研究課題/領域番号 |
23K20418
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補助金の研究課題番号 |
21H00470 (2021-2023)
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 基金 (2024) 補助金 (2021-2023) |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分01020:中国哲学、印度哲学および仏教学関連
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
岡野 潔 九州大学, 人文科学研究院, 教授 (80221844)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
8,840千円 (直接経費: 6,800千円、間接経費: 2,040千円)
2025年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
2024年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
2023年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
2022年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
2021年度: 2,080千円 (直接経費: 1,600千円、間接経費: 480千円)
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キーワード | 梵語仏教文学 / ジャータカマーラー / アヴァダーナマーラー / 仏教文学 / ハリバッタ / 天人女房 / 白鳥乙女 / 日本昔話 / インド仏教説話 / アヴァダーナ / Jayamuni / ネワール |
研究開始時の研究の概要 |
本研究は、ネパールを含む北インド仏教文化圏で伝承された、仏教徒の作ったサンスクリット文学の諸文献の研究(テクスト校訂や翻訳)を行うものである。 具体的には、17世紀頃ネパールのアヴァダーナマーラー文献群と、11世紀のカシュミールの詩人クシェーメンドラの仏教説話集と、4世紀後半のハリバッタの仏教説話集について、研究を進めている。
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研究実績の概要 |
本研究課題は、次の三つの課題を柱にして、文献学的研究を行うものである。 「課題1」はネパールで作られた梵文のアヴァダーナマーラー文献群(仏教説話集)の研究。 「課題2」はクシェーメンドラ作『菩薩アヴァダーナの如意蔓』(bodhisattvAvadAnakalpalatA)の諸章の校訂研究。 「課題3」は『ハリバッタ・ジャータカマーラー』(略号 HJM)の Straube 校訂梵文テクスト(2019年)に基づく諸章の正確な和訳と研究。 私は2022年度4月の計画どおりに、「課題1」と「課題3」において大きく研究を進め、それぞれの課題に対して2022年度中に長い論文を1本ずつ発表したが、それは以下のような成果である。 「課題1」において、『如来出生アヴァダーナマーラー』(tathAgatajanmAvadAnamAlA)の第16章・第17章・第18章・第19章の、合計4章のサンスクリット本文の校訂テクストと全訳と研究を発表し、それらの章がいかなる源泉資料に基づいて作られているかを明らかにした。 「課題3」においては、HJM で最も大きな章(他の章の数倍の長さをもつ章)である第25章『キンナリー・スダナ』の和訳を発表した。梵文が欠落している箇所はチベット語訳から翻訳を補いながら、世界で初めてその章の全訳を行い、またその章の内容研究として、その説話についての民話学的な考察を行った。 さらに、2022年度の研究計画では記述がなされていなかったが、その年度中になされた重要な研究成果として、パーリ経典『アッガンニャ経』に見られる人類文化起源神話とその正量部の伝承を扱った1論文の発表がある。これは『日本佛教学年報』に掲載された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
エフォートの優先順位として第一に「課題3」、第二に「課題1」を優先させて研究を進めるという、2022年4月の交付申請書に記した推進方策どおりに、順調にそれらの研究を2022年度に進めることが出来た。 まず「課題1」の『如来出生アヴァダーナマーラー』の研究については、2022年度にその作品の4つの章の校訂と翻訳を発表した。そしてそれらの章で作者がどのように馬鳴の『ブッダチャリタ』を利用し、その詩節の借用や翻案をしているのか、その詳細を明らかにした。調査によりそのネパールの仏伝文献の作者が『マハッジャータカマーラー』MahajjAtakamAlA もしくは『悲華経』 KaruNApuNDarIkasUtra に基づいてラーフラの入胎の場面を記述したことが明らかになった。 また「課題3」のHJM の仕事においては、HJM の全章の中で最大の難物といえる第25章『キンナリー・スダナ』の和訳・研究の発表をうまくこの2022年度に終えることが出来た。この第25章の和訳研究において、単に梵文とチベット語訳に基づいて章の全訳を行っただけではなく、「天人女房」と「白鳥乙女」説話の研究の進展のためにインド仏教文献学の立場から指摘を行い、世界の民話学に独自の貢献を果たせたのは、予想以上の研究成果であった。年度当初の約束以上に研究はうまく進展した、といえるであろう。
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今後の研究の推進方策 |
「課題1」の研究においては、本研究課題期間(5年間)の2年間ですでに5つの章の校訂と翻訳を果たし、当初の予定以上に早く進展した。それ故、研究課題期間の3年目は「課題1」に代わって「課題2」のほうに力を入れてゆきたい。「課題2」とは、クシェーメンドラ作『菩薩アヴァダーナの如意蔓』の校訂研究である。 そこで2023年度を含めた今後の研究のエフォートの優先順位として、第一に「課題3」を、第二に「課題2」を置くことにする。「課題2」を「課題1」よりも優先させる点で、これまでと方策が異なる。 「課題3」の HJM の仕事においては、この2022年度に HJM の全章の中で最大の長さをもつ第25章『キンナリー・スダナ』の和訳・研究を成し遂げることが出来たので、私の三つの課題の中で一番大変な仕事である「課題3」は、とうとう山場が越えることが出来たという感慨がある。HJM にはまだ未翻訳の章が残っているが、どれも第25章ほど難物ではなく、恐らく今後も順調に進むであろう。
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