研究課題/領域番号 |
23K20801
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補助金の研究課題番号 |
21H00988 (2021-2023)
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 基金 (2024) 補助金 (2021-2023) |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分12010:基礎解析学関連
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
楠岡 誠一郎 京都大学, 理学研究科, 教授 (20646814)
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研究分担者 |
星野 壮登 大阪大学, 大学院基礎工学研究科, 准教授 (20823206)
永沼 伸顕 熊本大学, 大学院先端科学研究部(工), 准教授 (60750669)
伊藤 悠 京都産業大学, 理学部, 准教授 (70779214)
田口 大 関西大学, システム理工学部, 准教授 (70804657)
河備 浩司 慶應義塾大学, 経済学部(日吉), 教授 (80432904)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
16,900千円 (直接経費: 13,000千円、間接経費: 3,900千円)
2025年度: 3,770千円 (直接経費: 2,900千円、間接経費: 870千円)
2024年度: 3,770千円 (直接経費: 2,900千円、間接経費: 870千円)
2023年度: 3,770千円 (直接経費: 2,900千円、間接経費: 870千円)
2022年度: 3,380千円 (直接経費: 2,600千円、間接経費: 780千円)
2021年度: 2,210千円 (直接経費: 1,700千円、間接経費: 510千円)
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キーワード | 特異確率偏微分方程式 / 確率微分方程式 / 確率量子場モデル / マリアヴァン解析 / ディリクレ形式 / 構成的場の理論 / 確率量子化 / マルコフ過程 / ラフパス理論 / 確率偏微分方程式 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究は、近年急速に発展をしている特異確率偏微分方程式の手法を用いて、確率解析学の新たな発展を目指すものである。特に、特異確率偏微分方程式の手法は繰り込みを伴う方程式の解析を可能にするため、量子力学に現れる確率量子場モデルにおける問題に対し、強力な研究手法となる。 特に本研究では物理学においても重要なΦ4確率量子場モデルとこれに関係すると言われる自己交差による相互作用をもつポリマー測度についての研究を主に行う。
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研究実績の概要 |
2023年度は主に自己交差相互作用をもつ3次元ポリマー測度と対応するディリクレ形式の構成に関する研究を行った。Bolthausen氏によって構成されたポリマー測度に対応するディリクレ形式の構成は証明が完成し、この研究成果を論文としてまとめ学術雑誌に投稿した。これに関しては関連する既存のプレプリントが存在したものの、完全な証明がなされていなく、未解決問題となっていたものであり、この研究において解決した。また、Bolthausen氏の構成とは異なる構成とそれに対応するディリクレ形式の構成についての研究も精力的に行った。これはより自然と思われる近似列を用いてポリマー測度と対応するディリクレ形式を構成するというものである。Bolthausen氏は2つのパラメータを用いて近似を行ってポリマー測度の構成を行っているが、新しい近似では1つのパラメータしか用いない。また、将来的にポリマー測度の確率量子化などの問題に取り組むことを見越した近似でもある。この場合は既存の構成とは異なる計算が現れるため全ての計算を改めて行うことになるが、1つの評価を除いて新しい計算方法により必要な評価を得ることができた。残りの1つの評価については今後引き続き研究を行う。 その他にも、3次元Φ4測度の自由測度に対する特異性の研究、ドリフト付きブラウン運動のスケール極限と正規分布の分布間の距離の評価の研究、ハミルトン-ヤコビ-ベルマン方程式の解の存在と一意性に対する確率解析的アプローチに関する研究などを行った。これらは本研究課題に関連して学生や他研究者と共同研究をしているものである。これらは既にアイデアは得られているものの、まだ最終的な結論に至っていなく、引き続き研究を行う。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2022年度は共同研究者であるドイツのボン大学名誉教授のAlbeverio氏と研究打ち合わせができず、予算の繰越を行っていたが、2023年度にドイツのボン大学を訪れてAlbeverio氏の研究メモのコピーをとるなどにより、3次元ポリマー測度の歴史的背景や関連する文献などについて情報を得ることができた。また、同時に2023年度の研究計画にあったBolthausen氏によって構成されたポリマー測度に対応するディリクレ形式の構成は証明が完成したため、予定通りこの研究成果を論文としてまとめることができた。 また、既存の構成とは異なる3次元ポリマー測度とそれに対応するディリクレ形式の構成についても、熱核の畳み込みに関する計算などを経て、1つの評価を除いて全て目標を得ることができた。既に完成した部分から3次元ポリマー測度と対応するディリクレ形式の構成はできるのであるが、構成に現れる近似列が部分列をとることなく収束するかについては、残りの1つの評価が必要である。そのため今後も残り1つの評価を証明することに取り組むが、その他の計算が全て完成したことは大きな進展である。 さらに本研究課題と関連して取り組んでいる、3次元Φ4測度の自由測度に対する特異性の研究、ドリフト付きブラウン運動のスケール極限と正規分布の分布間の距離の評価の研究、ハミルトン-ヤコビ-ベルマン方程式の解の存在と一意性に対する確率解析的アプローチに関する研究などは、当初は予想していなかった方向への進展である。これらの関連する研究は、学生や他研究者の協力により進んでいるもので、近々研究成果としてまとめられると期待している。 以上のような理由から、本研究課題はおおむね順調に進展していると言える。
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今後の研究の推進方策 |
今後はまず、自己交差相互作用をもつ3次元ポリマー測度と対応するディリクレ形式の構成について、既存のものとは異なる新しい近似による構成を完成させるための研究を行う。具体的には残り1つの評価を示すことを目標とするのであるが、これまでの考察では、この評価は既存の手法と同様に示すことができず、新しい計算手法が必要なことも分かっている。この部分について明確になり次第、この成果についても論文としてまとめる予定である。 さらに、3次元ポリマー測度に対する確率量子化方程式を特異確率偏微分方程式で記述し、これに対して解を構成することにより対応する確率過程を構成できるかについても研究を行う。既にディリクレ形式の構成はできているため、抽象論によるマルコフ過程の構成はできている。しかし、特異確率偏微分方程式の解としてそのマルコフ過程を記述できると、その確率過程のより詳細な性質を調べることができ、このポリマー測度の解析に役立つと考えられる。これについても研究を行う。 また、研究途中である関連する話題についても研究を行う。3次元Φ4測度の自由測度に対する特異性の研究については、学生の協力により既に研究成果をまとめる段階にある。この研究でのアイデアがどの程度一般的な状況で有効であるかを考察し、出来る限り一般形で主張を記述する予定である。また、ドリフト付きブラウン運動のスケール極限と正規分布の分布間の距離の評価の研究については、アイデアは出ているもののそれを証明するための計算がまだ終わっていないため、引き続き計算を行う。ハミルトン-ヤコビ-ベルマン方程式の解の存在と一意性に対する確率解析的アプローチに関する研究は、卒業生と行った研究であるが、論文としてまとめるためにはより洗練された形で議論する必要があり、これについても研究を行いたいと考えている。
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