研究課題/領域番号 |
23K20752
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補助金の研究課題番号 |
21H00928 (2021-2023)
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 基金 (2024) 補助金 (2021-2023) |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分09080:科学教育関連
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研究機関 | 東京工業高等専門学校 |
研究代表者 |
多羅尾 進 東京工業高等専門学校, 機械工学科, 教授 (80300515)
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研究分担者 |
藤原 康宣 一関工業高等専門学校, その他部局等, 教授 (40290689)
津田 尚明 和歌山工業高等専門学校, 知能機械工学科, 教授 (40409793)
冨沢 哲雄 東京工業高等専門学校, 機械工学科, 教授 (60549707)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
16,120千円 (直接経費: 12,400千円、間接経費: 3,720千円)
2024年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2023年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2022年度: 3,120千円 (直接経費: 2,400千円、間接経費: 720千円)
2021年度: 10,400千円 (直接経費: 8,000千円、間接経費: 2,400千円)
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キーワード | 高度ロボット統合化実装力 / 総合的技術者養成 / モバイルマニピュレーション |
研究開始時の研究の概要 |
ロボット工学分野の社会実装テーマは本来,複合・融合的な技術を積み重ねていくプロセスが必要となるが,障壁とも成り得るこの過程について,開発用プラットフォーム統合化教材を用意し,これによって適切に推進できるよう試みる.具体的な題材として,今後の急速な普及が期待される移動ロボットによるマニピュレーションを対象とし,社会実装教育の枠組みの中で,複数の高専チームによる開発に取り組む.これを通じてロボット利活用技術者育成プロジェクトの在り方及びその進め方,加えてこの促進に有効な教材(体系的統合化教材)の有効性を分析・検証する.
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研究実績の概要 |
本研究では,社会実装指向ロボット教育の一環として,複合・融合的な技術を積み重ねていくコンセプトの下,その教材として,1)産業用協働型双腕ロボットを利活用したモバイルマニピュレーション,および,2)試作の柔軟性を備えたモビリティプラットフォームに汎用的低自由度アームを付加したモバイルマニピュレーション,それぞれに向けた二種の試作用機材を用意して社会(現場)実装課題に取り組むことを狙っている. 2023年度において,これまでに開発を進めてきた1)協働型双腕ロボットについては,昇降機能が付加された全方位移動機構上に同ロボットを搭載し,上下方向を含む広範囲をカバーするモバイルマニピュレーションの試行を行ったことに加え,2)モビリティプラットフォーム・汎用的低自由度アームについては,周囲の幾何学的情報を計測するための比較的安価な測域センサおよび深度カメラ等を実装し,モビリティ教材の機能強化を図った. 1)協働型双腕ロボットについては,見通し良くプログラミングし易いPython言語によって作成した動作用(外部汎用PCとロボット専用コントローラを結ぶ)インタフェースを整備し,汎用PCからロボットを制御する際の手順のハードルを下げる工夫を施した上で,難度の高いアーム機体の上下動作を伴うピックアンドプレース作業を行うモバイルマニピュレーションが実行できるレベルに至った.双腕ロボットの動作については,メーカーが公開している開発用アプリケーションを通じて,計算機上でのシミュレーションと連動させることも試みている. 後者2)については,荷物移動タスクの実現を目標として設定した上で,車体前方に置かれた集荷ボックス上にランダムな向きに置かれた荷物を回収するタスクを試行し,自律走行・物体認識・接近・物体把持を行う一連の作業を達成できるレベルに至った.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
1)冗長性を備えた全14自由度の協働型双腕ロボットをベースとして,独自の昇降機能が付加された全方位移動機構と組み合わせたモバイルマニピュレータを構成し,統合したシステムの評価実験として荷物の運搬タスクを設定した.屋内での運搬作業を想定し,机上に乱雑に置かれた運搬対象の大きさの異なる荷物に対し,全方位移動可能なモビリティによってアプローチした後,協働型双腕ロボットでピッキング・把持した上で,同モビリティで所定の目標位置に移動後,昇降機構を用いて一定高さの棚の上へ運搬させる作業を試行し,再現性ある動作が確認できた.本実験で使う荷物上面中心部およびピックアンドプレース時に機体が移動すべき位置,それぞれの目印としてARマーカーを用いている. 一方,2)ミドルサイズのモビリティ教材キットを対象としたプラットフォーム上に4自由度ロボットアームを搭載した比較的低価格なローエンドのモバイルマニピュレータを構成し,荷物移動タスクを試行した.処理の流れは,1)荷物が置かれたボックスを深度カメラで検出(物体検知アルゴリズムYoloを使用)し,そのボックスの位置・姿勢(2D LiDARから得られる点群データから推定)を取得し,2)この情報の下にロボットがボックスに近接するように移動する.荷物の回収では1)と同様にARマーカーを用いることで荷物の位置姿勢を認識し4自由度アームでの把持を行った. 両者ともに自律走行・物体認識・接近・物体把持を行う一連の作業が確認された.本教材を効果的に用いれば,ロボット開発の初心者でもおおよそ半年間あれば,モバイルマニピュレータの機体と制御システムの基本部分を完成させられることが確認できた.
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今後の研究の推進方策 |
前年度までに,比較的大規模の産業用協働型双腕ロボットを中心としたプラットフォームの試作(2021年度),汎用的低自由度アームを導入した「モバイルマニピュレーション」用ロボットのシステムの試作(2022年度),自律走行に欠かせない周囲の幾何学的情報を計測するための比較的安価な測域センサを導入したモビリティ教材の機能強化(2023年度),マニピュレーションに関わるプロトタイピング(2023年度),アーム搭載型移動ロボットのモバイルマニピュレーションを試行する総合的環境の整備(2023年度)等を進めてきた.モビリティプラットフォームを核とした試作プロセスにおいては,複数回のミーティングを実施しながら,有効となるソフトウェア・ドキュメント等を関係高専と共有しながら協力する体制が構築できている. 今後は,関係する三つの高専が協力して,それぞれのこれまでの成果を組み合わせていく要領で,ひとつのモバイルマニピュレーションのタスクを設定し,これを実現するアプローチを試みる. 例えば,ここまで利用してきたARマーカー(複数の中からターゲットを絞り込んで)を指定するユーザインタフェースを作成し,これに基づいて目標位置姿勢をロボットに指令するシステムを構築し,併せて地図作成と自己位置推定を行うシステムと連携して,実際にモバイルマニピュレーションをさせる一連のシステム開発を構想している. サイバーフィジカルシステムについては,ROSとそれに付随するシミュレータgazebo等を用いて,実機と数値モデル(urdfモデル)を連携させることを試みる. ここまでに構築された“アーム+モビリティ(モバイルマニピュレーション)統合化教材”を基本とする成果物・知見を総合的技術者養成パッケージとして整理し,これを活用したロボットSI(システム・インテグレーション)プロセスを試行し,その効果を確認することに取り組む.
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