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現代日本における地域市民演劇の諸相

研究課題

研究課題/領域番号 23K20429
補助金の研究課題番号 21H00482 (2021-2023)
研究種目

基盤研究(B)

配分区分基金 (2024)
補助金 (2021-2023)
応募区分一般
審査区分 小区分01050:美学および芸術論関連
研究機関大阪公立大学 (2022-2024)
大阪市立大学 (2021)

研究代表者

片山 幹生  大阪公立大学, 大学院文学研究科, 研究員 (50318739)

研究分担者 本橋 哲也  東京経済大学, コミュニケーション学部, 教授 (20230047)
日比野 啓  成蹊大学, 文学部, 教授 (40302830)
須川 渡  福岡女学院大学, 人文学部, 准教授 (50709566)
小川 史  横浜創英大学, こども教育学部, 教授 (60442159)
五島 朋子  鳥取大学, 地域学部, 教授 (80403369)
研究期間 (年度) 2021-04-01 – 2025-03-31
研究課題ステータス 交付 (2024年度)
配分額 *注記
12,350千円 (直接経費: 9,500千円、間接経費: 2,850千円)
2024年度: 3,250千円 (直接経費: 2,500千円、間接経費: 750千円)
2023年度: 3,120千円 (直接経費: 2,400千円、間接経費: 720千円)
2022年度: 2,470千円 (直接経費: 1,900千円、間接経費: 570千円)
2021年度: 3,510千円 (直接経費: 2,700千円、間接経費: 810千円)
キーワード演劇 / 地域文化 / 民俗芸能 / アマチュア演劇 / 共同体 / 地域市民演劇 / 共同体演劇 / 新しい芸能 / 地域演劇 / 市民演劇 / 芸術産業 / 市民ミュージカル / 地域芸能 / 地域社会
研究開始時の研究の概要

本研究は専門分野の異なる複数の研究者の共同作業によって、現代日本の多様な地域市民演劇の世界の見取り図を提示し、アマチュアの演劇をその重要性にみあうかたちで演劇史のなかに位置づけることで、日本近代演劇史の書き換えを行うことを目的としている。
90年代以降のアマチュア演劇活動の全体像を示すことで「新しい公共」としての地域市民演劇の意義を再考し、日本演劇史のなかでその規模と存在感に見合う位置付けを行いたい。90年代以降の記述の空白を埋める作業となる本研究の成果は、 劇場、プロ俳優、劇作家中心にとらえられていた演劇観の再検討を迫り、地域市民演劇という演劇のあり方の普遍性を示すものとなるだろう。

研究実績の概要

当研究課題の3年目にあたる2023(令和4)年度には7人の研究メンバーで、約20箇所で市民演劇活動の調査を行った。
これまで非営利のアマチュアの演劇を中心に調査をおこなってきたが、2023年度は調査研究の対象を一歩先に進め、地域の経済活動と直接結びついている事例を調査した。総見では、愛媛県東温市の坊ちゃん劇場に行き、劇場の経営者であるジョイアートの越智陽一氏に聞き取り取材を行った。坊ちゃん劇場は複合商業施設・レスパスシティの敷地にあり、買い物に来た客がついでに鑑賞する/鑑賞した帰りに買い物をする、というような同様の商業施設における映画館が果たすような役割をすることを期待されて作られている。その翌日6月11日に観劇と取材を行った南ファミリー劇団は、“家族”で“定住”していること=血縁・地縁を唯一無二の魅力として固定客を集める。9月に取材した多良間村の八月踊りは約千人の島の人口の約1/3が参加するという、今でも活発に活動している民俗藝能で、祭りの際に訪れる私たちのような観光客も含めた島内全体の経済活動に寄与していた。
継続的に調査を行っている「現代版組踊」については、その創始者である平田大一作・演出による『鬼鷲─琉球王尚巴志伝』に加え、『肝高の阿麻和利』のスピンオフにあたる『百十』、さらに北海道・恵庭市を拠点とするチーム絆花『北海道歴史舞台 中山久蔵物語』と、それぞれに制作背景、目的の異なるバリエーションを観ることができた。チーム絆花は現代版組踊を札幌経済圏のベッドタウンである恵庭市で展開する集団だが、パンフレットに載せられている協賛企業の広告数がこれまで見てきた現代版組踊のどこよりも多く、主宰する一般社団法人未来工房の剛腕ぶりとともに、恵庭市の経済活動の盛り上がりを垣間見せてくれた。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

