研究課題/領域番号 |
23K20551
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補助金の研究課題番号 |
21H00639 (2021-2023)
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 基金 (2024) 補助金 (2021-2023) |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分04020:人文地理学関連
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
大門 毅 早稲田大学, 国際学術院, 教授 (80329333)
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研究分担者 |
北野 尚宏 早稲田大学, 理工学術院, 教授(任期付) (20378524)
長辻 貴之 早稲田大学, 政治経済学術院, その他(招聘研究員) (20906135)
萬行 英二 名古屋大学, 経済学研究科, 教授 (30421233)
内海 悠二 名古屋大学, 国際開発研究科, 准教授 (70824001)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
16,640千円 (直接経費: 12,800千円、間接経費: 3,840千円)
2024年度: 5,330千円 (直接経費: 4,100千円、間接経費: 1,230千円)
2023年度: 3,640千円 (直接経費: 2,800千円、間接経費: 840千円)
2022年度: 3,640千円 (直接経費: 2,800千円、間接経費: 840千円)
2021年度: 4,030千円 (直接経費: 3,100千円、間接経費: 930千円)
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キーワード | 空間的相関 / ソーシャルセーフティネット / 越境移民 / 開発経済 / 地理情報システム / 空間分析・GIS / セーフティネット / メコン河流域諸国 (GMS) / 持続的開発目標(SDGs) / 越境移民・人流 / 地理情報システム(GIS) / セーフティネットと法整備 / 越境移民の罹患リスク / 人間の安全保障 / 持続的開発目標(SDGs) / 沖縄、島嶼地域の経済 / ラオス / パンデミック / メコン河流域諸国(GMS) / 中国 / パブリックヘルス |
研究開始時の研究の概要 |
本研究の目的は,メコン河流域諸国間を中心に、インフラ整備により拡大した物的・人的接続性に伴い活発化した越境移民が、疫病・失業等の地域的に偏在するリスクの多寡に影響を受け居住パターンを形成することを地理情報として可視化し、空間情報を踏まえた制度インフラを構築できないかを問うものである。人口動態の空間的把握を行いながら、セーフティネットの制度面を拡充するという構想である。越境移民が抱えるリスクを空間情報として可視化し、リスクを軽減するための構想を描くこと、さらには構想を推し進めるための法制度や財政支出、対外援助の現状や域内セーフティネットの将来像を模索することが、本研究の核心的問いである。
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研究実績の概要 |
本研究の目的は、メコン河流域諸国(タイ、ラオス、ベトナム等)のインフラ整備により拡大した物的・人的接続性に伴い活発化した越境移民が、疫病・失業等の地域的に偏在するリスクの多寡に影響を受け居住パターンを形成することを地理情報として可視化し、空間情報を踏まえたセーフティネットを構築できないかを問うものである。まさに、2020 年に感染爆発したCOVID-19がもたらした現象と合致し、本研究の政策的意義が深化した。研究を進める中、関連分野で三菱財団による助成が決まったことや海外渡航が制限されたため、GIS/GPSデータを活用した空間分析の手法を活かしつつ、国内外のデータを収集しつつ研究を進めていくこととした。沖縄(特に離島)は一時期COVID-19 の人口あたりの死者重篤者数が世界規模で傑出しており、医療インフラが供給できなかったことから、医療従事者は疲弊し、飲食・観光業を中心に地域経済に多大な打撃を与えた。本研究の問いに接近しつつも、目の前の惨禍を直視し自分なりの貢献を行うことが、経済開発研究に携わる者としての社会貢献のあり方と自認し、現地の協力者とも相談しながら進めることとした。 