研究課題/領域番号 |
23K20533
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補助金の研究課題番号 |
21H00613 (2021-2023)
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 基金 (2024) 補助金 (2021-2023) |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分03060:文化財科学関連
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
佐藤 孝雄 慶應義塾大学, 文学部(三田), 教授 (20269640)
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研究分担者 |
澤田 純明 新潟医療福祉大学, リハビリテーション学部, 教授 (10374943)
澤浦 亮平 東北大学, 歯学研究科, 非常勤講師 (20816201)
米田 穣 東京大学, 総合研究博物館, 教授 (30280712)
河村 愛 富山大学, 学術研究部教育学系, 講師 (60802460)
鈴木 敏彦 東北大学, 歯学研究科, 准教授 (70261518)
増田 隆一 北海道大学, 理学研究院, 教授 (80192748)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
17,420千円 (直接経費: 13,400千円、間接経費: 4,020千円)
2024年度: 390千円 (直接経費: 300千円、間接経費: 90千円)
2023年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2022年度: 8,710千円 (直接経費: 6,700千円、間接経費: 2,010千円)
2021年度: 7,280千円 (直接経費: 5,600千円、間接経費: 1,680千円)
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キーワード | オオヤマネコ / 地域絶滅種 / 動物考古学 / ゲノム解析 / 安定同位体分析 / C14年代測定 / aDNA解析 / 14C年代測定 / 絶滅種 |
研究開始時の研究の概要 |
日本列島に生息した大型ネコ科動物の中唯一縄文時代晩期まで生息したことが知られるオオヤマネコについて、列島規模で出土遺体を精査し、一部CTスキャニングにより形態の情報を記録した資料を対象に、年代測定、安定同位体比に基づく食性解析、ゲノム解析も試みることで、従来、不明であった同種の生態、系統を明らかにするとともに、その絶滅要因について動物考古学的な考察も行う。研究成果については、国内外の学会で報告し、国際誌の原著論文として公開を図る。また、研究を通じて得られた知見を社会に還元すべく、アウトリーチ活動にも努めたい。
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研究実績の概要 |
本年度の研究成果は以下の2点に纏められる。 (1) 8月に青森県東通村尻労安部洞窟において補足的な発掘調査を行い、オオヤマネコ遺体に更なる追加資料を得た。同成果については、12月に開催された青森県遺跡報告会で発表した。 (2) 総合研究大学院大学総合進化科学センターの寺井洋平博士の協力を得て、青森県東通村尻労安部洞窟、岩手県陸前高田市獺沢貝塚、千葉県印西市馬場遺跡第5地点、福井県若狭町鳥浜貝塚、愛媛県上黒岩岩陰、鹿児島県いちき串木野市来貝塚から出土したオオヤマネコ遺体のゲノム解析に着手した。はじめに、上記6遺跡のオオヤマネコ遺体から採取した全サンプルについて、少量の配列を決定したところ、尻労安部洞窟、馬場遺跡第5地点のサンプルに含まれる同種DNA比率がそれぞれ16.3%、9.4%と同種のDNA比率がことのほか高率に遺存していることが確認された。そこで、まず同2サンプルについて、大量配列決定を試み、それらを既報の現生オオヤマネコ属のデータに加え、最尤法による系統樹を作成した。その結果、尻労安部洞窟のサンプルがユーラシア大陸のオオヤマネコ集団の単系統の基部に結合されたのに対し、馬場遺跡第5地点のサンプルはカナダオオヤマネコやボブキャットなど北米の近縁種も含むより単系統の基部に結合され、縄文時代、本州には少なくも2系統のオオヤマネコが生息していたことが明らかとなった。これまで、オオヤマネコは最終氷期にマンモス動物群の一構成種として、日本列島に到来したと考えられてきたきたが、上記の結果は、列島における同種のポピュレーション・ヒストリーが従来考えられていた以上に複雑であったことを物語る。次年度以降、さらに西日本に位置する鳥浜貝塚、上黒岩岩陰、市来貝塚の出土遺体から得られたサンプルの解析が進めば、国内外から注目される古生物学的成果を発表できることを期待できる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
過年度に借用した茨城県つくば市上境旭台貝塚、千葉県印西市馬場遺跡第5地点、横須賀市吉井第一貝塚、福井県若狭町鳥浜貝塚、鹿児島県いちき串木野市市来貝塚の資料については、必要な観察と計測・撮影、各種分析用のサンプル採取を終え、全て所蔵機関への返却も済ませた。また、当初2022年度に予定していたICAZ(International Council for ArchaeoZoology)での研究発表も2023年度に無事行うことができた。一部の資料についてゲノム解析をのこしているものの、最終年度は本研究の成果を論文にまとめ、国際誌に投稿できる状況となっているため、研究計画の遂行に大きな遅滞は生じていない。
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今後の研究の推進方策 |
福井県若狭町鳥浜貝塚、愛媛県久万高原町上黒岩岩陰、鹿児島県いちき串木野市市来貝塚のゲノム解析を進め、その成果を第11回日本動物考古学会で発表するとともに、成果を論文にまとめ、国際誌に投稿する。また、ゲノム解析の結果については、結果の重要性に鑑み、成果を記す論文が受理された段階で、プレスリリースも計画したい。
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