2021(令和3)年度は9名のメンバーにより約30箇所、2022(令和4)年度は8名のメンバーで20箇所、2023年(令和5)年度は7名のメンバーで20箇所の演劇活動の取材を行った。この3年間で調査を行った対象は70箇所となる。われわれの研究活動の根幹をなす当事者への聞き取り調査による現地取材については、ほぼ予定通りの進捗状況となっている。本研究の最終年度である2024年度は、年度末に刊行が予定されている論集の執筆に必要となる調査を各研究メンバーが行う他、 当研究の成果を引き継ぎ、さらに発展させ、来年度以降、新たにメンバーを拡大して行う新しい研究課題、観光と演劇にもつながる調査も10箇所程度行う予定となっている。
本研究参加者のメンバーによる論集は『「「新しい芸能」の誕生─ 地域市民演劇の〈トポス〉の拡大と変容」(仮題)』というタイトルになる予定である。研究調査でわれわれが出会った地域性と共同体、祭礼などと結びつく伝統的な民俗芸能とも違う事例を「新しい芸能」としてとらえ、従来の地域市民演劇のあり方や訓練された身体によって自己表現を目指す、いわゆる芸術的なパフォーマンスとも異なるこれらの「芸能」のムーブメントについて各人が報告と考察を行う。論集の準備と並行して、今年の夏に申請する予定の観光と演劇を主題とする次期研究の準備作業も進めることができている。

今後の研究の推進方策

これまでの調査結果について検討を行い、当研究の研究課題の最終年度にあたる今年度末に刊行予定の論集のコンセプトについて研究メンバーで協議した。我々がこれまで調査したさまざまな地域演劇の事例には、アマチュアによる市民演劇という従来の枠組みでは捉えきれない、新しいかたちの共同体祝祭のありかたを示すものがあった。その表現や内容は地域性に根ざし、固有の歴史や伝統を利用しつつも、ゆるやかで持続的な活動のための共同体によって担われるような演劇活動である。現在の日本の地域市民演劇は、個として自立した市民が世界を構成する「アマチュア演劇的なもの」から、共同体の一員として自己を発見/更新する場としての「新しい芸能」に移り変わってきたのではないかという問いが生じた。刊行予定の論集では、近年のアマチュアによる実演芸術の傾向を「新しい芸能」という視点で捉え、この観点から個別の事例について分析を行うことを目指している。また当研究で得られた「新しい芸能」という視点をさらに発展させ、地域の観光産業と上演芸術が〈観光の場〉においてどのように相互作用し、どのような新たな文化的価値や社会的影響を生み出すかを探求することを目標とする新たな研究の準備を進めている。
2024年度は9月と3月に各研究メンバーの調査・研究を報告する研究会を開催する。また大衆演劇研究のパイオニアである橋本正樹氏を招き、地域市民演劇における大衆演劇の影響について考えるシンポジウムを秋に開催する。11月30日に東京経済大学で行われる日本演劇学会秋の研究集会で、次期の研究主題である観光と演劇をテーマとするパネルを当研究メンバーで企画する予定。

報告書

(3件)
  • 2023 実績報告書
  • 2022 実績報告書
  • 2021 実績報告書
  • 研究成果

    (17件)

すべて 2024 2023 2022 2021

すべて 雑誌論文 (6件) (うちオープンアクセス 3件) 学会発表 (7件) 図書 (4件)

  • [雑誌論文] 歴史のかさぶた―SCOT『世界の果てからこんにちわ』におけるアイデンティティの不確定性2024

    • 著者名/発表者名
      本橋哲也
    • 雑誌名

      コミュニケーション科学

      巻: 59 ページ: 3-18

    • 関連する報告書
      2023 実績報告書
    • オープンアクセス
  • [雑誌論文] 市民参加型演劇の萌芽-劇団ぶどう座『どぶろく農民の墓』(一九七一)をめぐって2023

    • 著者名/発表者名
      須川渡
    • 雑誌名

      演劇学論叢

      巻: 22 ページ: 130-142

    • 関連する報告書
      2022 実績報告書
  • [雑誌論文] 他者を待望する : 鈴木忠志/SCOT『シンデレラ』における分身の構造2023

    • 著者名/発表者名
      本橋哲也
    • 雑誌名

      コミュニケーション科学

      巻: 57 ページ: 22-33

    • 関連する報告書
      2022 実績報告書
    • オープンアクセス
  • [雑誌論文] 日比野啓 編『「地域市民演劇」の現在 芸術と社会の新しい結びつき』2022