研究の成果を発信していくことで、セーフティネットの空間的理解が深まり、国内・国外を問わず開発課題の解決に資することに本研究が有効に活用されたことは研究者としての誇りである。2023年には、海外渡航制限が解除されたことに伴い、ラオス、タイなど当初想定していた国でのフィールド調査を行う環境が整った。これまでの研究成果を踏まえ、共同研究機関(名古屋大学)とも連携しつつ、越境移民が抱えるリスク、特に人間の安全保障・SDGs(持続的開発目標)(疾病・教育)ををデータ化、可視化し、空間分析研究の最先端にあるペンシルバニア大学など米国の研究機関とも連携し、本研究を通じて開発課題の解決に引き続き取り組んでいきたい。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の研究成果の一部は本学主催のベルギーの国際学会(2022年8月)で発表した。GMS諸国では政変(ミャンマー)や渡航制限の強化のため、対象地域を拡大、データの収集可能性を重視し、国内事例や比較対象として、モーリタニア(アフリカ)の事例をチュニジア(同)の研究協力者と進め、モーリタニアの保健医療のセーフティネットの空間分析と政策分析を行い(2022年8月~9月)、研究成果の一部はJICA(国際協力機構セネガル事務所)とも共有し、2023年度中にJICAのホームページ上で公刊予定である。国内においては引き続き、沖縄(2021年度実施)のデータ解析を進めるともに、2021年度の調査時(2021年7月)には渡航直前に県内緊急事態宣言が延長されたため営業停止・制限中などにより十分に実施できなかった医療・保健関係者(島内で唯一の県立宮古島病院COVID-19担当医局、保健所、市役所、宗教団体等)及び観光業(マリンサービス、飲食業、ホテル業)を中心とするヒアリング・フォローアップ調査を実施した。このフォローアップ調査(一部はオンラインによる実施)により、2021年の沖縄調査が本調査の成果の一環として明確に位置付けられることになった。沖縄のデータは空間データとして整備されており、ARCGIS(空間分析ツール)を駆使した分析が可能となったものである。SDGsの開発目標のうち、島嶼経済に密接関連する目標については、デジタルカメラや動画カメラで撮影し記録データとして保存することで、後に分析・確認する際に有益であり、その一環としてドローンによる空撮データにより、島内の医療インフラなどの整備状況を可視化することができた。オンラインによる研究会(於名古屋大学)も実施し、リモート会議の際に必要なカメラ類も整備することができ、本研究は順調に進展した。この成果を踏まえ、今後はGMS国での分析を進めたい。
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今後の研究の推進方策 |
GMS諸国への渡航制限の大半が解除されたことにより、アジア開発銀行(ADB)やJICAによる関連調査で学術交流があるラオス及び同国と隣接する中国雲南省付近(Boten)までを視野に入れた、セーフティネットの空間分析を実査により行う予定(2023年6月ないし7月)。その後、空間分析の最先端と位置付けられるペンシルバニア大学(フィラデルフィア)及び開発途上国に関する位置データが整備されている世界銀行(ワシントンDC)、ないし国連開発計画(ニューヨーク)を訪問(2023年9月)。これまでの研究成果やデータを踏まえて、コロンビア大学(ニューヨーク)経済地理学(研究科)で研究会を実施予定(同年10月ないし11月、オンライン実施予定)。本研究は、移民労働者に対して、各国別に取り組むと国内の反発(自国民を優先すべきである、等)を招きやすいため、周辺国が話し合って包括的に取り組む方が、より効果をあげることができるという仮定に基づくADBプロジェクトがヒントになっていた。移民労働者の送り出し・受け入れ側の双方の事情を勘案し、人口動態の空間的把握を行いながら、セーフティネットの域内協力を構想する。越境移民が抱えるリスクをGIS を用いて空間情報として「可視化」し、リスクを軽減するための構想を描くこと、さらには構想を推し進めるための法制度や財政支出、対外援助の現状や域内セーフティネットの将来像を模索することが、本研究の核心的「問い」であった。この問いは変わらないが、ミャンマー政変やCOVID-19の影響により、ADBプロジェクトは当初計画より遅延しており、ADBから入手する予定であったデータセットが整備されていない。このデータ上の制約を克服する一環として、対象地域を限定せずデータ整備状況を重視した分析を行ってきたが、今年度はGMS(ラオス、中国雲南省)を視野に入れた研究を行い、完成に近づけたい。
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