研究課題/領域番号 |
23K20507
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補助金の研究課題番号 |
21H00582 (2021-2023)
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 基金 (2024) 補助金 (2021-2023) |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分03040:ヨーロッパ史およびアメリカ史関連
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
西川 杉子 東京大学, 大学院総合文化研究科, 教授 (80324888)
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研究分担者 |
黛 秋津 東京大学, 大学院総合文化研究科, 教授 (00451980)
福嶋 千穂 東京外国語大学, 大学院総合国際学研究院, 准教授 (50735850)
西山 暁義 共立女子大学, 国際学部, 教授 (80348606)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
16,770千円 (直接経費: 12,900千円、間接経費: 3,870千円)
2025年度: 4,810千円 (直接経費: 3,700千円、間接経費: 1,110千円)
2024年度: 2,340千円 (直接経費: 1,800千円、間接経費: 540千円)
2023年度: 4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2022年度: 4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2021年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
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キーワード | ネットワーク / 啓蒙都市 / 近世 / 宗教 / ウクライナ / コンスタンティノープル / モルダヴィア / ポニャトフスキ / プロテスタント / 18世紀 / 啓蒙主義 / 啓蒙 / 外交ネットワーク / モルダヴィア侯国 / トランスステイツネットワーク / モルドヴァ / 記憶 / 18世紀ヨーロッパ / ヨーロッパ内移民 / 産業化 / 多文化 / 東中欧 / トランスステイツ・ネットワーク |
研究開始時の研究の概要 |
本研究は、1760年前後にイングランドの資金援助およびポーランド貴族による職業斡旋によって行われた、オスマン帝国の付庸国モルドヴァ公国フィリペン(現ウクライナ)へのドイツ系プロテスタント入植を分析の対象とし、18世紀中葉ヨーロッパの①諸地域をびつけた啓蒙空間のあり方②宗教とナショナル・アイデンティティの変容③「周縁」における「産業化」の具体的諸相④ネットワークの多様性がその後どのように塗り替えられたのか、それらの記憶の解明を試みるものである。
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研究実績の概要 |
昨年度はこれまで収集した資料の精査から、コンスタンティノープルのヨーロッパ系コミュニティ、とりわけプロテスタント系のコミュニティがフィリペン植民地に影響を及ぼした可能性がでてきた。そこで、まず、研究分担者である黛にコンスタンティノープルのプロテスタントの歴史について講義を行ってもらい、9月2日にイスタンブルから実地調査を開始した。イスタンブルでは、主にペラとガラタを中心にヨーロッパのプロテスタント諸国の大使館、教会、墓地の調査・資料収集を行った。9月4日にルーマニアのヤシに移動し、現地の教会関係者、自治体関係者の協力を得て、フィリペン植民地からプロテスタントたちが連行されたキペレシティを調査し、彼らの工場跡の特定、またローカル・ヒストリーではプロテスタント移民についてどのような記録が残されているのかを確認した。また、ヤシから、ブラショフ、アイウド、クルージのプロテスタント史跡を調査して、この地域でのネットワークを確認した。さらに、11日にポーランドのヴロツワフに移動して、レシュノのボヘミア兄弟団共同体とシュレジエンの地主によるプロテスタント教会堂建設について調査を行った。これらの調査に関しては、アイウドにあるベトレン・ガボール学校関係者、レシュノ博物館、シツフ教会堂管理者らの協力を得た。 さらに、クルージにおいては、トリニティ・カレッジ・ダブリンのグレアム・マードック教授に調査に参加していただき、トランシルヴァニアのプロテスタント共同体のあり方について、講義を受けた。また、ポーランドのポニャトフスキ一族の歴史に造詣の深い、ロンドン大学のリチャード・バターウィック教授に、ポニャトフスキと啓蒙主義について、講義をしていただき、フィリペン植民と啓蒙主義の関係について、大いに示唆を得た。また、研究代表者の西川はイスタンブルのイギリス大使館チャペルの調査も行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度はフィリペン植民地が建設されたウクライナには入国できなかったものの、ウクライナ周辺国トルコ(イスタンブル)、ルーマニア(ヤシ、ブラショフ、アイウド、クルージ)、ポーランド(ヴロツワフ、レシュノ、シツフ)では植民地関連のネットワークの調査を行うことができた。また、研究代表者の西川はイスタンブルのイギリス大使館付属チャペルの調査を行うことができ、大使館関係者がフィリペン支援の情報提供を行なったことを、ほぼ特定することができた。また、福嶋は、ワルシャワにおいて、フィリペン関係者の墓地を特定することができた。このように、フィリペン植民地関係の調査では、具体的な成果が得られたといえる。
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今後の研究の推進方策 |
今回、フィリペンをめぐる宗教ネットワークに、コンスタンティノープルの外国官社会が深く関わっていたことが判明した。そこで、改めて、植民の時期に起こっていた7年戦争の影響や、同時代にヨーロッパの「啓蒙」君主たちの間で流行していたマニュファクチャ政策の一環として、フィリペン植民を考察する必要があるのではないかと考えている。今後は、7年戦争と啓蒙君主の政策という観点から、この植民を検討する必要がある。 また、フィリペン植民と同時期にイングランドが支援したザールブリュッケンの教会政策も、上述の観点で見直す必要があるだろう。
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