    • 著者名/発表者名
      須川渡
    • 雑誌名

      演劇学論集 日本演劇学会紀要

      巻: 75 号: 0 ページ: 110-111

    • DOI

      10.18935/jjstr.75.0_110

    • ISSN
      1348-2815, 2189-7816
    • 年月日
      2022-12-15
    • 関連する報告書
      2022 実績報告書
    • オープンアクセス
  • [雑誌論文] 2年ぶりによみがえる「声」- 北九州芸術劇場クリエイション・シリーズ『まつわる紐、ほどけば風』2022

    • 著者名/発表者名
      須川渡
    • 雑誌名

      Act

      巻: 32

    • 関連する報告書
      2022 実績報告書
  • [雑誌論文] 郷土芸能探訪76切山歌舞伎(山口県下松市)2022

    • 著者名/発表者名
      舘野太朗
    • 雑誌名

      文部科学教育通信

      巻: 533 ページ: 26-27

    • 関連する報告書
      2022 実績報告書
  • [学会発表] 地域劇場における住民参加 ― 演劇と出会う場のあり方をめぐって2023

    • 著者名/発表者名
      内村陽一郎、龍亜希、吉松寛子、古川知可子、須川渡
    • 学会等名
      日本演劇学会秋の研究集会
    • 関連する報告書
      2023 実績報告書
  • [学会発表] 共に生きる場から演劇を再考する ― 実践の現場から2023

    • 著者名/発表者名
      五島朋子、菅原直樹、長津結一郎、森田かずよ
    • 学会等名
      日本演劇学会秋の研究集会
    • 関連する報告書
      2023 実績報告書
  • [学会発表] 障害者支援施設あざみ・もみじの演劇実践と教育効果2023

    • 著者名/発表者名
      須川渡
    • 学会等名
      民族藝術学会
    • 関連する報告書
      2022 実績報告書
  • [学会発表] 宝塚歌劇の『素人性』と市民演劇2022

    • 著者名/発表者名
      鈴木理映子
    • 学会等名
      日本演劇学会
    • 関連する報告書
      2022 実績報告書
  • [学会発表] いま、臨界点にある演劇:「現代版組踊」から、 演劇と地域、教育、産業を考える2021

    • 著者名/発表者名
      舘野太朗、片山幹生、鈴木理映子、澤井万七美、永田靖
    • 学会等名
      日本演劇学会
    • 関連する報告書
      2021 実績報告書
  • [学会発表] ドラマか非ドラマか? ―地域市民演劇としての俄(にわか)を考える2021

    • 著者名/発表者名
      畑中小百合・佐藤恵理・松岡薫・中野正昭
    • 学会等名
      日本演劇学会
    • 関連する報告書
      2021 実績報告書
  • [学会発表] 敗戦直後の演劇活動 その実態と特性2021

    • 著者名/発表者名
      小川史
    • 学会等名
      日本社会教育学会
    • 関連する報告書
      2021 実績報告書
  • [図書] 戦時下の演劇─国策劇・外地・収容所2023

    • 著者名/発表者名
      神山彰
    • 総ページ数
      368
    • 出版者
      森話社
    • ISBN
      9784864051804
    • 関連する報告書
      2023 実績報告書
  • [図書] 「地域市民演劇」の現在2022

    • 著者名/発表者名
      日比野啓
    • 総ページ数
      284
    • 出版者
      森話社
    • ISBN
      9784864051651
    • 関連する報告書
      2021 実績報告書
  • [図書] 人文学のレッスン2022

    • 著者名/発表者名
      小森謙一郎
    • 総ページ数
      320
    • 出版者
      水声社
    • ISBN
      9784801006058
    • 関連する報告書
      2021 実績報告書
  • [図書] 戦後日本のコミュニティ・シアター 特別でない「私たち」の演劇2021

    • 著者名/発表者名
      須川渡
    • 総ページ数
      379
    • 出版者
      春風社
    • 関連する報告書
      2021 実績報告書

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公開日: 2021-04-28   更新日: 2024-12-25  

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