研究課題/領域番号 |
23K20548
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補助金の研究課題番号 |
21H00636 (2021-2023)
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 基金 (2024) 補助金 (2021-2023) |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分04020:人文地理学関連
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研究機関 | 大阪公立大学 (2022-2024) 大阪市立大学 (2021) |
研究代表者 |
水内 俊雄 大阪公立大学, 大学院文学研究科, 客員教授 (60181880)
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研究分担者 |
コルナトウスキ ヒェラルド 九州大学, 比較社会文化研究院, 准教授 (00614835)
菅野 拓 大阪公立大学, 大学院文学研究科, 准教授 (10736193)
小関 隆志 明治大学, 経営学部, 専任教授 (20339568)
垣田 裕介 大阪公立大学, 大学院生活科学研究科, 教授 (20381030)
稲月 正 北九州市立大学, 基盤教育センター, 教授 (30223225)
五石 敬路 大阪公立大学, 大学院都市経営研究科, 准教授 (30559810)
西野 雄一郎 大阪公立大学, 大学院工学研究科, 講師 (30783708)
蕭 耕偉郎 東京大学, 大学院工学系研究科(工学部), 准教授 (30796173)
福本 拓 南山大学, 人文学部, 教授 (50456810)
キーナー ヨハネス 埼玉大学, 人文社会科学研究科, 准教授 (50825784)
松尾 卓磨 茨城大学, 人文社会科学野, 講師 (50915080)
後藤 広史 立教大学, コミュニティ福祉学部, 教授 (60553782)
陸 麗君 福岡県立大学, 人間社会学部, 准教授 (70803378)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
17,160千円 (直接経費: 13,200千円、間接経費: 3,960千円)
2024年度: 3,120千円 (直接経費: 2,400千円、間接経費: 720千円)
2023年度: 4,810千円 (直接経費: 3,700千円、間接経費: 1,110千円)
2022年度: 4,030千円 (直接経費: 3,100千円、間接経費: 930千円)
2021年度: 5,200千円 (直接経費: 4,000千円、間接経費: 1,200千円)
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キーワード | 社会包摂 / 生活困窮者自立支援 / 就労による包摂 / 外国人 / 移民 |
研究開始時の研究の概要 |
2002年のホームレス自立支援法以降、生活保護をベースとした「最後のセーフティネット」は、派遣村以降の政策推進で一挙に展開し、2015年に生活困窮者自立支援法で重層化された。この新たなセーフティネットを「基底のセーフティネット」と独自に呼称し、欧州発の社会包摂の原理を取り込みつつ特殊日本的制度化を遂げたこの2010年代の特質を明らかにする。そこで萌芽した社会包摂の内容を福祉による包摂、就労による包摂・金融による包摂といった概念で整理することで、欧米との差異の測量を目指す。サードセクターの存在の強弱により実践に著しい地域差がある、こうした活動の社会的イノベーションという実践的役割も担っている。
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研究実績の概要 |
調査の進展に伴い、【調査④】の外国人の就労を基盤とする経済包摂の様態が、日本型とみなしてきたシステムを戸惑いを伴いつつも柔軟に適用してゆく現場に多く遭遇した。特にブルーカラー、グレーカラー層に本格的に市場を開くことになった特定技能の在留資格が労働市場を流動化し、都市部においては、技人国というホワイトカラー、グレーカラー層の労働市場に次いで成長してきた。また永住者や関連する家族滞在の在留資格も日本での経済基盤を固めてきた。その類型化を全国市区町村レベルで行った。また居住移動も含めた生活面への着目については、大阪市や横浜市、福岡市などで重点的に進めた。提起していた【イノベーションプラットフォーム】を、「外国人適正雇用プラットフォーム」(仮称)としてまず、特定技能でも都市において人気のある外食産業において始動させることにした。 