研究課題/領域番号 |
23K20773
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補助金の研究課題番号 |
21H00952 (2021-2023)
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 基金 (2024) 補助金 (2021-2023) |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分10030:臨床心理学関連
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研究機関 | 東北学院大学 |
研究代表者 |
金井 嘉宏 東北学院大学, 人間科学部, 教授 (60432689)
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研究分担者 |
山本 哲也 徳島大学, 大学院社会産業理工学研究部(社会総合科学域), 准教授 (60779396)
佐藤 友哉 新潟大学, 人文社会科学系, 准教授 (70721900)
前田 駿太 東北大学, 教育学研究科, 准教授 (30823603)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
17,030千円 (直接経費: 13,100千円、間接経費: 3,930千円)
2024年度: 2,860千円 (直接経費: 2,200千円、間接経費: 660千円)
2023年度: 2,990千円 (直接経費: 2,300千円、間接経費: 690千円)
2022年度: 4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)
2021年度: 6,890千円 (直接経費: 5,300千円、間接経費: 1,590千円)
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キーワード | 認知行動療法 / コンパッション / 社交不安 / 抑うつ / マインドフルネス / セルフ・コンパッション / 脱中心化 / 慈悲の瞑想 / virtual reality / 社会的つながり |
研究開始時の研究の概要 |
社交不安症とうつ病に対する認知行動療法(CBT)は,ネガティブな感情を減らすことを主な目的としてきたが,ネガティブ感情(不安や抑うつ)が下がってもポジティブ感情の欠如があると効果は低い。本研究は,これまでの研究でポジティブ感情を高めることが明らかにされている,他者への親切行動や慈悲の瞑想といったコンパッション(思いやり)に基づく介入が,既存のCBTの効果に及ぼす影響と作用機序を明らかにし,CBTの改善率向上を目指す。
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研究実績の概要 |
自己に対するコンパッション,他者に対するコンパッションと社交不安,抑うつの関係,および脱中心化による媒介効果,BIS/BASによる調整効果を調べるために一般成人2225名を対象に1ヶ月間隔の縦断調査を行った。そのうち653名から2回目調査への回答が得られた。質問紙の構成は(1)Compassionate Engagement and Action Scales日本語版(Asano et al., 2019),(2)Behavioral Inhibition System/Behavioral Activation System尺度日本語版(髙橋他,2007),(3)Experiences Questionnaire日本語版(EQ; 栗原他,2010)脱中心化因子,(4)多面的感情状態尺度(寺崎他,1992)活動的快,非活動的快,親和の3因子,(5)Liebowitz Social Anxiety Scale日本語版(LSAS;朝倉他, 2002),(6)Patient Health Questionnaire日本語版(Muramatsu et al., 2018)であった。共分散構造分析の結果,自己に対するコンパッションの行動(action)が脱中心化を媒介してLSASの恐怖得点と負の関連を示すのに対し,他者に対するコンパッションの行動は直接,LSASの回避得点と負の関係を示していた。解析をさらに進める。 また,2週間の慈悲の瞑想がポジティブ感情と社会的つながりに及ぼす影響に関する実験研究の準備を進めている。さらに,セルフコンパッションへの効果を有する可能性があるvirtual realityを活用した基礎技術の開発・および予備実験を行った。その結果,面接場面において,こうした情報通信技術を活用することによって,セルフコンパッションの向上に寄与する可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の目的は,社交不安症とうつ病に共通してみられるポジティブ感情の欠如を改善するために,慈悲の瞑想と向社会行動(他者への親切行動など)で構成されるコンパッションに基づく介入を追加することが既存のCBTの効果を高めるか,およびそのメカニズムについて基礎研究と臨床研究で明らかにすることである。そのために,初年度にはコンパッション(向社会行動),ポジティブ感情,社交不安・抑うつ症状はどのように関係しているか,およびその関係における調整変数や媒介変数を特定することであった。今年度は計画通り,変数間の関係を調べる縦断調査を2000名を超える対象者に実施し,2回目においても600名以上の対象者から回答を得られた。 また,コンパッションに基づいた介入として慈悲の瞑想をとりあげ,それがポジティブ感情や社会的つながりに及ぼす影響の実験研究を進めることができていることから,上記の通り判断した。
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今後の研究の推進方策 |
大規模な縦断調査のデータ解析を進めるとともに,慈悲の瞑想がポジティブ感情や社会的つながりに及ぼす影響に関するデータを増やす。また,慈悲の瞑想が急性ストレス負荷に対する応答性の変化を検証するために,コルチゾールを測定する実験を行う。virtual realityを用いた対話がセルフコンパッションに及ぼす効果についても引き続き実験研究を行う。今後もコンパッションと社交不安・抑うつの関係,およびその調整変数と媒介変数を特定する基礎研究を行うとともに,その後の治療効果研究に向けて,コンパッションに基づく介入の構成要素を検討する。
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