研究課題/領域番号 |
23K20795
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補助金の研究課題番号 |
21H00982 (2021-2023)
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 基金 (2024) 補助金 (2021-2023) |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分11020:幾何学関連
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研究機関 | 信州大学 |
研究代表者 |
栗林 勝彦 信州大学, 学術研究院理学系, 教授 (40249751)
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研究分担者 |
境 圭一 信州大学, 学術研究院理学系, 教授 (20466824)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
13,520千円 (直接経費: 10,400千円、間接経費: 3,120千円)
2025年度: 3,250千円 (直接経費: 2,500千円、間接経費: 750千円)
2024年度: 2,860千円 (直接経費: 2,200千円、間接経費: 660千円)
2023年度: 2,860千円 (直接経費: 2,200千円、間接経費: 660千円)
2022年度: 2,340千円 (直接経費: 1,800千円、間接経費: 540千円)
2021年度: 2,210千円 (直接経費: 1,700千円、間接経費: 510千円)
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キーワード | ストリングトポロジー / ディフェオロジー / 微分代数モデル / Cartan カルキュラス / de Rham ホモトピー / 開閉位相的場の理論 / 弦作用素 / ループ積 |
研究開始時の研究の概要 |
写像空間は幾何学の研究において様々な場面に登場し,トポロジーの研究においても,その重要性を増している。一次元球面や2次元曲面を定 義域空間としてもつ写像空間,すなわち自由ループ空間やその一般化空間のホモロジーには,値域空間が多様体である場合 Chas--Sullivan の ストリングトポロジーが付随する。本研究では,値域空間を Lie 群の分類空間や可微分スタックに置き換えることで,ストリングトポロジー が引き起こす2次元開閉位相的場の理論を考察し,理論に現れる弦作用素の非自明性を検証する。そのために,スペクトル系列の構築やパラメ トライズド有理ホモトピー論をディフェオロジカル空間上で展開する。
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研究実績の概要 |
ストリング作用素に関する非自明性の研究に関して,共同研究者(山口俊博(高知大学),内藤貴仁(日本工業大学),若月駿(学振PD,信州大学)との共同研究により大きな進展があった。Mを単連結閉多様体とする時,LMを自由ループ空間,すなわち一次元球面からMへの連続写像が作る写像空間とする。このとき,LMには定義域の回転により一次元球面が作用し,このBorelホモロジーをMのストリングホモロジーという。このホモロジーはChas-SullivanによりLie代数の構造が導入されているが,このLie積(ストリング積)の具体的な計算は,ループ積の計算に比べて必ずしも十分に行われているとはいえない。 (コ)ホモロジーの係数体の標数が0である場合には有理ホモトピー論が適応できる。この枠組みにおいて,LMの簡約コホモロジー上の簡約Batalin-Vilkovisky (BV)作用素が完全であるとき,MはBV-完全と定義し,その性質を共同研究で探ってきた。一つの結果として,MがBV-完全であるときにLie積である上述のストリング積をLMのホモロジー上の(結合法則をみたす)ループ積とBV-作用素で記述する方法を確立した。その記述においては,ストリングコホモロジーとループコホモロジーをそれぞれ,Mの有理de Rham複体の巡回的ホモロジーとHochschildホモロジーに置き換えることにより,山口氏との共同研究[KY]で得られた加法的K-理論の結果に帰着させる手法が適用されている。これらの結果はプレプリント(arXiv:2109.10536 [math.AT])としてまとめられ,arXivで公開されている。
[KY] K .Kuribayashi and T. Yamaguchi, On additive K-theory with the Loday--Quillen *-product, Math. Scand. 87 (2000), 5-21.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
ループホモロジー上のBV-作用素Δの2回合成は自明であるから,BV-完全の幾何学的な意味付けも重要になる。現在までにその完全性に関するいくつかの結果を得ている。たとえば,空間のフォーマル性との関連である。空間Mの有理ホモトピー型が有理係数コホモロジーで決まる場合「Mはフォーマル」であるという。また単連結空間MのSullivanモデルの元に正の重みが与えられ,その重みが微分に関して保たれるとき「Mは正の重みを持つ」という。この性質と上記,BV-完全の間には次の関係があることも明らかにしている:「Mはフォーマル ==> Mは正の重みを持つ ==> MはBV-完全」 さらに,BV 完全性と同値な条件をストリングコホモロジーの言葉で記述することにも成功している。実際,Borelファイブレーションの射影が誘導する一次元球面の分類空間のコホモロジーのMのストリングコホモロジーへの作用をSとするとき,「MはBV-完全 ==> MのストリングコホモロジーへのS-作用は自明」という結果も得ている。また,Mのストリングコホモロジーに収束するEilenberg--Mooreスペクトル系列 (EMSS)とMのBV-完全性も関連することがわかってきた。実際,そのEMSSは非負の整数で添字付けられた部分スペクトル系列{SS_i}の直和に分解する。このとき,0次の部分スペクトル系列SS_0が2項で潰れることとBV-完全性が同値であることも示した。 分担者と鳥居 猛氏(岡山大学)と共に研究集会「空間の代数的・幾何的モデルとその周辺」を開催し,本研究内容とHochschild(コ)ホモロジーを通した代数的概念との関係も探った。コロナ禍のため国際研究集会の計画が滞っている。情報収集・議論に関する研究集会の開催部分のマイナス面があったとしても,上述の研究の進展内容から「当初の計画以上に進展している」と判断した。
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今後の研究の推進方策 |
多様体Mに関する古典的なCartanカルキュラスはCartanマジック公式を含む,M上のベクトル場とLie微分,外微分,内部積に関する関係式の総称として捉えることができる。Fiorenza--Kowalzigにより,こうした等式と同様の関係式が微分(Lie)代数の世界で定式化されている。この枠組みでLMに関するCartanカルキュラスの構築を今後の研究目標としている。実際,様々なストリング作用素の間の関係式を明確にすることは,個々の作用素の非自明性の検証研究において鍵になると考えるからである。 Connesの結果から多様体M上の微分可能関数が作る代数の連続HochschildコホモロジーはConnes B-写像との対でMのde Rham複体と考えることができる。従って,さらにHochschildホモロジーをMのde Rham複体に適用して,``第2段Cartanカルキュラス''を構築することは自然な流れであろう。問題はベクトル場が作るLie代数の代わりに第2段Cartanカルキュラスにおいては何を用意するかであるが,これに関してはMのde Rham複体のAndre--Quillenコホモロジーが相応しいであろうと考えている。実際,山口俊博(高知大学),内藤貴仁(日本工業大学),若月駿(学振PD,信州大学)との共同研究で,Lie微分と内部積に相当する作用をこの枠組みで手に入れることができている。Mのde Rham複体のHochschildホモロジーを自由ループ空間LMのコホモロジーと同一視することで,LM上でのCartanカルキュラスの体系を整えるとともにそこに現れる作用素,演算子の具体的計算を進める計画である。加えて,本研究推進のためにストリングトポロジーに関連するセミナーや国際研究集会を開催する計画である。
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