【調査②】では、昨年度にコロナ禍を要因とし特に打撃の大きかった飲食娯楽産業の多い盛り場を有する都心部での調査を基幹共同調査に転換した。これについては引き続き大阪市中央区のフィリピン人を中心にヒアリングを行った。 【調査③】の就労自立に関する社員寮調査を軸にしており、これについては【調査①】の生活困窮支援の窓口において、就労支援の受託組織が派遣会社という事例が多くなり、いくつかの代表的な会社へのフォローアップ調査を始めることにした。また外国人就労の多くは寮に依拠することが多く、その実態についても【調査④】と関連して、ベトナム人を中心に経験者のヒアリング調査を行った。社員寮を有さない場合には、共居がかなり浸透し、シェアリビングから近隣地域での居場所的空間(特に信仰や習俗に関係する)の存在にも注意を払って調査を実施し始めた。これは中国人、ベトナム人、インドネシア人を中心に行った。 成果の刊行は、昨年度に引き続き「空間・社会・地理思想」誌を活用した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
分野をまたいでかつ分担研究者の数が多いため、なるべく多くのzoom研究会を開いたことと(4回)、分野別の研究・調査打ち合わせも別途行った(4回)。各分担者全員がそれぞれの科研や民間資金を持っている中、共同調査は、【調査③】の盛り場調査と、【調査④】の外国人の就労や居住に関する調査で進んだといえる。 上記の研究実績の概要は現場の最前線を対象とする調査を中心に述べたが、予定していた【調査】の4つのタイプで少々想定していなかった、生活困窮者の就労自立に関する調査や、歴史的な振り返りについてアウトカムの共有ができたことは大変大きかった。1990年代から現代にいたる大阪釜ヶ崎における特掃と呼ばれる公的就労の実態や、1990年代から2000年代における東京の就労自立の歴史的ともいえる系譜が明らかにされたことは特筆しておきたい。 また社会的包摂という観点と都市論の遭遇において、日本ではないがかつての海外研究協力者に関する香港での批判地理学の系譜やその成果について明らかにしたことも触れておきたい。激動する香港社会を包摂というタームで捉えることは大変むつかしいことであるが、批判地理学の伝統が社会包摂とどのような接点を有するのかを考える上でヒントになったといえよう。 成果としては、特に「空間・社会・地理思想史」27号、2024年において、3つの特集を組んだが、特集1は外国人労働に関すること、特集2は、生活困窮者の就労自立に関すること、特集3は香港の批判地理学の系譜に関することを、短期間の作業であるが、迅速にアウトプットとすることができた。 以上の理由によりおおむね順調に進展していると評価したい。
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今後の研究の推進方策 |
外国人、生活困窮者自立支援、就労による包摂から得られる都市論のあり方という3車輪の研究志向が、外国人を軸に動かしてゆくことが昨年度はっきりとしてきた。最終年度において、互助経済の存在も含み、社会包摂という概念より、経済による包摂という、少々定義のむつかしいエリアにおける、支援も含んだ労働や監理、生活の総体として母国との関係も意識しつつ進めることになる。 具体にはセーフティネットを共助、互助の部分を含めて就労という当面のゴールを目指す過程における、様々な課題や挫折に対するSOS事例の検討を、個別事例を通じてその解明を進める。同時に外国人の発地における日本での就労希望に至る過程や準備についても、インドネシア、ベトナムを事例に調査を進める。 都市空間論として、特に対象としている都市空間の変容において、外国人の集住、散住の実態を明らかにすることが大変重要である。特に集住の場合は、経済的に脆弱な外国人が互助や共助の中で生活していくことが多い。もともと日本人中心に脆弱層が住んでいた場所にそうした外国人が増えることにより、年齢的に若返るとともに、既存のセーフティネットの創造的な更新が必要となっている。市街地の社会的な再生という観点より新しい様態が生まれつつある。こうした状況を迅速に捉えることも喫緊の課題となっている。この新しい空間生成を大阪市西成区、福岡市博多区、横浜市中区で重点的に取り組んでいきたい。また地方都市の集住がどうしても公的セクターの団地に固まって見られることにも引き続き注意を払っていきたい。これは全国的にそうした状況をおさえた研究はなく、これも推進課題としてあげておく。さらに農村地帯における外国人の散住、特に茨城県、埼玉県、千葉県のそうした農村部でのあり方についても、全国的分析を踏まえて、進めていくことになる。包容力ある都市論の日本的特質をさらに深めることになる。
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