研究課題/領域番号 |
23K20539
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補助金の研究課題番号 |
21H00622 (2021-2023)
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 基金 (2024) 補助金 (2021-2023) |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分03070:博物館学関連
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研究機関 | 岡山理科大学 |
研究代表者 |
武山 智博 岡山理科大学, 生物地球学部, 准教授 (70452266)
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研究分担者 |
水田 拓 公益財団法人山階鳥類研究所, その他部局等, 自然誌・保全研究ディレクター (20865026)
兵藤 不二夫 岡山大学, 環境生命自然科学学域, 教授 (70435535)
小高 信彦 国立研究開発法人森林研究・整備機構, 森林総合研究所, 主任研究員 等 (90414482)
富田 恭子 (岩見恭子 / 岩見 恭子) 公益財団法人山階鳥類研究所, その他部局等, 研究員 (90446576)
富田 直樹 公益財団法人山階鳥類研究所, その他部局等, 研究員 (90619917)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
17,160千円 (直接経費: 13,200千円、間接経費: 3,960千円)
2025年度: 1,820千円 (直接経費: 1,400千円、間接経費: 420千円)
2024年度: 5,330千円 (直接経費: 4,100千円、間接経費: 1,230千円)
2023年度: 4,550千円 (直接経費: 3,500千円、間接経費: 1,050千円)
2022年度: 2,470千円 (直接経費: 1,900千円、間接経費: 570千円)
2021年度: 2,990千円 (直接経費: 2,300千円、間接経費: 690千円)
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キーワード | 鳥類標本 / 安定同位体分析 / 食性 / 渡り / 希少鳥類 / 安定同位体 / 種分化 / 羽試料 |
研究開始時の研究の概要 |
博物館等に収蔵されている生物標本は,分類学や過去の生息地の解析等に不可欠であるが,学術的な利用目的は限られている。近年,新たな標本の活用方法として,遺伝的多様性の復元などが模索されているが,標本の損傷を最小限に留める制約上,応用範囲は限定的である。本研究では,1)鳥類標本の学術的価値を維持した羽試料の採取方法の確立,を基盤とし,羽試料の安定同位体分析から,2)国内に広域分布する鳥類における種内(地域間)・種間(亜種間)比較による渡り特性と食性の違い,3)南西諸島の島嶼で独自の進化を遂げた希少鳥類の種分化と食性の関係の解明,を通じ鳥類標本の新たな学術的価値の創出から実証研究の構築までを目指す。
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研究実績の概要 |
本年度は鳥類標本の損傷を最小限に留めた試料採取方法を確立するため,岩見,富田が大型鳥類(猛禽類)で用いている方法をスズメ目の小型鳥類へと応用した。対象には山階鳥類研究所に冷凍保管されていたスズメ Passer montanusを用いた。このスズメのサンプルは国内の一地点でほぼ同時期に採集されたもので,仮剥製などへの標本化には不向きな状態で保管されていた。一方で,翼の羽や体羽自体には損傷がなく,分析用試料の採取が標本に与える損傷の程度を評価する上で欠かせない,様々な羽の切除や抜き取り方法の試行が可能であった。初めにスズメにおける安定同位体分析の必要量を確保できる試料の採取方法と,それに伴う損傷の程度,主に外部計測値に与える影響を検討した。羽を採取する場所としては,体羽については各部位(頭,翼,胴体等)と,翼の羽に関しては初列風切りを対象とした。まず,分析必要量を得る採取量に関して,体羽については部位によらず3枚程度で十分量が確保され,採取の前後において外部形態にはほぼ変化が認められなかった。次いで,初列風切り羽に関しては,羽を翼より抜き取る場合,特に羽の先端部に近い箇所の場合は,標本の外部形態計測値(翼長や翼幅など)が変化すると予測される。そこで,今回は1枚の羽の根元側において片側の羽弁の一部を幅数ミリ程度切り取ることを試みた。これらの方法で得られた試料について,予備的に炭素および窒素の安定同位体比を分析したところ,問題なく測定データを得られた。以上の結果より,外部形態計測値に対してはほぼ影響がない状態で,安定同位体分析に必要量の試料が得られる方法が確立されたと考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
初年度は全国的な新型コロナウィルスの感染拡大が繰り返されたため,研究活動が制限される事態が度々発生した。これにより大きな影響を受けた事案は,研究機関への立ち入りや作業の人数や時間の制限,研究者の移動の制約である。本年度は,冷凍保管されていた鳥類試料を対象として,標本・試料への損傷を最小限に抑えた上で,安定同位体分析に必要量を確保する方法の確立を目的として研究をスタートさせたが,上述の制限要因により,分析用の試料の準備に支障が生じ大幅に作業が遅れた。加えて,安定同位体分析の試料準備段階における前処理を含む作業の行程にも影響がおよび,進行が著しく妨げられた。このような状況下ではあったものの,制限が緩和された折に作業を集中的に進め,試料の採取方法の確立と予備的ではあるものの安定同位体分析まで漕ぎ着けた。今回,比較的小型の鳥類であるスズメにおいて,標本の損傷を最小限に留めた試料採取方法を確立させたことで,同サイズの鳥類のみならず,より大型の鳥類に対しても同様の方法を応用する目処が立った点は,今後,博物館等の収蔵標本からの試料採取に向けて大きな前進となった。
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今後の研究の推進方策 |
今回実施した試料採取では,1個体のスズメにおける体の複数の部位(頭,翼,胴体等)および,翼の羽に関しても複数枚の羽からも試料を得た。一般に羽の安定同位体比は換羽時に採餌した餌生物の値を反映することが知られている。よって,これらの試料の安定同位体の値を1個体における部位間で比較すれば,部位間での換羽のタイミングが推定できることを検証したい。換羽の順序は翼の羽,特に風切り羽では詳細な情報があるものの,体羽では明瞭でない場合も多いため,この方法で体羽の換羽順序および風切り羽の換羽順との対応関係も検討する予定である。
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