研究課題/領域番号 |
23K20531
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補助金の研究課題番号 |
21H00611 (2021-2023)
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 基金 (2024) 補助金 (2021-2023) |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分03060:文化財科学関連
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研究機関 | 富山大学 |
研究代表者 |
長柄 毅一 富山大学, 学術研究部芸術文化学系, 教授 (60443420)
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研究分担者 |
三船 温尚 富山大学, 芸術文化学部, 客員教授 (20181969)
廣川 守 公益財団法人泉屋博古館, 学芸課(本館), 館長 (30565586)
佐藤 朗 大阪大学, 大学院理学研究科, 助教 (40362610)
南 健太郎 京都橘大学, 文学部, 准教授 (60610110)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
17,160千円 (直接経費: 13,200千円、間接経費: 3,960千円)
2025年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2024年度: 2,730千円 (直接経費: 2,100千円、間接経費: 630千円)
2023年度: 4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)
2022年度: 3,380千円 (直接経費: 2,600千円、間接経費: 780千円)
2021年度: 5,460千円 (直接経費: 4,200千円、間接経費: 1,260千円)
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キーワード | 文化財科学 / 金属材料 / 非破壊分析 / 鋳造シミュレーション / 古代青銅鋳物 / 鋳造方案 / リバースエンジニアリング |
研究開始時の研究の概要 |
本研究は、中国や日本の古代の鋳造技術を解明することを目的とし、鋳造シミュレーションによる湯流れ、凝固解析から、現存する出土青銅器資料に残された鋳造欠陥等の痕跡との比較対照によって鋳造方案を明らかにしていくものである。そのため、青銅器資料の3Dスキャニングによる形状デジタルデータの取得を行っていくとともに、シミュレーションのための地金の成分分析を非破壊分析法により実施していく。その成分分析の方法として、研磨された鋳物表面から取得される金属組織画像により定量値を見積もる方法や、負ミューオンを用いた成分分析法を検討し、酸化層に覆われた出土青銅器の正確な定量値を得ることで鋳造解析の精度を向上させる。
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研究実績の概要 |
本研究は、人類の技術水準を各段に引き上げた革命的技術ともいえる鋳造技術の詳細を明らかにすることを目的に実施するものである。特に殷周青銅器に代表される古代中国の青銅鋳物は、複雑な形状と表面の精緻な文様が特徴であり、人類史上でも稀なる極めて高度な超絶技巧だといえる。鋳造技術は、金属を融点以上に加熱して熔解し、液体状態の金属(熔湯)を石材や土、砂などの耐火材で作った鋳型の空洞に流し込み、所定の形状を得る金属加工技術であり、高温・液体状態の金属を扱うため危険で難しい作業を含んでいる。「どう工夫して鋳造したのか」という問の答え、すなわち古代における注湯温度、速度、鋳込み角度、鋳型温度などの技術上の問題をすべて解明することが最終的な目標である。 これまで、日本の古墳時代において重要な役割を果たしてきたと考えられている「三角縁神獣鏡」を中心に研究を実施してきた。この”卑弥呼の鏡”ではないかともされる古代青銅鏡の鋳造工程には多くの研究者が関心を寄せており、復元鋳造なども試みられてきた。出土鏡の外観観察から、堰の位置などが検討されているが、鋳型の出土例がないことから、詳細な鋳造方案は謎のままとされている。そこで、まず、三角縁神獣鏡(泉屋博古館蔵)から3Dスキャナによってデジタルデータを取得し、鋳造シミュレーションを実施した。この際、リバースエンジニアリングソフトウエアで、鋳造製作当時において削り取られたと考えられる鏡面の厚みの復元と鋳引け等による欠損を予め修復して鋳造解析に供した。その結果、湯流れの状況と凝固過程を明らかにすることができ、堰位置を推定するための根拠を提示することもできた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
新型コロナウイルスのパンデミックが収束しつつあるなかで、昨年度は中国への渡航はまだ解禁されておらず、海外における3Dデータの取得は、停止している。一方、これまで取得した3D形状データは共同研究者のものを含め十分にあり、鋳造シミュレーションを中心に進めてきた。また、三角縁神獣鏡の復元鋳造実験も昨年度末(3月)に実施することができ、これらの成分分布の調査や凝固過程との解析については、今年度、順次進めていく。
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今後の研究の推進方策 |
今年度の前半は、昨年度末に製作した復元鋳造鏡をもとに、成分や金属組織の分布を詳細に調査し、鋳造方案が組織形態に及ぼす影響を明らかにしていく。このことで、組織画像による非破壊分析方法の精度を上げることが期待できる。 また、修復中であった大阪大学のミューオンビーム施設が再稼働することになったため、次年度以降のミューオン成分分析の計画についても協議していく予定である。このことで、表面を腐食層で覆われた資料や金メッキされた資料など、蛍光X線分析では得られない金属文化財資料の成分データを得ることが可能となり、鋳造シミュレーションの精度向上に寄与することが期待される。
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