態計測装置の開発では、校正試験を継続して実施し、400MeVビームラインでの実験で使用できるよう取り付け治具の製作も進める。レーザー光路整備に関しては、整備した50mの光路における安定化を実現したため、2023年度は400MeVビームラインにおいて初めて、レーザーをイオンビームに照射する荷電変換実験を実施する。そのために必要な400MeVビームラインにおける遠隔駆動制御システムの構築、照射窓の整備を行う。
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