研究課題/領域番号 |
23K20659
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補助金の研究課題番号 |
21H00797 (2021-2023)
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 基金 (2024) 補助金 (2021-2023) |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分08020:社会福祉学関連
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研究機関 | 立教大学 |
研究代表者 |
菅沼 隆 立教大学, 経済学部, 教授 (00226416)
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研究分担者 |
尾崎 俊哉 立教大学, 経営学部, 教授 (20409543)
倉地 真太郎 明治大学, 政治経済学部, 専任講師 (60781078)
吉武 信彦 高崎経済大学, 地域政策学部, 教授 (80240266)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
16,510千円 (直接経費: 12,700千円、間接経費: 3,810千円)
2024年度: 4,940千円 (直接経費: 3,800千円、間接経費: 1,140千円)
2023年度: 4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2022年度: 4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2021年度: 2,210千円 (直接経費: 1,700千円、間接経費: 510千円)
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キーワード | 福祉国家 / イノベーション / フレキシキュリティ / 投資財団 / 社会的投資 / 産業財団 / 職業訓練 / リスキリング / 税制 / 環境 / 公共部門 / デンマーク / 学習経済 / ナショナル・イノベーション・システム / ダイバーシティ / 経済政策 / 財政 / 社会政策 |
研究開始時の研究の概要 |
イノベーション政策にかかわる政府機関(経済産業省、科学技術イノベーション省、租税省、産業推進機構、教育省所管職業訓練委員会)への聞き取り調査、デンマークのリーディングインダストリーの経営者・イノベーションクラスター・エンジェルファンドなどの責任者への聞き取り、主要な労働組合の幹部に対する聞取り調査を行ってきた。また、デンマーク統計庁の研究者からデンマーク統計の情報について説明を受けた。文献研究も別途行い、ナショナル・イノベーション・システムの理論的フレームワークを援用し、デンマーク・イノベーション・システムを分析した。これらの情報をもとに研究の目的を果たしていく。
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研究実績の概要 |
9月にメンバー全員(研究協力者加藤壮一郎を含む)でデンマーク現地訪問調査を行った。訪問先は、科学技術省、租税省、職業教育諮問委員会会長、イノベーション・クラスターのOdense Robotics、Bio Innovation Institute、労働組合HKの職業訓練担当部長であった。また、王立図書館を訪問し、資料収集を行った。加藤はスベンボー市を訪問し、市雇用部部長、企業支援担当職員などに聞き取り調査を行った。デンマーク統計庁のMichael Osterwald-Lenum氏が立教大学を来訪した際に、菅沼、倉地、加藤がイノベーション統計について聞き取りを行った。 メンバーは学会報告・研究会発表・招待講演などで成果を発表してきた。8月に吉武が政策研究フォーラム研究会にて、「北欧情勢―デンマーク、スウェーデン、フィンランド」をテーマに報告を行った。同月、菅沼と倉地は日本デンマーク協会で「イノベーティブな福祉国家デンマークの秘密」をテーマに講演を行った。11月に尾崎が北ヨーロッパ学会で「デンマークの産業財団型ガバナンスは、日本のコーポレートガバナンスに何を示唆するのか」をテーマに学会報告を行った。11月に菅沼が中国社会学会社会政策国際論壇(上海・華東理工大学)にて「社会保険の普遍主義化-イノベーティブ福祉国家への展望」をテーマに講演を行った。 メンバーは研究論文、寄稿、書籍分担執筆など10数本を公刊した。『デンマークを知る70章』明石書店(2024年1月刊)の経済・政治の9つの章をメンバーが執筆した。また、6月に倉地がコペンハーゲンごみ焼却場(コペンヒル)の記録映画上映会を開催した。10月に尾崎がSteen Thomsen(Copenhagen Business School教授)を招聘し「コーポレートガバナンスの多様性:北欧、アングロサクソン、日本」をテーマに公開講演会を主催した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の研究計画に基づいて、第一年度は文献調査研究、第二年度は現地調査、第三年度は追加的な現地調査を行ってきた。また、過去2年間の研究に基づき、研究論文の発表、学会報告等の報告、講演会の開催など、成果の公表も行ってきた。 第一年度の文献調査研究では、イノベーションにおける福祉国家の役割について、デンマーク・オルボー大学のLundvallのナショナル・イノベーション・システムの概念を吟味した。また、デンマークに特徴的な産業財団について、第一人者Steen Thomsen氏と交流を持ち、その知見を吸収・咀嚼した。 第二年度は、ノボノルディスク財団、カールスバーグ財団などデンマークのリーディングカンパニーの産業財団CEO、ベンチャー投資家、経済産業省、産業推進機構、コペンハーゲン市投資部門、デンマーク公共部門イノベーションセンター、オーフス市公共イノベーション部門、日本企業の現地法人社長などに聞き取り調査を行った。第三年度については、研究実績の概要に記した。 以上の調査研究により、イノベーティブ福祉国家としてのデンマークの構造を立体的動態的にとらえることができるようになった。産業財団による企業の所有形態がデンマーク独特の長期安定経営をもたらしていること、また、企業の社会的責任が重視されていること、政府がシステムとしてのイノベーションを自覚し、緻密なイノベーション政策を実行していること、公共部門それ自体がイノベーション戦略をもっていること、労使パートナーシップのもと明確な司令塔を設置し、精緻な職業訓練政策を実施していること、イノベーションの弊害である企業の淘汰・熟練の陳腐化・社会的格差の拡大に対して福祉国家の生活保障システムが補完し、格差縮小をもたらし、イノベーションと福祉国家の好循環がもたらされていることを明らかになってきた。 成果の公表も行っており、ほぼ研究計画通りに進んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
2024年度は、夏に追加的な現地調査を行うとともに、研究成果の取りまとめ行う。また、これまでの現地調査でコネクションを作ったキイパーソンの数名を日本に招き、公開講演会を開催し、広く成果を市民に還元する。 報告書の構成と執筆担当を決め、5月から7月にかけて、とりまとめに向けた研究会を開催する。7月に、デンマークの青年団体代表の来日に合わせて公開講演会をメンバーの大学で開催する。9月にメンバーの数名が現地で追加的な調査を行う。11月の北ヨーロッパ学会にデンマーク・イノベーション・システムのキイパーソンである研究者、行政関係者、労働組合代表を招き、リスキリングをテーマに招待講演を行う。また、キイパーソンには、メンバーが所属する大学で公開講演会・研究会を開催し、日本人とデンマークのネットワークを拡大する。 10月以降は、報告書の執筆作業に入る。研究会を開催し、草稿を吟味する。3月末に報告書を作成する。
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