研究課題/領域番号 |
23K20552
|
補助金の研究課題番号 |
21H00640 (2021-2023)
|
研究種目 |
基盤研究(B)
|
配分区分 | 基金 (2024) 補助金 (2021-2023) |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分04030:文化人類学および民俗学関連
|
研究機関 | 山形大学 |
研究代表者 |
山本 睦 山形大学, 人文社会科学部, 准教授 (50648657)
|
研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2026-03-31
|
研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
|
配分額 *注記 |
17,030千円 (直接経費: 13,100千円、間接経費: 3,930千円)
2025年度: 2,080千円 (直接経費: 1,600千円、間接経費: 480千円)
2024年度: 2,730千円 (直接経費: 2,100千円、間接経費: 630千円)
2023年度: 4,810千円 (直接経費: 3,700千円、間接経費: 1,110千円)
2022年度: 4,420千円 (直接経費: 3,400千円、間接経費: 1,020千円)
2021年度: 2,990千円 (直接経費: 2,300千円、間接経費: 690千円)
|
キーワード | アンデス文明 / フロンティア / 社会の複雑化 / 地域間交流 / アンデス形成期 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究では、二つの文化圏が重なりあうフロンティアという切り口から、ペルー最北部ワンカバンバ川流域を中心として、アンデス文明形成期(前3000 年-紀元前後)における社会の複雑化と地域間交流の動態的相互関係を多角的かつ実証的に究明する。 より具体的には、ペルー最北部とエクアドル南部で踏査および発掘調査を実施し、獲得したデータを理化学的にも分析を行うことで、人とモノの動きを実証的に解明する。また、その成果をこれまでの研究データと比較することを通じて、フロンティアにおける社会的状況や異集団間の交流の実態を明らかにし、文明形成過程におけるその役割をモデル化することを試みる。
|
研究実績の概要 |
本研究の目的は、異なる文化圏が重なりあう能動的な主体としてのフロンティアという視点から、アンデス文明形成期(前3000 年-紀元前後)における社会の複雑化と地域間交流の動態的相互関係を多角的かつ実証的に解明することである。そこで本研究では、ペルーとエクアドルで考古学調査を実施し、獲得したデータの理化学的分析を通じて、人とモノの動きを実証的に明らかにすることを目指している。 2023年度には、ペルー北部熱帯低地に位置するハエン地方において、インガタンボとトゥルコという形成期の祭祀遺跡で発掘調査を実施した。この調査によって、研究の重要地域と認識されながらも、研究の遅れていた北部熱帯低地における基礎データの充実がもたらされた。とくに、現地協力者や日本のアンデス研究者らと出土遺物の分析を進めることで、当該地域の編年を精緻化し、遺跡間の関係性を論じるためのデータを獲得することができた。より具体的には、インガタンボ神殿遺跡の中核部において、同時期に機能したものの、建築特徴の大きく異なる二つの祭祀建造物が存在すること、その一つがハエン地方のローカルな特徴を強く有する可能性が示唆された。これらは、形成期の社会動態の解明を目指すうえで、極めて重要な成果であり、これまでの研究成果と統合することで、神殿における儀礼活動と地域間交流の実態に関する新たな知見がもたらされたといえる。 また、エクアドルにおいては、2024年に実施予定の発掘調査対象遺跡に関して、調査を円滑に進めるために、現地の研究協力者や文化遺産局、地方自治体、および調査地域の人々と交渉を行った。 なお、日本では「古代アンデスとリャマ:文明形成をめぐる新視点」と題した公開シンポジウムを開催した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
当初の計画より遅れたものの、ペルーで計画していた発掘調査を無事に実施、終了することができた。また、現地および日本の研究者や専門家との協働による出土遺物の整理・分析作業は、想定していたよりも大きな成果をあげつつあり、その成果は海外の研究者からも一定の評価を受けている。研究成果は学会発表や書籍の刊行といった形で広く発信することができ、多くの研究者と情報を共有することも可能となった。 これらのことから、本研究は、おおむね順調に推移してきていると考えられる。
|
今後の研究の推進方策 |
2024年度に実施する研究は主として二つある。 一つは、エクアドル南部山地での発掘調査で、これによりフロンティアを両側から論じるためのデータを獲得することが可能となる。この成果は、これまでの調査成果とあわせられることで、形成期中期(前1200-前800年)から形成期後期(前800-前550年)において、フロンティアの祭祀遺跡でどのような活動が執り行われたのか、あるいは当該地域においてどのような地域間交流が存在したのか、といった問題を論じるためのデータとなる。 もう一つは、ペルーおよび日本における出土遺物の整理・分析作業である。ペルーでは、出土遺物の基礎的な分析に加えて、図面化や写真撮影を実施する。また、日本では、人骨や動物骨の炭素・窒素・ストロンチウム・酸素同位体といった出土遺物の理化学的分析を進めるほか、放射性炭素年代測定を実施して詳細な編年を確立する。サンプルの抽出作業および輸出手続きは8~9月の渡航中に実施する。 本研究でえられた成果は、国内外の学会やシンポジウム、出版物において随時発表し、様々な研究者との意見交換を行うことで、最終年度に向けて全体の議論を精緻化していく。
|