研究課題/領域番号 |
23K20408
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補助金の研究課題番号 |
20H04471 (2020-2023)
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 基金 (2024) 補助金 (2020-2023) |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分90010:デザイン学関連
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研究機関 | 一橋大学 |
研究代表者 |
鷲田 祐一 一橋大学, 大学院経営管理研究科, 教授 (80521286)
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研究分担者 |
永井 一史 多摩美術大学, 美術学部, 教授 (30740724)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
15,600千円 (直接経費: 12,000千円、間接経費: 3,600千円)
2024年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2023年度: 1,820千円 (直接経費: 1,400千円、間接経費: 420千円)
2022年度: 2,340千円 (直接経費: 1,800千円、間接経費: 540千円)
2021年度: 7,800千円 (直接経費: 6,000千円、間接経費: 1,800千円)
2020年度: 2,730千円 (直接経費: 2,100千円、間接経費: 630千円)
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キーワード | デザイン / 公共セクター / 都市開発 / 地方自治体 / 公共セクタ |
研究開始時の研究の概要 |
中央省庁や地方自治体における「デザイン関連業務」について、量的・質的に実態把握のための調査を実施し、その業務内容と会計処理について、専門職としてのデザイナーを雇用することで解決できる部分が何かを同定する。その結果を受けて、若手のデザイン系大学の学生などをインターン派遣することでそれらの問題をどの程度解決できるのかを社会実験の形で検証し、今後の公共セクターでの「デザイン力活用」の政策案を提案する。
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研究実績の概要 |
2023年度は、この研究に理解を示す地方自治体に実際にデザイン人材を派遣し、どのような効果があるのかの検証を試みた。具体的には石川県庁および小松市、京都府京丹波町の2か所を主たる研究対象とし、2022年度から試験的に試みてきた東京都多摩市の例も併せて、研究のまとめを進めている。いずれの例でも、デザイン人材が介入することで改善される可能性のある業務は多岐にわかって存在することが確認され、また実際に介入することでいくつかの効果も確認された。具体的には、1)未来のあるべき変化をアニメーションなどで見える化した結果、諸般の事情でぶれやすい行政施策がぶれにくくなったという効果、2)デザイン思考のユーザー参与観察の実施によって、各自治体の相対的な価値(観光の価値、福利厚生的な価値)などが明確化しやすくなった、3)外部デザイン人材を介して、自治体のトップ(副知事、市長、町長)とのダイレクトな意思疎通が実現しやすくなった、などである。一方でそれぞれの例で共通する課題も見えてきた。具体的には1)新アイデアを提案してそれを実現しようとしても、現場の都合によって変質し「似て非なるもの」ができる傾向がある、2)現場職員が日常業務に忙殺され、外部者とのプラスオンの業務に時間を割くことができず、最終的には縦割り組織のたらいまわしにあったり連絡が取れない状態になったり、という結果に陥った、などである。このような課題に直面すると、デザイン人材は自身が活躍できる場を見いだせなくなり、容易に活動休止状態になってしまう。このような課題をどうすれば解決できるのかについて、実際に派遣されたデザイン人材へのさらなる取材、および派遣を受け入れた自治体側の担当者へのさらなる取材を実施し、今後への示唆を得られるような分析を試みてみたい。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究に対して理解を示してくれる受け入れ自治体が運よく3か所も見つかったことが順調な進展の実現に大きく寄与している。また派遣するデザイン人材の確保についても、研究代表者が所属する大学で「データ・デザイン・プログラム」という教育プログラムの責任者に着任したことで、安定的に良質なデザイン人材が得られるようになったことも大きい。デザイン人材の派遣にあたっては、旅費や人件費などが発生しやすく、完全に「実務の一環」として人材派遣を実施することは、本研究の枠内では難しい。しかし上記のように、研究代表者が教育プログラムの責任者に着任したことで、「教育」の一環としてデザイン人材の派遣ができるようになったことで、学内の他の教育プログラム向け奨学金と連動させやすくなり、また派遣されるデザイン人材(学生)にとっても、いわばインターンの一環として取り組むことができるようになった。これによって、旅費や人件費の発生を大部分抑制できた。このような機会にめぐまれたことは、本研究の進展にとって非常に幸運であった。
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今後の研究の推進方策 |
今後も、受け入れ側、非派遣者双方と継続的に緊密な連絡が取れる状況を維持できているので、2024年度も引き続き取材や調査を随時実施し、本質的な課題解決に向けての研究成果のまとめと提案をまとめていけると確信している。具体的には、実際に3つの自治体に派遣されたデザイン人材(のべ約30名程度)に、統一的な事後アンケートを実施し、どのような貢献ができたと感じているのか、どのような問題に直面したのか、どのようにすれば解決できそうか、などを聴取する。又受け入れ側のキーパーソンや、首長(石川県副知事、京丹波町長、多摩市長)にもインタビューを実施し、公共セクタでのデザイン人材の活用に関する現状と今後について、意見を聴取する予定である。また、このような自治体は現状では数少なく、今後、量的拡大を目指していくべきであるが、まったくデザイン人材の活用に興味を持たない自治体をどうすれば説得できるのか、についても、3人の首長からヒントを得られるように取材を試みてみたい。特に、休眠している「意匠技官制度」(いわゆる公務員デザイナー制度)の再活用をする可能性がないのか、についてはより具体的に意見を聴取してみる予定である。 なお、この問題は、諸外国でも良い先行例が少なく、行政のイノベーションとして一朝一夕の改革は難しいと思われるが、海外事例の取材を実施したキーパーソンにも再び日本の状態をフィードバックし、どのような意見を持つのか再確認してみたい。
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