研究課題/領域番号 |
23K20527
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補助金の研究課題番号 |
21H00607 (2021-2023)
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 基金 (2024) 補助金 (2021-2023) |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分03050:考古学関連
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研究機関 | 奈良県立橿原考古学研究所 |
研究代表者 |
吉村 和昭 奈良県立橿原考古学研究所, 企画学芸部学芸課, 課長 (10250375)
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研究分担者 |
小林 謙一 独立行政法人国立文化財機構奈良文化財研究所, 企画調整部, 客員研究員 (70110088)
辻田 淳一郎 九州大学, 人文科学研究院, 教授 (50372751)
諫早 直人 京都府立大学, 文学部, 准教授 (80599423)
奥山 誠義 奈良県立橿原考古学研究所, 企画学芸部資料課, 総括研究員 (90421916)
高松 淳 奈良先端科学技術大学院大学, 先端科学技術研究科, 客員教授 (90510884)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
17,420千円 (直接経費: 13,400千円、間接経費: 4,020千円)
2024年度: 2,730千円 (直接経費: 2,100千円、間接経費: 630千円)
2023年度: 3,900千円 (直接経費: 3,000千円、間接経費: 900千円)
2022年度: 4,030千円 (直接経費: 3,100千円、間接経費: 930千円)
2021年度: 6,760千円 (直接経費: 5,200千円、間接経費: 1,560千円)
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キーワード | 甲冑 / 製作技術 / 生産組織 / 三次元データ分析 / 古墳時代 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究は、最新かつ最高水準の製作技術を用いる鉄製武具であり、威信財的側面も有する古墳時代の甲冑について、製作実態の詳細、製作工人・工房を統括する生産組織の実態を解明することを目的とする。 研究にあたっては、製作技術各要素の詳細な観察、精密な三次元計測データの分析・活用、製作実験による製作技術の検証を三位一体としてすすめ、製作技術上の小単位、技術系統を析出、分業の有無などの製作実態をあきらかにする。さらに、これを基礎に生産組織の実態解明をはかる。 多くの共通性をもつ馬具、とりわけ装飾馬具製作との比較から、復元した甲冑製作実態を検証すると同時に、両製品の生産組織実態とその関係性を考察する。
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研究実績の概要 |
本研究は、1.精密な三次元計測データを基礎とした甲冑各部品の形状・法量比較による設計単位の識別。2.詳細な観察に基づく製作技術の検討。3.復元実験による製作技術の検証。を三位一体として、甲冑製作の実態にせまり、さらにこれを基礎に生産組織の実態解明をおこなうものである。令和4年度の実績は以下の通りである。 1.甲冑基礎データの収集:帯金式甲冑では、静岡県の文殊堂11号墳出土三角板革綴短甲、林2号墳出土三角板横矧板併用鋲留短甲、土器塚古墳出土長方板革綴短甲などの熟覧・細部計測・写真撮影を実施した。さらに、前期の方形板革綴短甲(島根県中山B1号墳)、後期の挂甲(静岡県団子塚9号墳=ほぼ全体が遺存する)の熟覧・細部計測・写真撮影も実施した。 また、以下の奈良県出土甲冑の再整理・再検討をおこなった。上殿古墳出土方形板革綴短甲(2領のうち3段構成のもの)(クリーニング、再含浸処理、接合)、塚山古墳出土三角板鋲留衝角付冑(接合検討)、円照寺墓山2号墳出土小札鋲留眉庇付冑(クリーニング→継続中)。 2.甲冑の三次元計測は、島根県(月坂放レ山5号墳)、と静岡県(多田大塚2号墳、同4号墳、文殊堂11号墳、林2号墳、石ノ形古墳、五ヶ山B2号墳、安久路2号墳、同3号墳、土器塚古墳)出土資料について実施した。内訳は、短甲10(方形板革綴短甲1、長方板革綴短甲3、三角板革綴短甲2、三角板横矧板併用鋲留短甲1、横矧板鋲留短甲2、鋲留短甲片1)、衝角付冑(三角板革綴衝角付冑)2である。 3.甲冑製作と生産組織の実態を解明する上で比較が有効な馬具について、同一古墳から複数出土する同種類の製品の検討を進めるため、三次元計測を実施した(島根県上塩冶築山古墳出土の銅鈴など)。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
研究2年を経過したが、3年度コロナ禍の影響でうけた遅れを徐々に取り戻している。甲冑の三次元計測に関しては当初の想定速度に戻りつつある。ただし、計測時期が3年度後半、また3年度繰越分も含めて4年度に集中したため、計測後のデータ整理、さらにこれを活用した分析がなお遅れ気味である。
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今後の研究の推進方策 |
甲冑三次元データは本研究の基礎となるものであり、残り2ヶ年も収集につとめる。まず、対象資料の熟覧を進め、その後に計測というプロセスである。現時点でデータの空白および不足地域(岡山、香川、兵庫、大阪、滋賀、千葉の各府県)の資料の熟覧を進め、可能なものについて計測を進める。 設計単位の析出にあたっては、短甲と衝角付冑に注力する。部品単位での形状、法量の比較に当たっては、高松淳(令和3年度研究分担者。4年度より研究協力者)が開発した、三次元点群データを測地線距離と多次元尺度法を用いて、二次元平面上に展開し、同一条件下で視覚的に比較するプログラムを用いる。短甲においては、押付板、後胴竪上第2段に加えて、前胴竪上第1段など、特徴的な形状を示す部品を対象とする。衝角付冑においては、衝角部の形状比較、平面形の比較に重点を置く。 甲冑製作技術の検討は、遺存状態が良好で、製作技術の詳細観察が可能な宮崎県の地下式横穴墓出土甲冑について、5年度に所蔵機関において、肉眼観察に加えて実体顕微鏡を活用して進める。この検討は研究代表者、研究分担者、研究協力者が参加しておこなう。 製作復元実験は、ここまでの検討結果を踏まえ、三次元計測データを活用し、1領の短甲の製作実験をおこない、その中で個別の技術内容の問題点を洗い出す(製作復元は研究協力者の那須川善男が担当)。 製作技術、生産組織の比較対象となる馬具(装飾馬具)については、4年度に計測を実施した島根県上塩冶築山古墳出土で複数出土した銅鈴の三次元計測データをもとに、詳細な観察をおこない、同工品か否かなどの検討を踏まえ、生産と授受の関係を考察する。
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