研究課題/領域番号 |
23K20780
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補助金の研究課題番号 |
21H00967 (2021-2023)
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 基金 (2024) 補助金 (2021-2023) |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分10040:実験心理学関連
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研究機関 | 公益財団法人東京都医学総合研究所 |
研究代表者 |
菅原 翔 公益財団法人東京都医学総合研究所, 脳・神経科学研究分野, 主席研究員 (80723428)
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研究分担者 |
福永 雅喜 生理学研究所, 脳機能計測・支援センター, 特任教授 (40330047)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
17,680千円 (直接経費: 13,600千円、間接経費: 4,080千円)
2024年度: 2,340千円 (直接経費: 1,800千円、間接経費: 540千円)
2023年度: 2,340千円 (直接経費: 1,800千円、間接経費: 540千円)
2022年度: 3,250千円 (直接経費: 2,500千円、間接経費: 750千円)
2021年度: 9,750千円 (直接経費: 7,500千円、間接経費: 2,250千円)
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キーワード | 意欲 / 中脳 / 運動 / リアルタイムfMRI / 自己制御 / Realtime fMRI / 自発的制御 / 超高磁場MRI |
研究開始時の研究の概要 |
本研究課題では、「自発的な意欲は腹側中脳の自発的な活動水準として表現され、運動準備活動を高めることで身体運動を促進する」という仮説を立証するために、(1)腹側中脳の自発活動水準が直後の運動出力へ影響することを因果的に示し、(2)情動的なイメージを用いた自発的な腹側中脳の活動水準操作により、高揚感とともに運動出力を自己制御できることを明らかにする。これらの検証を通じて、腹側中脳が内発的な意欲を身体運動へと変換する重要な脳領域であることを因果的に証明し、腹側中脳活動の自己制御による意欲および身体運動の増強可能性を示す。
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研究実績の概要 |
本研究課題では、「自発的な意欲は腹側中脳の自発的な活動水準として表現され、準備活動を高めることで身体運動を促進できる」との仮説を立証するために、(1)腹側中脳の自発活動水準が後の運動出力へ影響することを因果的に示し、(2)情動的なイメージを用いた自発的な腹側中脳の活動水準操作により、高揚感とともに運動出力を自己制御できることを明らかにする。 2023年度は、情動的イメージによる運動出力向上を媒介する神経基盤を明らかにするため、これまでに取得したfMRIデータの解析を実施した。結果として、情動的イメージは背側運動前野、補足運動野、背内側前頭前野、線状体、小脳に加えて腹側中脳も賦活させた。さらに、情動イメージによって腹側中脳が強く賦活するほど、直後の運動パフォーマンスが高かった。これらの知見は、情動イメージが腹側中脳の賦活を介して、運動出力向上を導くことを示唆している。本成果について国内外の学会で報告し、現在国際誌への投稿を準備中である。 さらに、腹側中脳の賦活が運動出力向上を導くという因果関係をより明確に示すため、腹側中脳の活動を自発的に操作するfMRI neurofeedback実験を行なった。リアルタイムfMRIによって計測された腹側中脳活動を視覚刺激として参加者にフィードバックすることで、参加者は自発的に腹側中脳活動を高めることに成功した。さらに、腹側中脳活動を高める条件の直後に行う運動課題では、腹側中脳活動を変えないようにする条件に比べて、運動パフォーマンスが有意に高かった。以上の結果から、腹側中脳が直後の運動パフォーマンス向上について因果的役割を担うことが明らかになった。本成果は次年度の国際学会で発表予定である。これらの成果は腹側中脳の自発的制御により、運動出力を自分で高められることを示唆している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
これまでに情動的イメージおよびfMRI neurofeedbackにより腹側中脳活動を自発的に操作することで、運動出力を自発的に向上させられることを明らかにした。これらの成果は腹側中脳が運動出力向上において因果的役割を担うことを立証するとともに、運動出力を向上させる自己制御が可能であることを示唆している。情動的イメージは特別な機材を必要とせず、いつでもどこでも利用可能な自己制御方略であり、実社会に与えるインパクトは大きいと考えているfMRI neurofeedbackという方法を用いて腹側中脳の活動を自己制御できることは、先行研究でも報告されている。しかし、腹側中脳のfMRI neurofeedbackが持つ機能的意義については不明であった。腹側中脳のfMRI neurofeedbackにより運動出力を向上させられるという本研究課題の成果は、fMRI neurofeedbackによる脳深部核の非侵襲的操作が機能的意義を持つことを示す重要な知見である。これらの学術的及び実社会的意義も踏まえ、「おおむね順調に進展している」という自己評価を行った。
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今後の研究の推進方策 |
本研究課題で残された項目は、「腹側中脳の自発活動」が運動出力へどのような影響を与えるかを因果的に検証することである。脳深部核の自発活動を非侵襲的に計測することは難しく、高い計測感度が必要である。そのため、7テスラMRI装置を用いたRealtime fMRI計測系を準備を進めてきた。2024年度は、この7テスラMRI装置でのRealtime fMRI系を用いて、自発的活動水準をベースに運動課題を課すClosed-loop実験を実行する。腹側中脳の自発的活動水準が高い時と低い時に運動を実行させることで、自発活動水準が運動出力へ与える因果的効果を立証する。 また、2024年度が最終年度であることから、これまでに得られた成果を論文としてまとめることに注力する。情動的イメージによる運動出力向上に関する成果は、年度内に国際学術誌に掲載することを目指す。fMRI neurofeedbackを用いた成果についても、国際学術誌へ投稿できる段階まで進める予定である。
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