研究課題/領域番号 |
23K20572
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補助金の研究課題番号 |
21H00664 (2021-2023)
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 基金 (2024) 補助金 (2021-2023) |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分05040:社会法学関連
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
嵩 さやか 東北大学, 法学研究科, 教授 (00302646)
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研究分担者 |
飯島 淳子 慶應義塾大学, 法務研究科(三田), 教授 (00372285)
山城 一真 早稲田大学, 法学学術院, 教授 (00453986)
倉田 賀世 熊本大学, 大学院人文社会科学研究部(法), 教授 (10431298)
石綿 はる美 一橋大学, 大学院法学研究科, 准教授 (10547821)
橋爪 幸代 日本大学, 法学部, 教授 (30407340)
岡本 弘道 東北大学, 法学研究科, 准教授 (40966727)
中野 妙子 名古屋大学, 法学研究科, 教授 (50313060)
冷水 登紀代 中央大学, 法学部, 教授 (50388881)
久保野 恵美子 東北大学, 法学研究科, 教授 (70261948)
今津 綾子 東北大学, 法学研究科, 准教授 (80708206)
大濱 しのぶ 慶應義塾大学, 法学部(三田), 教授 (90194266)
井上 泰人 東北大学, 法学研究科, 教授 (90961748)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
17,290千円 (直接経費: 13,300千円、間接経費: 3,990千円)
2024年度: 3,770千円 (直接経費: 2,900千円、間接経費: 870千円)
2023年度: 4,550千円 (直接経費: 3,500千円、間接経費: 1,050千円)
2022年度: 4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)
2021年度: 4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
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キーワード | 社会保障 / 扶養義務 / 社会保障法 / 私的扶養 |
研究開始時の研究の概要 |
生活上のニーズを抱えた者に対する社会保障給付と扶養義務者による扶養とは機能におい て重複する部分があり、生活保護や社会福祉ではその調整のための規定が置かれている。社会保障と私的扶養との関係は古典的な問題であるが、近年急速に進められている養育費支払確保の取組みを背景に、現代性のある問題として再認識されている。本研究では、社会保障法内在の局面、社会保障法と民法との対話の局面、実体法と手続法が循環する局面を捉え、分野横断的分析により、社会保障給付と扶養義務を棲み分ける理論的枠組みを提示するとともに、その理論を担保する組織・執行手続とそこでの司法・行政の役割分担のあり方について分析を行う。
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研究実績の概要 |
2022年度は、昨年度に引き続き、2023年度の日本社会保障法学会でのミニシンポジウムの実施に向けた検討作業を行った。具体的には、生活保護、社会福祉、児童扶養手当について、扶養義務との関係を整理するとともに、現行制度・運用に至る経緯を分析し、また、制度改正の含意を探求した。検討においては、家族が機能不全を起こしているケースについて、実施されない私的扶養を社会保障でカバーする運用が果たして適当なのかという共通の問題が浮上した。とりわけ、近い存在であるがゆえに深刻な葛藤を抱えやすい家族関係を社会保障制度と接続させるうえでの課題が認識され、こうした課題について検討するにあたっては、家族のなかの個人に焦点を当て、そうした個人の自律を保障するための規範的枠組みが必要であるとの視点を得た。 また、昨年度に引き続き、フランスの養育費制度についての勉強会を定期的に実施した。同勉強会により、フランスでは、近年障害者手当の領域では扶養義務からの切り離し(個人化)が進展していることや、社会保障支給機関が養育費の取決めについて債務名義を付与する仕組みがあること、社会保障給付による養育費の立替払い制度など、日本の養育費制度の見直しや社会保障給付と扶養義務との関係の再検討において参考となる知見を得ることができた。 さらに、国際化により国際的な扶養料請求事件が増加するなか有効な仲裁合意の存否をめぐる法的紛争の解決や国際的な債権執行の管轄など、国際私法に関わる領域にも視野を広げつつ、養育費制度と密接に関連する児童福祉制度や新設された子の引渡し手続きについても検討することにより、子の扶養に係る制度の全体像を分野横断的に分析した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2023年度の日本社会保障法学会でのミニシンポジウム実施に向けて、研究グループ内で定期的に検討を重ね、ミニシンポジウムを確実に実施できる状態にまで準備を行うことができた。さらに、研究にあたっては、福祉事務所へのヒヤリング調査を実施し、実務の把握に努めた。また、分野横断的検討のための勉強会(特にフランス養育費制度勉強会)を定期的に開催するなど、着実に共同研究を推進し、知見を深めている。 こうした共同研究は、各研究者の個別の研究をベースとして、それを共有し増幅させることで実施されるが、研究代表者・研究分担者ともに、適宜インタビュー調査や研究協力者の助力を得ながら、個々の研究を着実に積み上げている。 以上より、本研究計画は、概ね順調に進展しているといえる。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、第1に2023年5月に開催される日本社会保障法学会にて、ミニシンポジウム「社会保障法における家族の位置づけ―扶養義務との関係を中心に」を実施し、本研究の成果の一部を発表する予定である。そして、学会での質疑応答等を踏まえて、学会誌に論文を掲載することとしている。 第2に、上記ミニシンポジウムでの成果をさらに分野横断的に発展させるため、研究会等を実施し、最終年度(2024年度)の研究取りまとめに向けた作業を行う。具体的には、研究代表者及び各研究分担者は、国内外の法制の調査をさらに進め、養育費等の具体的かつ現代的テーマを念頭に、現代の日本において扶養義務が社会保障法制との関係でいかなる位置づけを持つべきか、そして、その位置づけを担保するための行政や司法の体制について検討を進める。 さらに、初年度より継続してきた、フランスの扶養義務や養育費制度に関する勉強会を継続し、知見を研究グループ内で共有することを目指す。 第3には、これまで実施してきた研究により得た問題意識として、社会保障制度を対象に、国家による家族への介入や、家族に関わる制度の構築についての基本理念を探求する。特に、虐待などの事象を念頭に発展してきた「家族のなかの脆弱な個人」という視点を社会保障制度や扶養義務において展開する可能性について、共同研究を通じて検討をさらに深める。
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