研究課題/領域番号 |
23K20646
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補助金の研究課題番号 |
21H00778 (2021-2023)
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 基金 (2024) 補助金 (2021-2023) |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分08010:社会学関連
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研究機関 | ノートルダム清心女子大学 (2024) 東京大学 (2021-2023) |
研究代表者 |
八尾 祥平 ノートルダム清心女子大学, 国際文化学部, 教授 (90630731)
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研究分担者 |
村井 寛志 神奈川大学, 外国語学部, 教授 (60409919)
鶴園 裕基 香川大学, 法学部, 准教授 (10804180)
持田 洋平 神奈川大学, 付置研究所, 研究員 (20890627)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
16,380千円 (直接経費: 12,600千円、間接経費: 3,780千円)
2025年度: 3,510千円 (直接経費: 2,700千円、間接経費: 810千円)
2024年度: 2,860千円 (直接経費: 2,200千円、間接経費: 660千円)
2023年度: 3,770千円 (直接経費: 2,900千円、間接経費: 870千円)
2022年度: 3,770千円 (直接経費: 2,900千円、間接経費: 870千円)
2021年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
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キーワード | 人種 / 出入国管理 / 植民地 / 近代化 / 統治性 / 植民地からの近代化 / 華僑・華人 / 沖縄 / 台湾 / シンガポール / 華僑 / 華人 / 香港 / 華僑華人 |
研究開始時の研究の概要 |
継続課題のため、記入しない。
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研究実績の概要 |
これまでの華僑・華人研究では、中国大陸と華僑・華人とのつながりを自明視した研究が主流であった。これに対して、本研究では、大英帝国と日本帝国の旧植民地であった香港、台湾、そして、シンガポールと華僑・華人との結びつきに着目して、一種のステレオタイプ化した華僑・華人像を再構築することを目指す。 具体的には、①単一帝国ではなく、旧日英帝国という複数帝国の視座を採用し、②冷戦期における台湾・香港・シンガポール間の出入国管理体制を実証的に分析することで、「植民地からの近代化」を実証的に検証する。本研究は、出入国管理を切り口にして、既存の華僑・華人研究では周縁化されてきた香港人・台湾人・シンガポール華人を考察することで、「中国にルーツをもつこと」を自明視しない主体意識が形成される歴史的過程を国家政策と国際環境との連関から解明することで、これまでの華僑・華人についての理解を刷新しうると考えている。 こうした問題意識と研究計画に基づき、今年度も(1)国内外での史料調査、(2)定例研究会の開催を行った。さらにこれまでの研究活動による成果を(3)学会等での報告・討議することができた。(1)について、今年度は各研究者が国内外で自身の担当する地域の史料調査を実施することができた。(2)については当初の予定通り研究会を3回実施し、学会での報告準備や学会報告の討議を踏まえた研究のブラッシュアップを行うことができた。(3)については神戸華僑華人研究会や日本華僑華人学会の研究大会でのパネル報告を通じて研究者間での討議を行った。幅広い分野の研究者からのコメントによって、若手の華僑華人研究者にとっても自らの研究を他の専門分野による知見をまじえて捉えなおし、新たな研究の展開についての知見を持たせる教育的な機会にもできた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度は(1)国内外での資料調査の実施、(2)定例研究会の開催、(3)研究成果の一部を学会等で報告・討議した。(1)については昨年度に引き続き、各研究メンバーが自身の担当する地域の史料調査を実施できた。(2)については、研究成果を学会報告するための準備や研究メンバーの進捗状況の報告、重要な研究情報の共有のために定例研究会を3回実施した。(3)については神戸華僑華人研究会や日本華僑華人学会、神奈川大学アジア研究センターなどで研究成果の一部を報告・討議および関連イベントを実施した。こうした討議の場では北九州市立大学の篠崎香織氏による華僑華人研究の視座からのコメントを得ただけでなく、批判国際関係論の視座からは土佐弘之氏による生権力もしくは死権力の視角からアジアとアフリカをつなぐ議論や難民の政治性をめぐる問題、国際社会学の見地から蘭信三氏より戦後のアジア太平洋の人の移動と政策の変化から報告事例を捉えなおす問題提起など、本研究を華僑華人研究を越えて、人の国際移動の根幹より問い直し、ブラッシュアップするために有用なコメントを得ることができた。本研究で個々人の主体意識が国家や国際社会の構造によって如何に規定・構築されるのかを解明するうえで、華僑・華人というカテゴリーそのものの政治性を問い直すことで、華僑華人研究の研究枠組みを超え、他のエスニシティ・地域で移動を生きた人びとにもつながる「人種」というシステムと人の国際移動が社会にもたらしたグローバルなインパクトを明らかにできる可能性があることが今年度の研究活動から示唆された。来年度以降はより研究成果をより精緻にして、学会報告や論文の発表など、積極的に研究成果を公開していく準備を整えることができた。なお、本研究課題に関連するテーマの写真展とトークショーも開催できた。 以上から、今年度の研究はおおむね順調に進展しているといえると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
来年度は、当初の研究計画の通り、(1)国内外での史料調査、(2)定例研究会を実施する。さらに、(3)研究成果の一部を学会等で報告・議論してブラッシュアップした成果を論文として発表したい。 (1)については、引き続き、疫病や災害などを含めた国際情勢などを鑑み、安全に調査を実施できるように柔軟な対応ができるように心がけたい。国内・海外を問わず、今年度の学会での討議によって明らかになった新たな研究課題を明らかにするために必要な史資料調査を実施して、議論の一層のブラッシュアップをはかりたい。 (2)については、来年度も定例研究会を3回実施する予定であるが対面だけでなく、状況次第ではオンラインでの実施も視野に入れている。また、研究会を通じて研究協力者による本研究課題に関わる知見の提供を受けるだけでなく、当研究課題と関連する課題に取り組む国内・海外の研究者も招き、最新の知見と課題について積極的に議論を行うことも継続する。また、理論研究についても、これまでのフーコーの「統治性」と植民地の問題との結びつきについての先行研究の収集・整理した成果を踏まえ、華僑・華人研究を既存のエスニシティや地域に限定せず、他のエスニシティとの間にみられる相似性や連関、あるいは、アジアという地域を越えたよりグローバルな地域との結びつきまで視野を広げた議論の可能性を模索したい。 (3)については研究会や学会報告での討議を踏まえて論文を執筆し、来年度までに学会誌などで発表することを目指したい。研究会での活動を足掛かりにして、国内・海外にかかわらず、本研究と問題意識が近しい研究者との国際シンポジウムなどの開催準備も行うことも予定している。
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