研究課題/領域番号 |
23K20665
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補助金の研究課題番号 |
21H00805 (2021-2023)
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 基金 (2024) 補助金 (2021-2023) |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分08030:家政学および生活科学関連
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研究機関 | お茶の水女子大学 |
研究代表者 |
飯田 薫子 お茶の水女子大学, 基幹研究院, 教授 (50375458)
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研究分担者 |
坂本 友里 城西大学, 薬学部, 助教 (60815281)
馬橋 英章 お茶の水女子大学, 基幹研究院, 助教 (40785937)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
16,770千円 (直接経費: 12,900千円、間接経費: 3,870千円)
2024年度: 3,380千円 (直接経費: 2,600千円、間接経費: 780千円)
2023年度: 3,380千円 (直接経費: 2,600千円、間接経費: 780千円)
2022年度: 5,330千円 (直接経費: 4,100千円、間接経費: 1,230千円)
2021年度: 4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
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キーワード | サルコペニア / 食事栄養療法 / 骨格筋 / 脂肪酸 / 酸化ストレス / 飽和脂肪酸 / アポトーシス / 筋細胞 / ミトコンドリア / 肥満サルコペニア / 筋萎縮 / ポリフェノール / 加齢 / 代謝異常 / イソフラボン / 肥満 / 代謝障害 / 脂質代謝 |
研究開始時の研究の概要 |
サルコペニアは高齢者に多く見られる、全身の筋萎縮と筋力低下を呈する疾患である。主因は低栄養にあるとされ、食事のエネルギーや蛋白質の摂取量を増やすことが重要とされているが、その効果は限定的である。一方近年、高齢者の骨格筋では活性酸素や脂質が蓄積し、蛋白の分解などを介してサルコペニアを引き起こすという説が提唱されている。そこで本研究では培養細胞や動物モデルを用い、過剰な脂質やそれに伴う酸化ストレスが筋萎縮を引き起こす詳細な分子メカニズムを解明する。さらにそのメカニズムを制御しうる食事・栄養因子を探索し、生体においてその効果を検討することにより、サルコペニアに寄与しうる新たな食事療法の基盤をつくる。
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研究実績の概要 |
本年度は以下の成果を得た。 1)培養細胞での検討:前年度、アポトーシスを簡便に検出できる培養筋芽細胞のレポーターアッセイ系を構築した。このアッセイ系を用い、アポトーシス誘導因子である過酸化水素と共に食品ポリフェノールを複数種負荷し、シグナルを抑制しうる候補因子を探索した結果、quercetinが最も高い抑制効果を呈した。そこでquercetinを筋芽細胞C2C12に負荷し検証を行ったところ、高い抗アポトーシス効果を呈することを確認した。そのメカニズムとしてER stressによるPERK経路の活性化を抑制する可能性が示唆された。さらに本年度は、酸化ストレスや飽和脂肪酸がミトコンドリアダイナミクスに与える影響について筋芽細胞C2C12を用いて検討した。その結果、過酸化水素や飽和脂肪酸であるパルミチン酸(PA)を負荷すると、初期にはミトコンドリア断片化とミトコンドリアDNA 増加が起こり、ミトコンドリアダイナミクスが活性化されるが、負荷が長時間になるとミトコンドリアの断片化進行にもかかわらずミトコンドリアダイナミクスは沈静化し、ミトコンドリア品質が低下することを確認した。 2)動物を用いた検討:前年度の検討で食事誘導性肥満マウスに坐骨神経切除を施した肥満サルコペニアモデルマウスの作成を行い、本モデルにイソフラボンであるdaidzeinを投与するとI型筋線維の萎縮が軽減する傾向を確認した。しかしこのモデルでは萎縮の程度が重篤であることや、筋内脂質蓄積が少なく脂質の影響よりも神経切除の影響が大きいなどの問題点があることから、今年度は新たなモデル作成を行なった。先行研究を参考にいくつかのモデルを作製・検討した結果、長期の高脂肪食投与により肥満を誘導した上で、片側下肢にテープ固定で運動制限を施すことで、より生理的状態に近い肥満サルコペニアモデルを作成できることを確認した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
細胞を用いた検討では、作成したアッセイ系を用いて、筋芽細胞のアポトーシスを効果的に制御しうる候補食品因子としてquercetinを見出し、その制御メカニズムの一端を明らかにすることができた。また、本年度はミトコンドリア障害を引き起こすメカニズムとして新たにミトコンドリアダイナミクスに着目し、酸化ストレスや飽和脂肪酸がミトコンドリアダイナミクスに与える影響について、時間的な経過を含めてその詳細を明らかにすることができた。以上の結果は2024年度に行われる学会にて発表を予定している。また動物を用いた検討においては、これまで用いていた肥満サルコペニアモデルを見直し、人の病態により近いモデルを作成した。現在すでに本モデルを用い、いくつかの食品因子について、経口投与を行うことでモデルの筋萎縮や筋障害が改善されるかについての検討を開始している。 以上のように細胞・動物を用いた検討ともに様々な知見を得ることができ、さらに得られた結果をもとに発展的な実験に着手していることなどから、計画の達成度は予定通り順調であると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
本年度は以下の研究を行う。 ●培養筋細胞を用いた実験:①構築した培養筋芽細胞のレポーターアッセイ系を用い、過酸化水素に変えてパルミチン酸(PA)をアポトーシス誘導因子とし、食品ポリフェノールを中心とした食品因子と共に細胞に負荷し、PAにより増強するシグナルを抑制しうる食品因子候補を広く探索していく。前年度と同様、このスクリーニングで得られた候補因子については筋芽細胞に負荷を行い、筋芽細胞の脂肪酸誘導性アポトーシスを抑制するかをメカニズムと合わせて検討していく。②前年度に候補因子として得られたquercetinの筋芽細胞における抗アポトーシス効果のメカニズムに関して、詳細な検討をおこなっていく。③上記の検討で得られた候補食品因子がアポトーシスだけでなく、PAにより誘導されるミトコンドリアダイナミクスの変化に対し、どのような影響を与えるかについて、併せて検討をおこなっていく。具体的には、ミトコンドリア形態観察、ミトコンドリアDNA定量、ミトコンドリアダイナミクスに関連する遺伝子(転写因子Tfam、融合促進因子Opa1,Mfn2、分裂促進因子Drp1 など)の発現定量などを行う。 ●動物を用いた実験:前年度に作成した肥満サルコペニアモデルを用い、食品因子の摂取が、病態モデルの筋萎縮を改善しうるかについて検討を行う。投与候補としては、これまで検討を行ってきたdaidzeinに加え、細胞を用いたスクリーニング系で得られた候補因子であるquercetin、および近年筋萎縮を予防する因子として着目されているビタミンDの投与を予定する(一部についてはすでに実験を開始している)。これらの候補因子を経口的に投与したモデル動物から筋組織を採取し、炎症・アポトーシス・栄養代謝・筋萎縮に関連する遺伝子発現やシグナルタンパク質の変化、組織学的評価(HE染色や筋繊維タイプ別染色)等の検討を行う。
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