研究課題/領域番号 |
23K20719
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補助金の研究課題番号 |
21H00884 (2021-2023)
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 基金 (2024) 補助金 (2021-2023) |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分09060:特別支援教育関連
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研究機関 | 筑波技術大学 |
研究代表者 |
平賀 瑠美 筑波技術大学, 産業技術学部, 教授 (70327021)
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研究分担者 |
安 啓一 筑波技術大学, 産業技術学部, 准教授 (70407352)
寺澤 洋子 筑波大学, 図書館情報メディア系, 准教授 (70579094)
田渕 経司 筑波大学, 医学医療系, 教授 (80361335)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
14,560千円 (直接経費: 11,200千円、間接経費: 3,360千円)
2024年度: 3,380千円 (直接経費: 2,600千円、間接経費: 780千円)
2023年度: 3,250千円 (直接経費: 2,500千円、間接経費: 750千円)
2022年度: 4,030千円 (直接経費: 3,100千円、間接経費: 930千円)
2021年度: 3,510千円 (直接経費: 2,700千円、間接経費: 810千円)
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キーワード | 聴覚障害 / 非言語音 / トレーニング / アクティブラーニング / ろう・難聴者 / 音楽聴取 / 音楽要素 / 音楽認知 |
研究開始時の研究の概要 |
聴覚障害者の中には,音声以外の非言語音(環境音や音楽)を自分で聴きたい,聴いて理解したい,聴いて楽しみたい,と思う者もいる.本研究では,そのような聴覚障害者の聴く力(聴能)を向上させることを目的とした音楽トレーニングを開発,トレーニングを使用し,音声ならびに非言語音の聴取に関する効果を検証する.本研究が目指す音楽トレーニングは,自発的に継続して楽しめるものとするために,トレーニングを受ける者自らが聴きたい音を組み込めるようにするという独自性を持つ.トレーニング後に非言語音の理解を検証し,聴覚障害児が聴能を伸ばしやすい音を提案する.
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研究実績の概要 |
我々の研究の目標である「聴覚障害者の非言語音聴取向上のための音楽トレーニング開発と実施」における音楽トレーニングシステムでは、システム設計・用いる音響コンテンツ・トレーニング効果を測るための評価テストを考慮しつつ、システムを実装することになる。2021年度は、タブレットやスマートフォン上で動くシステムを想定してプロトタイプを実装し、聴覚障害者が試用した結果は良いものであった。つまり、すでに聴覚障害者にとってもトレーニングのシーリングエフェクトが見られていたため、議論を行い異なる視点が必要であるということになった。 2022年度は、トレーニング効果が報告されているVRヘッドセットでの音楽トレーニングシステムの可能性を検討した。それに合わせ、音響コンテンツも考え直した。複数の聴覚障害者を集めて何度も対面で実際に音楽を聴いたり音楽を使ったゲームをしながら意見を交換し、使用する音響コンテンツと評価の方法を考え直した。 2023年度は、聴覚障害者から音楽を聴いて獲得するのが難しいと言われることが多い時間の把握を焦点としたトレーニングを提案した。トレーニングシステムの形態は初年度に行ったものと同じであるが、どのコンテンツを用いても聴覚障害者にとっては内容が難しいようであった。 2023年度の試用実験結果とアンケートから、トレーニングシステムの枠組み自体は単純で用いることに問題はないことは分かった。しかし、改めて、聴覚障害者にとって使いやすく、使いたいという気持ちを持続させることができ、非言語音の聴取に効果が上がるトレーニングシステムのためのコンテンツと問題の作り方自体が難しいということが明らかになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2023年度は、引き続き“music as a whole”と“everyday listening”を意識して研究を進めた。“music as a whole”は、音楽全体を聴きながら必要な要因を取り出す力、“everyday listening”は、普段使っているスピーカやヘッドフォンを使用した音楽聴取である。 2022年度に実施した聴覚障害の当事者との音楽トレーニングに関する対話により、実際どのくらい特に音楽を聴いて選択的聴取(特にメロディを取り出すこと)と拍を取り出すことが可能であるかについての意見交換から、リズムを認識のための音楽トレーニングに焦点を当てることにした。トレーニングは、提示された刺激を聞いて、そのテンポを4つの選択肢から選ぶというタスクを繰り返す。用いた刺激は以下の5種類である。(1)メトロノームのように均等に音を発生する刺激、(2)メロディのみの演奏、(3)メロディと伴奏を同じ楽器で演奏したもの。メロディは(2)と同じ、(4)一つの楽器で演奏した広く知られている曲、(5)様々な楽器を用いて演奏した曲。曲は(4)と同じ。(1)-(4)はピアノを用いて刺激を作成した。また、(1)から(5)のテンポを計算して、選択肢と曲のテンポの距離により(a)簡単、(b)普通、(c)難しい、という3つのレベルを設定した。正解の多いものの予想は、刺激は(1)(a)の組み合わせであったが、予備実験では、どの組み合わせも非常に正解数が少ないことがわかった。この理由は、刺激そのものより、(a)(b)(c)のレベル設定がうまくいっておらず、差を生み出せないのではないか、正解を得にくいのではないかという考察に至った。
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今後の研究の推進方策 |
音楽トレーニングシステムは、課題音楽コンテンツと選択肢音楽コンテンツいずれも能動的に聴取することを繰り返すことにより、音楽聴取に慣れ、聴覚障害者の音楽聴取を向上させることを目的とする。2023年度に作成したテンポ理解のためのシステムを用いて聴覚障害の当事者に音楽トレーニングシステムを使用してもらい、その効果を定量的ならびに定性的分析する。2023年度のシステムには、自分で聴き取りたい音をトレーニングシステムに入れて、トレーニングを一定期間実施することも行う。 これまでのトレーニングシステムは、用いる刺激があらかじめ決められているものしかなかったが、それはトレーニングをする当事者にとって興味のある刺激とは言えないことが多かった。そこで、自分の聴きたい音楽を用いることによって音楽トレーニングを繰り返すことで、音楽聴取が向上するのか、音楽に対する気持ち(appraisal)は変化するのかを、調査する。近年、補聴器機の進化により、聴覚障害者の音の取得は向上しているが、音の取得からさらに進んで、音の認知を確実なものにするために、自分で聴き取りたい音をトレーニングシステムに入れる。このことにより、我々が作ろうとしている音楽トレーニングシステムは一方的に聴覚障害者が受け取るものではなく、聴覚障害自身が作成により深く関わっていくことができるようになるものである。また、音楽聴取が音楽以外の非言語音である環境音聴取にも影響があるのかを調査したい。 トレーニングシステムは作成済みであるため、難度のレベル調整を行い、実験に着手し結果をまとめる。テンポ聴取は聴覚障害者と健聴者の間で認識に差がないという報告もあるが、実験に参加する当事者の聴こえを詳しく知ることによって、「聴覚障害者(という集団)の音楽聴取」から「聴覚障害者(それぞれの人)の音楽聴取」を明らかにしていきたいと考える。
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