研究課題/領域番号 |
23K20644
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補助金の研究課題番号 |
21H00774 (2021-2023)
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 基金 (2024) 補助金 (2021-2023) |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分08010:社会学関連
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研究機関 | 大妻女子大学 |
研究代表者 |
池田 緑 大妻女子大学, 社会情報学部, 准教授 (40337887)
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研究分担者 |
江原 由美子 大妻女子大学, 人間生活文化研究所, 特別研究員 (20128565)
小川 真理子 東京大学, 多様性包摂共創センター, 特任准教授 (50724746)
喜多 加実代 福岡教育大学, 教育学部, 教授 (30272743)
定松 文 恵泉女学園大学, 人間社会学部, 教授 (40282892)
高橋 哲哉 東京大学, 大学院総合文化研究科, 名誉教授 (60171500)
玉城 福子 名桜大学, 国際学部, 准教授 (20843246)
辻 康夫 北海道大学, 法学研究科, 教授 (20197685)
桃原 一彦 沖縄国際大学, 総合文化学部, 教授 (40369202)
仁科 薫 大妻女子大学, 人間生活文化研究所, 研究員 (50825776)
沼田 彩誉子 東京外国語大学, アジア・アフリカ言語文化研究所, 研究員 (20973788)
長谷部 美佳 明治学院大学, 教養教育センター, 准教授 (30624118)
曹 慶鎬 立教大学, 社会学部, 教育研究コーディネーター (20762892)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
17,030千円 (直接経費: 13,100千円、間接経費: 3,930千円)
2024年度: 2,600千円 (直接経費: 2,000千円、間接経費: 600千円)
2023年度: 6,110千円 (直接経費: 4,700千円、間接経費: 1,410千円)
2022年度: 5,720千円 (直接経費: 4,400千円、間接経費: 1,320千円)
2021年度: 2,600千円 (直接経費: 2,000千円、間接経費: 600千円)
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キーワード | ポジショナリティ / 経験的概念 / 集団的権力 / ジェンダー / 多文化社会 / 国際比較調査 / 集団間権力関係 |
研究開始時の研究の概要 |
ポジショナリティという概念によって、集団間の権力関係とそれぞれに属する個人の間に生起する権力作用を複層的な視点で分析する。日本と沖縄の関係、ジェンダー、多文化社会化などの具体的論点の研究と、日本と韓国でのポジショナリティへの意識調査を組み合わせ、ポジショナリティの違いによって起こりうる齟齬や係争、ポジショナリティへの共通認識がもたらす協働可能性の条件などを、包括的に提示する。
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研究実績の概要 |
今年度は、主にポジショナリティの複数性の観点から定性的調査と、包括的な定量的調査を行った。定性的調査として、一人の個人が複数のポジショナリティを有する状況において、ある権力関係において被抑圧側にあることが、他の関係性において抑圧側にあることについて、必ずしも理解を促進するわけではなく、ときに被抑圧者というポジショナリティが、その強調によって、別の関係性における抑圧者というポジショナリティの認識を妨げる可能性があることを、性差と様々な権力関係との交差から検討を行った。 また日本国内と韓国で定量的調査(アンケート形式)を実施した。定量的調査は、性差、多文化化、地域格差、障害者問題、自己責任と集団の影響力、の5領域についてWEBを利用した形式で行った。サンプル数は日本国内が1200、韓国が1300であった。居住地域、性別、年齢などを元に層化抽出法を用いて行った。それぞれ40問程度であった。単純集計結果のレベルで多くの項目で差があり、日韓の社会状況の相違が、ポジショナリティの認識や解釈の相違となって現れている可能性が示唆された。より詳細な分析が必要であり、次年度以降も引き続き論点別に、社会環境の相違とポジショナリティ認識の相違について比較分析を行う。 さらに理論的な検討として、ポジショナリティに関わる個人の水準で想定される責任と、「抑圧を否定する被抑圧者」の存在がポジショナリティに与える影響について事例分析も交えた検討を行った。ポジショナリティとインターセクショナリティとの概念比較、ポジショナリティとマイクロアグレッションの重なりと関連などについても、国内外の文献と議論のありようを比較して検討を行った。ポジショナリティとインターセクショナリィ論における「総和」概念の相違や、マイクロアグレッションとポジショナリティの深い関連などが分析できた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
新型コロナの影響により予定していた定性的調査が遅れるなどスケジュール全体が遅れていたことに加え、日韓の国際比較調査において障がい者関連の項目の精査、ポジショナリティと支持政党との関連、複数の権力関係とポジショナリティの分析方法、ネオリベラリズム的価値観への親和度とポジショナリティ認識の相関など、新たな検討課題が発見され、それらの検討、調査票設計への反映などに時間を要した。また韓国調査において、沖縄の基地問題との意識の比較を行う項目、および性差関連項目の比較について、韓国の地域的事情やジェンダー意識の動向を事前に確認する必要が生じ、それらの事前調査や有識者にチェックを依頼するなどの作業が新たに生じた。 理論分析においても、インターセクショナリティとポジショナリティの理論的関係や相違、マイクロアグレッション概念との重複と相違などが、ポジショナリティ概念の精査のために新たな検討課題となり、これらの理論的検討と実際の事例検討を行い、ポジショナリティを用いた分析と比較しつつ、相互の概念の特徴と相違を明らかにする作業を行なった。 これらの作業は本研究遂行のために新たに発生した課題であり、その課題検討のため研究スケジュールに遅れが出ることとなった。
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今後の研究の推進方策 |
日韓国際比較調査について基礎的分析は済んでいるものの、統計的手法を用いたより踏み込んだ分析を行い、ポジショナリティのあり方と他の属性変数との関係性を明らかにする。それは、以下の定性的調査や理論検討と組み合わせて行われる。 はじめに、ポジショナリティの存在を曖昧にしたり、ポジショナリティへの認識を妨げる様々な言説の効果について、引き続き検討を行う。言語(諸概念)の用いられ方に潜むポジショナリティを相対化する効果、複数の権力関係によって相殺化されるポジショナリティへの認識、などが検討課題となる。 次に、ポジショナリティへの認識度・理解度の相違が、どのような行為の相違となって現れるのか、あるいは行為規準の相違をもたらすのかについて、沖縄に集中する米軍基地を沖縄以外の日本へ移すことを求める、県外移設論(沖縄側)/基地引き取り論(日本側)への態度や行為規準の相違、先住民や障がい者、ニューカマー外国人などの “マイノリティ”に対する態度や行為規準、女性への攻撃言説における態度の分析などである。 さらに、ポジショナリティの相違が、権力や差別を内包した特定の社会的事象に対する態度や行為規準の相違をもたらすだけではなく、社会的事象の事実解釈そのものに相違をもたらす可能性について、日韓国際調査の結果と追加的な定性的調査から明らかにする予定である。
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