研究課題/領域番号 |
23K20652
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補助金の研究課題番号 |
21H00789 (2021-2023)
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 基金 (2024) 補助金 (2021-2023) |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分08010:社会学関連
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研究機関 | 特定非営利活動法人社会理論・動態研究所 |
研究代表者 |
青木 秀男 特定非営利活動法人社会理論・動態研究所, 研究部, 研究員 (50079266)
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研究分担者 |
大倉 祐二 松山大学, 人文学部, 教授 (00419681)
北川 由紀彦 放送大学, 教養学部, 教授 (00601840)
山口 恵子 東京学芸大学, 教育学部, 教授 (40344585)
結城 翼 特定非営利活動法人社会理論・動態研究所, 研究部, 研究員 (50840493)
渡辺 拓也 大谷大学, 社会学部, 助教 (70622067)
文 貞實 東洋大学, 社会学部, 教授 (20301616)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
16,770千円 (直接経費: 12,900千円、間接経費: 3,870千円)
2025年度: 2,600千円 (直接経費: 2,000千円、間接経費: 600千円)
2024年度: 3,250千円 (直接経費: 2,500千円、間接経費: 750千円)
2023年度: 3,250千円 (直接経費: 2,500千円、間接経費: 750千円)
2022年度: 3,250千円 (直接経費: 2,500千円、間接経費: 750千円)
2021年度: 4,420千円 (直接経費: 3,400千円、間接経費: 1,020千円)
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キーワード | 山谷 / 釜ヶ崎 / 日雇労働者 / 生活保護者 / 路上生活者 / 野宿者 / 労働 / 都市雑業 / 居住 / 生活保護 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究は、寄せ場・山谷と釜ヶ崎の比較研究である。研究の概要は次の通りである。山谷では日雇労働者が激減し、ドヤやアパートに居住する生活保護受給者が増加した。釜ヶ崎でも生活保護受給者が増加したが、それでもあいりん労働センターや手配師を介して仕事に就労する日雇労働者が少なくない。このような山谷と釜ヶ崎の類似と差異は、寄せ場としての山谷と釜ヶ崎の労働・空間の構造のどのような差異に発するものであるのか。どのような歴史的背景に規定されたものであるのか。さらに都市社会に開かれた空間としてどのような都市機能の差異に規定されたものであるのか。本研究は、これらの問題を比較の方法を用いて明らかにする。
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研究実績の概要 |
本研究は、山谷・釜ヶ崎の日雇労働者、雑業就業者、野宿者、生活保護受給者の仕事・居住・生活を調査し、山谷と釜ヶ崎の類似と差異を分析し、寄せ場の類型的把握をめざす。2023年度は次のような調査活動を行った。一つ、山谷と釜ヶ崎の労働市場と地域構造、人々の労働・居住・生活について行政・NPO関連の資料、書籍・論文の収集を行った。二つ、研究代表者・分担者・研究協力者で山谷・釜ヶ崎研究の目的・仮説・方法・実証について研究会を行った(2023年4月23日、7月1日、8月7日、11月5日、2024年1月21日、3月30日)。三つ、代表者青木は、山谷で8月28日~9月3日、12月3日~9日、釜ヶ崎で10月9日~15日、2024年1月29日~2月1日、3月7日~9日に現地調査を行った。また9月25日~26日に北九州市の旧石炭積出港で建物等の遺跡観察と資料収集を行った。