研究課題/領域番号 |
23K20500
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補助金の研究課題番号 |
21H00573 (2021-2023)
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 基金 (2024) 補助金 (2021-2023) |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分03030:アジア史およびアフリカ史関連
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研究機関 | 明治大学 (2023-2024) 東京大学 (2021-2022) |
研究代表者 |
郭 南燕 明治大学, 文学部, 専任教授 (30530505)
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研究分担者 |
中尾 徳仁 天理大学, 参考館, 学芸員 (10441437)
李 梁 弘前大学, 人文社会科学部, 客員研究員 (20281909)
白石 恵理 関西外国語大学, 国際文化研究所, 研究員 (30816260)
小倉 康之 玉川大学, 芸術学部, 教授 (10516173)
小野 正弘 明治大学, 文学部, 専任教授 (90177270)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
16,900千円 (直接経費: 13,000千円、間接経費: 3,900千円)
2025年度: 4,810千円 (直接経費: 3,700千円、間接経費: 1,110千円)
2024年度: 2,990千円 (直接経費: 2,300千円、間接経費: 690千円)
2023年度: 2,990千円 (直接経費: 2,300千円、間接経費: 690千円)
2022年度: 2,470千円 (直接経費: 1,900千円、間接経費: 570千円)
2021年度: 3,640千円 (直接経費: 2,800千円、間接経費: 840千円)
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キーワード | イエズス会の上海土山湾工房 / パリ外国宣教会の日本流布 / 教会美術 / 出版文化 / 東アジアの教会 / 聖具と聖像の発見 / 土山湾印書館刊行物の影響 / ド・ロ版画の研究 / 文化遺産と地域活性化 / 土山湾研究会の開催 / 東アジアの文化交流 / 研究成果集の執筆刊行 / 土山湾工房 / キリスト教文化 / 聖画聖像聖具 / カトリック書籍 / 流布と影響 / 土山湾工房作品 / パリ外国宣教会 / ド・ロ版画 / カトリックの信仰伝播 / イエズス会 / 聖具、聖画、聖像 / 上海徐家匯地域 / 上海土山湾工房作品 / キリスト教漢籍 / キリスト教美術工芸品 / プティジャン版 / 多言語多文化的融合 / 収蔵品の実地調査 / 土山湾作品の影響力の研究 / 研究成果の刊行 / ウェブ発信の準備 / 国内外の学会で研究発表 / 国内収蔵機関との協働 / 先行研究と既刊書籍の収集 / 国外メンバーとの意見交換 |
研究開始時の研究の概要 |
本プロジェクトは、日本における土山湾作品の流布を継続調査し、日本における土山湾刊行物の収蔵を網羅的に調査する蔵書目録を作り、土山湾刊行物の利用から生まれた日本の文化的成果を研究する。また、土山湾作品の日本輸入に関する当時の記録を、中国、日本、台湾、欧州のアーカイブで探す。本プロジェクトのWebsiteを公開し、研究成果を明示する。さらに研究成果の論文集『上海土山湾工房と日本文化』(仮題)を作り、土山湾が日本の文化に与えた影響を総合的に論考する。また、土山湾作品は日本以外に、東アジア諸国にも伝わっているため、研究と保存のための東アジアのネットワーク(研究者と収蔵機関)を構築する予定である。
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研究実績の概要 |
