研究課題/領域番号 |
23K20554
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補助金の研究課題番号 |
21H00642 (2021-2023)
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 基金 (2024) 補助金 (2021-2023) |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分04030:文化人類学および民俗学関連
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研究機関 | 東京外国語大学 |
研究代表者 |
西井 凉子 東京外国語大学, アジア・アフリカ言語文化研究所, 教授 (20262214)
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研究分担者 |
金 セッピョル 総合地球環境学研究所, 研究基盤国際センター, 客員助教 (00791310)
丹羽 朋子 国際ファッション専門職大学, 国際ファッション学部, 講師 (10753486)
田中 大介 自治医科大学, 医学部, 教授 (20634281)
加賀谷 真梨 新潟大学, 人文社会科学系, 准教授 (50432042)
磯野 真穂 東京工業大学, リベラルアーツ研究教育院, 教授 (50549376)
黒田 末寿 滋賀県立大学, 人間文化学部, 名誉教授 (80153419)
土佐 桂子 東京外国語大学, その他部局等, 名誉教授 (90283853)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
16,900千円 (直接経費: 13,000千円、間接経費: 3,900千円)
2025年度: 3,900千円 (直接経費: 3,000千円、間接経費: 900千円)
2024年度: 3,510千円 (直接経費: 2,700千円、間接経費: 810千円)
2023年度: 3,640千円 (直接経費: 2,800千円、間接経費: 840千円)
2022年度: 3,380千円 (直接経費: 2,600千円、間接経費: 780千円)
2021年度: 2,470千円 (直接経費: 1,900千円、間接経費: 570千円)
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キーワード | 死 / 情動 / アフェクト / フィールド実践 / 身体 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究では現実を新たな視野のもとで捉えかえすため、①2000年代後半から英米圏でaffective turnと称せられる学的潮流にみられる「アフェクト/情動」概念を批判的に検討、発展させ、②対面的な関係が忌避され、日常的なリアリティが変容するなか、東日本大震災や新型コロナウィルスといった突発的な災害死や、多死社会、介護の現場や死の医療化、葬儀の変容などの現場から、「死」に焦点化して人類学的手法により「現実」を探求する。アフェクト論の視野に個の身体が変容するクリティカルな瞬間である「死」という切断面を導入することにより、身体として生きる「現実」の潜在的な多層的様相を明らかにすることを目指す。
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研究実績の概要 |
死は、生きている人は自らだれも体験したことがない出来事である。一方、人は誰しも死者との関係をもっているといえよう。それが、近しい人であろうと、テレビのニュースや新聞記事でしか接点のない人であろうと、すでに不在となった人との関係をもちつつ私たちの「今ここ」がある。本研究の核心的な問いは、死という個の時間的断絶をはさむことで、身体の変化がどのように集合性にアフェクトするか、つまり、一回性の生を生きる身体が、集合的なものにいかに接続されるのか、という問いである。このような問いに焦点化して、生きる「現実」を、死という断絶面から照射することによって、生の潜在性の現われを具体の場から捉えること、これが本研究の目的である。「こうありありえたかもしれない」という別様の生のあり方や、未来への予期、過去の出来事/記憶との相互浸透といった、複数の層の重なり合いまでも含めて捉えようとする。そうした視点により、生の「現実」を深く掘り下げることができると考える。具体的には、成果論集への執筆予定者がそれぞれ発表し、今後の草稿執筆にむけての準備のため、質疑応答を行い、論点の明確化に努めた。 それぞれの研究構想は以下の通りである。 磯野真穂「死にゆく人とのオートエスノグラフィ」、加賀谷真梨「沖縄の池間島の介護の現場から」、丹羽朋子「東日本大震災における死者と死者を映す技術(アート)」、金セッピョル「韓国の遺体の載せる「喪輿」の保存団体の軌跡から」、田中大介「日本の葬儀の特質と変化」、西井凉子「タイにおける死者の記憶から」、黒田末寿「動物の仲間の死に対する反応から」、土佐桂子「ミャンマーにおけるSNSでのみ告げられる死について」 以上。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
新型コロナの影響で延期していた、合宿形式でのシンポジウムを行った。そこでは各自すすめている研究を、研究チーム全体としてどのように評価し、どの方向性をより進展させる必要があるのかを、死の現場である東日本大震災の地において議論することができた。合宿形式により、これまで以上に互いの研究やその背景にある個々の研究にむきあう姿勢などを理解することができ、成果のとりまとめにむけて有益な知見を得ることができた。
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今後の研究の推進方策 |
研究の着地点を明確にすべき段階にあり、年に3回程度の研究会とシンポジウムを行うことで、各自のフィールドから何が明らかになったのかについて、次のような項目について検討する。 <生> 医療や介護の現場からの死に向き合う実践を扱う。コロナ状況下においては、人工呼吸器やECMOの数が突如問題視され、死へを避ける語りがなされる。また、介護の現場においては、最期の時の迎え方について、「住み慣れた地域、住み慣れた家」というこれまでの生を送った場から死を考える。 <生と死の境界> 東日本大震災から12年経ち、被災者の経験した出来事や記憶はいかにして経験者自身の固有の出来事であり、同時に未来を生きる集合的出来事 となるのか。映像作品や演劇など、「現実」の記録と「フィクション」の混成など経験を他者に伝えるための試みから、死者を考える。コロナ感染により、感染予防のためのガイドラインが、死者の葬儀のあり方に大きく影響を与えている。死者は通常の死者ではなく、医療の対象となり、死後の医療化がおきている現場からアプローチする。 <死> 死と死体の現場に関わって葬儀などを行う職能従事者の調査から、「よい死」に失敗した落伍者という枠組みに押し込められてしまいがちな人々の死と遺体の現実を調査する。葬式互助の仕事は、これまで交通事故にあってもケアされることがなかった死と死体と向き合うことになる。近年の新たな死をめぐる集合的な動きの現場から調査を行う。 <理論> 生物としての人間についての理論化を行う。多細胞生物は、胚が分裂して臓器に機能分化していく過程で過剰に増殖した部分をアポトーシスで除く。こうした自己犠牲は、昆虫などにもみられる。人間の死をこのような生物としての死におくことでより広い視野において死と身体の問題を考える情動と死についての理論的とりまとめを行う。
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