四つ、2024年3月8日に代表者・分担者全員で釜ヶ崎の現地調査を行った。五つ、東京班の分担者は、2023年4月17日、5月22日、6月18日、7月24日に研究会を行った。8月~12月に7カ所で情報提供者に聞き取りを行った。大阪班の分担者は、2023年9月11日に釜ヶ崎医療連絡会議、10月28日に全港湾建設支部西成分会、2024年2月4日に日本人民委員会、3月3日に釜ヶ崎キリスト教協友会に聞き取りを行った。分担者大倉は、9月27日、12月27日、2024年1月24日に西成労働福祉センターで聞き取りを行った。また大阪班の打合せを5月4日、2024年2月18日に行った。四つ、これらの調査により山谷と釜ヶ崎の日雇労働者、雑業就業者、生活保護受給者、野宿者の仕事・居住・生活の実態を把握し、寄せ場としての山谷・釜ヶ崎の比較研究への枠組みとその検証への歩を進めた。こうして2023年度に予定していた調査と成果を得ることができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
コロナ禍が過ぎて、研究代表者と分担者4人に放送大学の北川さんが加わり、また研究協力者として東京大学の文貞實さんと大阪公立大学の中村葉子さんが加わり、山谷と釜ヶ崎において現地調査を行った。代表者と分担者、研究協力者はいずれも、これまでに山谷と釜ヶ崎でネットワークを築いており、それを基に日雇労働者、野宿者、雑業就労者、生活保護受給者、行政職員、活動家、NPO職員等への聞き取りを行い、本研究のための情報を収集した。また、そのネットワークを手づるに調査対象者の範囲を拡大した。さらに、調査対象者の生活場面の参与観察、野宿者の夜間パトロールや年末年始の越冬闘争、お盆の夏祭りの参与観察を行った。またズームによる研究会を行い、収集した情報の共有を行った。これらの活動は本研究の仮説、分析枠組を構成し、実証するための重要な作業となった。さらにそれらの情報を共有しつつ、山谷と釜ヶ崎の労働市場、生活構造、さらに歴史的背景の分析と比較のための議論を深めた。山谷と釜ヶ崎のなにをどう分析し、山谷と釜ヶ崎をどのように比較するのか。そして先行の寄せ場研究に対して本研究はどのような貢献をなすのか。議論はこれらの論点をめぐり行われ、一層の掘り下げと整理を次年度に続けることとなった。こうして2023年度に予定した調査はほぼ完了した。
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今後の研究の推進方策 |
2024年度における本研究の推進について、次のような方策を考えている。一つ、調査対象者を、日雇労働者、野宿者、生活保護受給者のほか、より突っ込んで雑業労働者、ドヤやレストランの従業員に広げる。また越冬闘争や夏祭り、野宿者の夜間パトロールへの参与観察を徹底する。行政・施設・団体の職員、労働組合の活動家の聞き取りをさらに続ける。彼彼女らの話だけではなく、彼彼女らが作成する文書資料を収集する。それらは、山谷・釜ヶ崎の全体を捉える重要な資料となる。代表者・分担者・研究協力者は、これらの人々と親密なネットワークを築いており、資料収集の協力を得ることができる。二つ、調査や資料等で得た情報を共有し、研究を進めるための研究会をさらに充実させ、また代表者・分担者・研究協力者の間の個別の議論を深める。とくに山谷班と釜ヶ崎班との打合せは重要である。住民のほとんどが生活保護受給者の山谷と、現役の日雇労働者がまだ少なくない釜ヶ崎との比較は、本研究の中心課題の一つである。三つ、山谷・釜ヶ崎の高度経済成長前後とその後の変遷を追い、寄せ場の類型的把握のための歴史の議論を行う。他方で、2023年度に一部実施した北九州市の旧炭鉱積出港についてさらに情報を収集し、寄せ場の原点についての知見を深める。山谷・釜ヶ崎を捉える歴史・空間へ視座を拡げ、今日の寄せ場の背景の理解を行う。四つ、研究代表者が過去5年間行ってきた基盤研究(A)による世界の6つのグローバル都市の底辺層に関する研究、また東アジアの底辺労働者について刊行した本とその研究を参照し、本研究を世界の都市の底辺層研究の中に位置づける。2024年度には、研究協力者の文貞實さんを分担者へ迎える予定である。文さんは山谷を中心に東京の底辺層の研究を行ってきており、本研究の分担者として十分に貢献をしてくれると思っている。
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