研究課題/領域番号 |
23K20430
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補助金の研究課題番号 |
21H00483 (2021-2023)
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 基金 (2024) 補助金 (2021-2023) |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分01050:美学および芸術論関連
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
平田 栄一朗 慶應義塾大学, 文学部(三田), 教授 (00286600)
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研究分担者 |
針貝 真理子 東京大学, 大学院総合文化研究科, 准教授 (00793241)
寺尾 恵仁 北海道大学, メディア・コミュニケーション研究院, 講師 (30896684)
北川 千香子 慶應義塾大学, 商学部(日吉), 准教授 (40768537)
三宅 舞 獨協大学, 外国語学部, 専任講師 (50896701)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
15,470千円 (直接経費: 11,900千円、間接経費: 3,570千円)
2024年度: 3,380千円 (直接経費: 2,600千円、間接経費: 780千円)
2023年度: 3,900千円 (直接経費: 3,000千円、間接経費: 900千円)
2022年度: 4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2021年度: 4,030千円 (直接経費: 3,100千円、間接経費: 930千円)
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キーワード | 演劇 / パフォーマンス / 民主主義 / 演劇学 / 政治学 / 美学 / 政治思想 / ヨーロッパ / 文化研究 / 芸術学 / ヨーロッパ研究 / 芸術・文化研究 |
研究開始時の研究の概要 |
民主主義と演劇の関係はパフォーマンス政治や劇場型政治などの一面的な観点から捉えられがちである。しかし古代ではプラトンが、近代ではルソーが、20世紀にはハンナ・アーレントが両者に多様な関連があることを論じてきた。彼らはーー民主主義と演劇への評価において違いがあるもののーー両者は互いに絡み合うようにして成立する側面があることを指摘した。近年、欧米の政治思想と演劇研究はこれらの思想家の理論を現代民主主義とその危機に照らし合わせて議論している。本研究はその議論を踏まえつつ、演劇と政治学の双方の立場から民主主義と演劇の関係を捉え、演劇学と政治学による学際的な研究成果を目指すものである。
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研究実績の概要 |
演劇と民主主義の関係を演劇学と政治学の立場から考察し、新しい見地を導き出そうとする本研究の2年目に当たり、①演劇学・②政治学・③国際研究という三つの領域において研究を進め、最終年度(2025年度)に成果報告を行うための準備を行なった。三つの領域での研究は次の通りである。 ①演劇学の分野では2022年6月、多摩美術大学で開催された演劇学会全国大会で研究代表者と共同研究者の計4名が「新しい民主主義論と演劇」というパネルセッションにて民主主義と演劇の関係について発表を行なった。また研究拠点である慶應義塾大学に8名の演出家や映像作家を招き、本研究の視点から自身の創作活動について話していただき、一般の方々も交えた公開討論会を行なった。 ②政治学とのコラボレーションでは2022年12月に政治学者の山本圭氏(立命館大学)を研究拠点に招いて最新の民主主義研究について講演「近年Plebiscitary Democracyと呼ばれているものについて」という題目で報告していただき、それについて政治学と演劇学の双方の視点から議論した。 ③2022年9月ハーバード大学のMagda Romanska准教授と北京現代芸術基金会長のCui Qiao氏が中心となって"Future Stage Manifest Asia"というオンライン・パネルセッションを開催し、コロナ禍での東アジア諸国の演劇事情について議論したが、このパネルセッションに研究代表者が参加して、日本演劇界の事情について話をした。また2023年2月にボーフム大学演劇学科上級教員のKai van Eikels氏を研究拠点に招き、現代ヨーロッパ演劇に見られる、開かれた政治的文化の発展の可能性について講演していただいた。 これらの一連の実績によって、演劇と民主主義の関係について昨年度以上に新しい見地を得ることができたと考えている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
民主主義と演劇の関係を探究する本研究は3つの領域(①演劇学、②政治学、③国際研究)を中心に行なうことを目標として始まった。研究実績報告に記した内容に確認されるように、2022年度は3つの領域の全てにおいて研究を進めることができたので、目標に沿って研究ができたと考えている。 2022年6月、昨年度(2021年度)の研究成果の有効性を確認するため、本研究メンバーのうち4名が日本演劇学会の全国大会で「新しい民主主義論と演劇」というパネルセッションを組み、昨年度の成果報告を行なった。このパネルセッションでは、プラトンの民主主義と演劇論や、アメリカの思想家サミュウェル・ウェーバーらの演劇ー民主主義論ないしは演劇ー政治論を紹介し、これらの民主主義論が演劇とどのように関係するかについて演劇学の専門家に説明し議論を行なった。この議論を通じて両者の関係の理解が本研究メンバーにおいてさらに深まったと考えている。 政治学の専門家との共同研究では、2022年12月本研究の拠点である慶應義塾において、政治学の専門家に講演を行なっていただき、新しい民主主義論の理解を深めるとともに、本研究に協力していただいている政治学の専門家たちと今後の研究について相談することができた。 国際研究ではハーバード大学とボーフム大学の研究者とのコラボレーションを行い、演劇と政治や演劇と民主主義について現在の政治的・文化的情勢を踏まえて議論した。 今年度(2022年度)の研究成果を確認するために、2023年6月に開催予定のドイツ学会大会において成果発表(発表はフォーラム形式)を行う準備を進めた。2023年2月に発表の申し込みを行なったところ、申請が認められた。これを踏まえて2023年3月に発表予定者が発表の具体的な準備を行なった。以上の研究活動を踏まえると、本研究はおおむね順調に進んでいると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
合計4年間を予定している本研究は来年度(2023年度)に3年目を迎えるに当たり、最終年度(2024年度)の成果報告を論文集にすることの準備を本格的に進める。この論文集には本研究メンバーと政治学者が寄稿する予定であるが、執筆者とテーマを確定できるようにする。そのために研究代表者は2023年夏に論文集の序章に当たる文章を執筆し、演劇と民主主義の関係について指針となる考え方を執筆予定者に提示する。論文執筆予定者はこの序章を踏まえて、各自の研究テーマをより具体化する。 より開かれた民主主義の一例として、LGBTQなどの多様な人々がより生きやすようにする社会が挙げられるが、このことを間接的なテーマとする舞台作品や映像作品が日本でも創られており、このテーマに関する研究を芸術家とのコラボレーション形式で進める。 一方、本研究の成果を中間報告として発表し、現在得られた見地が妥当であるかを専門家に問う機会を設ける予定である。2023年6月に開催予定のドイツ学会大会において研究代表者と共同研究者の計3名が「演劇と民主主義」という題目でフォーラム発表を行う予定である。ドイツ学会には歴史学、政治学などを専門とする方々が一定数おり、演劇研究者から成る本研究メンバーにとって、ドイツ学会でのフォーラム発表は異なる専門家から貴重なアドヴァイスをうかがえる機会となる。 2023年秋には政治学の専門家を研究拠点である慶應義塾大学に招き、講演ないしはシンポジウムの形式で新しい民主主義論について議論する予定である。この講演ないしシンポジウムは本研究の最終年度(2024年度)に作成する成果本に反映される予定である。 国外との共同研究においては、本研究の1年目から提携しているボーフム大学の研究者を2023年9月に研究拠点に招き、講演形式で発表していただく予定である。
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