研究代表者は、研究分担者、協力者とともに8回の国内調査(広島県、長崎県、京都府)と3回の海外調査(上海とマカオ)を行い、日本国内の土山湾作品を多く同定し、国内外の新しい分担者と協力者(日本、中国、フランスの15名ほど)を募ることができた。 具体的には、(1)堂崎天主堂キリシタン資料館、久賀島潜伏キリシタン資料館、三井楽教会、大浦天主堂キリシタン博物館などで、土山湾からの燭台、聖像、聖具などを新たに発見し、上海とマカオの教会に収蔵される数少ない土山湾作品を実見し、土山湾作品の1930年代の写真入りの目録を協力者から提供してもらい、日本での調査を大きく発展させることができた。(2)土山湾作品に基づいて創作された「ド・ロ版画」に関する研究を深め、制作年代を確定し、研究成果を論文で刊行し、また、その版木10枚を直に調査し、ド・ロ版画の絵師を検討する研究をさらに進めている。(3)土山湾印書館により印刷、発行された書籍と雑誌の日本国内における収蔵状況を反映する蔵書目録の作成を始め、日本における再宣教だけではなく、天文、気象、地震などに寄与していたことを突き止めることができた。(4)久賀島潜伏キリシタン資料館の貴重な収蔵品の展示と整理を主導し、聖像数体と土山湾工房との関係を示す説明文を書き、収蔵品の価値を明示する目録の作成を始めている。本研究プロジェクトの成果を、歴史的文化遺産の保存と利用に若干、貢献することができるようになった。(5)3回の「土山湾研究会」(7月、11月、3月、ハイブリッド)を行い、また国内外の学会に数回、参加して、国内外の研究者に本研究の内容を知らせ、土山湾作品を媒介とした東アジアの文化交流に関する今後の共同研究を視野に入れて、本研究のさらなる展開が可能となった。(6)次年度と次々年度の研究目標を明確に定めて、研究成果集の執筆と刊行の日程を決めることができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本年度は、コロナの終息により、調査旅行のため、国内外を自由に移動することができたため、想定以上の成果が得られたといえる。具体的には、(1)研究代表者が国内外の研究者に声をかけ、本研究班への参加を要請したため、国内の土山湾作品の同定が進み、予想外の数量の土山湾作品が日本国内で収蔵されていることがわかった。(2)人的ネットワークにより、土山湾作品に基づいて創作された「ド・ロ版画」に関する研究を深め、制作年代を確定した成果を論文で刊行し、その版木10枚を直に調査し、版木の作成を通して、主導者のド・ロ神父の貢献度を模索する手掛かりを得て、ド・ロ版画の絵師に関する初歩的研究を進めることができた。(3)土山湾印書館の刊行物が、教会用だけではなく、近代日本の天文、気象、地震などの研究にも寄与していたことがわかり、土山湾と日本文化との広い関係を知ることができた。(4)貴重な収蔵品をもちながら、広く知られていない久賀島潜伏キリシタン資料館は、2018年に「世界文化遺産」と指定された久賀島集落の歴史と文化を紹介する格好な機関であるため、収蔵品の展示と整理を手伝い、収蔵品の価値を明示する目録の作成を始めることによって、本資料館が幅広く知られる契機を作ることになる。(5)研究代表者は、3回の「土山湾研究会」を主催し、国内外の学会で発表し、研究論文を英語と日本語で刊行し、本研究プロジェクトを学術界に広く知らせることができ、国内外の研究者と新たに知り合い、多くの知見を得ることができた。そのため、本プロジェクトの5年後の新しい展開を企画することができた。 以上の理由をもち、「当初の計画以上に進展している」といえよう。
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今後の研究の推進方策 |
今後2年の研究の推進方策は、(1)現地調査:長崎県を中心に、日本国内の土山湾作品(教会美術、聖具)の調査を継続し、明治期以降の日本再宣教にどのように役立てられたのかを検討する。これと同時に日本現存の土山湾作品の研究と保存に努める。(2)文献調査:a. 土山湾刊行の書籍と雑誌を収蔵している日本の公的図書館や私的文庫が数多くあるため、これらの蔵書を網羅的に調査し、『日本所収の土山湾刊行物蔵書目録』を完成する。b. 土山湾作品の日本輸入に携わった宣教師の活動に関する当時の記録を、中国、日本、台湾、ヨーロッパの研究機関のアーカイブで探し、日本へ輸入した時期、内容と規模、受容者などを解明する。(3)本プロジェクトのwebsite:本プロジェクトの研究状況と文化交流における土山湾作品意義を広く知らせるために、Websiteを構築中であるが、今年度末までに公開する。(4)科学研究:土山湾刊書籍と雑誌が、日本の天文学、気象学、地震学の研究に与えた影響を研究する。(5)日本語学研究:土山湾刊カトリック教理の中国語訳がいかに日本語の聖書の訳語、また、一般語として日本語のなかに流入しているかを探る。(6)徐家匯土山湾を中心とする近代上海の教会建築と日本の教会建築との影響関係を解明する。(7)本プロジェクトの研究成果をさらに論文(英語、日本語)で発表する予定である。(8)研究成果集(仮題)『上海土山湾工房と日本文化』で、土山湾が日本の宗教美術、工芸、日本語、辞書、天文学、建築、文学、科学研究に与えた影響を論考し、2025年度内に刊行する。(9)土山湾作品は日本だけではなく、韓国、ベトナム、台湾、マカオ、香港にも伝わったため、東アジアの研究者のネットワークを構築し、研究と保存のために、各地の研究者と交流する。
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