研究課題/領域番号 |
23K20822
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補助金の研究課題番号 |
21H01027 (2021-2023)
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 基金 (2024) 補助金 (2021-2023) |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分13030:磁性、超伝導および強相関系関連
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研究機関 | 茨城大学 |
研究代表者 |
大山 研司 茨城大学, 応用理工学野, 教授 (60241569)
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研究分担者 |
林 好一 名古屋工業大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (20283632)
金子 耕士 国立研究開発法人日本原子力研究開発機構, 原子力科学研究部門 原子力科学研究所 物質科学研究センター, 研究主幹 (30370381)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
17,550千円 (直接経費: 13,500千円、間接経費: 4,050千円)
2024年度: 2,470千円 (直接経費: 1,900千円、間接経費: 570千円)
2023年度: 2,990千円 (直接経費: 2,300千円、間接経費: 690千円)
2022年度: 2,470千円 (直接経費: 1,900千円、間接経費: 570千円)
2021年度: 9,620千円 (直接経費: 7,400千円、間接経費: 2,220千円)
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キーワード | カゴ状化合物 / 希土類ホウ化物 / 中性子ホログラフィー / J-PARC / カゴ状物質 / 希土類磁性 / 蛍光X線ホログラフィー / カゴ状希土類化合物 / 籠状物質 / 中性子・X線 / ホログラフィー / 原子ゆらぎ / 局所構造・超秩序構造 / スクッテルダイト / 孤立揺らぎ / 原子分解能ホログラフィー / 局所構造 |
研究開始時の研究の概要 |
申請者が世界で初めて実用化した白色中性子ホログラフィーを用いて、ドーパント誘起超秩序構造での軽元素挙動や合金での超秩序構造の解明を目指す。そのためにすでに準備ずみの高分解能検出器を用いて高分解能多検出器測定系を大強度陽子加速器施設J-PARC(茨城県)に導入する。これにより観測可能なドーパントを拡大し、軽元素が関連する超秩序構造の可視化が可能になる。特にPd単結晶での水素挙動の観測とFeCo合金の超秩序構造の観測に挑戦する。本研究は世界的にも申請者のみが実現可能であり、軽元素が関連する超秩序構造を解明する最も直接的な手法であることから、世界的に見ても独自性をもつ。
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研究実績の概要 |
新奇物性の発現には、異元素(ドーパント)の微少量添加(ドープ)で物性を制御することが多く、その場合、格子中で孤立しているドーパントとその周囲の原子構造(局所構造)の静的、動的挙動が、マクロ物性理解の鍵となる。とくに重点スクッテルダイトで代表されるカゴ状物質では、そのカゴ中にある希土類原子の奇妙な振る舞いがマクロ物性に大きな影響を与えることがわかっており、エキゾチックな物性として活発に研究されている。しかし、孤立したドーパントの直接可視化する観測手法はごく限られており、これまでの物性研究では微視的な構造でも平均構造として理解する傾向が強いため、ドーパント挙動の理解はその重要性にも関わらず不十分であった。申請者らは、ドーパント添加が起こす構造変化、すなわち局所構造変化の新しい観測法として白色中性子ホログラフィーを実用化し、軽元素での局所構造の高精度の研究を世界で初めて可能にした。この中で、代表的強相関電子系SmB6, CeB6を含むRB6(R:希土類)において、Smを2%ドープしたYbB6において、Smロープにより、Smに隣接するBカゴが特異な揺らぎを示すことを明らかにし、論文に発表した。本研究ではこの現象をうけて、孤立しているドーパントと局所構造の動的な揺らぎを評価するという新たな視点をもってマクロ物性との関連を解明する。異元素ドープが新奇物性を引き起こす系として、新奇超伝導など多彩な物性を示すカゴ状構造物質でのカゴ中のドーパント挙動に注目する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
令和4年度には、計画通り中性子ホログラフィー対応の吹き付け式試料冷凍機の実装にむけた試験を行った。これは100K程度に試料を冷却できる装置で、これにより室温で発見された原子の動的な揺らぎ、ないし静的な分布による原子像強度の低下に対し、低温での原子像と比較することで、その起源が静的なものか動的なものかを判断でき、本研究の目的を達成する環境がととのった。また、理想的な実験実現のため、11B同位体を用いた純良単結晶の育成にも成功した。これにより令和5年度での実験実施の準備がほぼととのった。さらに解析能力を高めるために高速のコンピューターを導入した結果、これまでの10倍のスピードで解析が可能となった。また、平行して進めている中性子ホログラフィーでの計測効率の向上を目的とする多検出器系の遮蔽の最適化を日本原子力研究機構の協力を得て進めた結果、実質的に従来の10倍の効率向上が可能になった。 これらのことから、おおむね順調に進展していると判断している。
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今後の研究の推進方策 |
令和4年度の進展をうけ、令和5年度には本格的に低温実験を行う。すでにマシンタイムは確保している。試料は理想的な実験を行うため、中性子吸収の弱い11B同位体を用いた純良試料、SmドープYb11B6を用いる。すでに直径6mm長さ20mmの試料を用意してある。一つの試料で、室温と低温での中性子ホログラフィー実験を行い、Smに隣接するBの揺らぎの変化を観測することで、室温で観測されているBの揺らぎが静的な分布なのか、熱的な揺らぎなのかを判断できる。これは軽元素に関しては世界初の試みである。
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