研究課題/領域番号 |
23K20776
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補助金の研究課題番号 |
21H00960 (2021-2023)
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 基金 (2024) 補助金 (2021-2023) |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分10040:実験心理学関連
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
楠見 孝 京都大学, 教育学研究科, 教授 (70195444)
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研究分担者 |
横澤 一彦 日本国際学園大学, 経営情報学部, 教授 (20311649)
浅野 倫子 東京大学, 大学院人文社会系研究科(文学部), 准教授 (40553607)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
17,030千円 (直接経費: 13,100千円、間接経費: 3,930千円)
2024年度: 4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2023年度: 4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2022年度: 4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2021年度: 4,550千円 (直接経費: 3,500千円、間接経費: 1,050千円)
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キーワード | 共感覚 / 比喩 / 通様相性 / 感覚間相互作用 / 個人差 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究は,共感覚比喩(例:明るい音)という多数の人が理解できる言語現象と,少数の人が経験する共感覚(例:色聴)という知覚現象の連続性に焦点をあてた。具体的には,共感覚比喩と共感覚の間の共通メカニズムと特異なメカニズムに関して,非共感覚者と共感覚者の個人差(e.g.,浅野・横澤,2020; Marks,2017)に基づいて検討を進めた。そこで,共感覚比喩理解,色字共感覚課題と新たに開発した色字以外共感覚課題,共感覚経験質問紙,芸術活動,感覚処理感受性(HSP)などの個人差項目を含む課題のセットを構成し,個人差データ収集のための大規模web実験を実施した。
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研究実績の概要 |
本研究の目的は,共感覚比喩と共感覚現象に関する認知メカニズムとその個人差を解明することである。 2年目の2022年度は,第一に,1年目に実施した大規模web実験の分析を進め,以下のことを明らかにした。(a)共感覚経験質問紙改訂版の再検査信頼性(.71)は高く,その信頼性が確認できた。(b)新規に作成した色字以外共感覚課題の安定性の得点は,味-形,香り-視覚共感覚(.66)が高く,味,音-触覚,数字-人(.42)が低かった。(c)共感覚経験質問紙の経験頻度得点と共感覚比喩の 理解可能性は 相関(.40)は中程度だった。しかし,共感覚経験質問紙の経験頻度得点と色字以外共感覚課題の安定性得点との相関はなかった。 そこで,第二に,大規模web実験課題の修正を,新規に作成した色字以外共感覚課題を中心に行った。まず,(a)共感覚経験質問紙において「経験なし」と回答した項目に対応させて色字以外共感覚課題の項目を回答しない形にしていたが,全員回答に変更して,得点算出における歪みをなくした。さらに,(b)色字以外共感覚課題を修正し,評定の対象物を,「感覚形容語+感覚指示名詞」(例:甘い味,苦い味など)に統一した。これは評定に,具体的事物の影響が出ないように材料を統制したものである。あわせて,(c)個人差測定のために,五感の鋭敏さや芸術などの得意な活動の回答を求める質問項目やビッグV性格特性質問項目を新たに加えた。 そして,第三に,20-60代の調査会社モニターの回答者(継続552名,新規1064人)について,2回目の大規模実験を実施した。1回目のスクリーニング基準に準じる基準で,継続396名,新規544名のデータセットを作成し,分析を進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究計画にしたがって,第一に,1年目に実施した大規模web実験の分析を進めた。第二に,分析結果を踏まえて,2回めの大規模web実験のために,色字以外共感覚課題を大幅に修正した。さらに,普遍的な個人差要因を測定するのための新規の設問として,五感の鋭敏さや芸術などの得意な活動の回答を求める質問項目を作成した。第三に,前回の実験の参加者パネルと新規サンプルを用いた大規模web実験を行った。実験にあたっては前回の手法を踏まえたスクリーニングを行い,回答の信頼度の高い実験参加者を増やしたパネルを構成した。 また,共感覚に関連する論文,論考などを,学術雑誌,書籍に発表するとともに,学会で報告を行った。 以上の通り研究は順調に進んでいる
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今後の研究の推進方策 |
今後の方策は下記の3点である。 第一に,1年目と2年目におこなった大規模web実験の分析を進める。(a) 共感覚の特性を測定するために,Asano & Yokosawa(2011ほか)が開発してきた色字共感覚課題,色字以外共感覚課題, および普遍的個人差要因項目(年齢,男女,芸術分野の熟達化要因,五感の鋭敏さ,性格特性等),日常生活の共感覚経験を調べる共感覚バッテリー(Eagleman,2007)の改訂版に基づいて,共感覚のカテゴリを踏まえた分析を行う。(b)共感覚比喩理解容易性評定値と,色字共感覚と色字以外共感覚の実験内の短期的安定性,1-2年の長期的安定性,芸術分野の熟達化要因,日常的な共感覚経験との関係性を検討する。(c)共感覚者から非共感覚者に至る差異に影響する普遍的個人要因を検討する 第二に,1-2年目の実験に参加した参加者パネルを用いた大規模web実験の追跡研究をおこなう。色字共感覚簡易版安定性テスト,色字以外共感覚簡易版安定性質問紙,共感覚バッテリー(Eagleman,2007)の改訂版を用いて,1-3年の長期安定性を確認する。共感覚比喩理解課題については感覚動詞版,オノマトペ版を加えて拡張する。さらに,色字以外共感覚簡易版安定性質問紙,日常生活の共感覚経験を調べる共感覚バッテリーの修正を行い,より精度の高い評価項目にする。また,共感覚の個人差に影響する普遍的要因(性格特性,経験等)についての新規項目の検討をする。そして,共感覚と共感覚比喩の指標の関係性を,共感覚のカテゴリと方向性(近感覚→遠感覚,身体経験写像など)に基づいて検討する。 第三に,共感覚者を対象にしてこれまで大規模web実験で実施した課題を実験室またはwebで実施する。
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