研究課題/領域番号 |
23K20834
|
補助金の研究課題番号 |
21H01058 (2021-2023)
|
研究種目 |
基盤研究(B)
|
配分区分 | 基金 (2024) 補助金 (2021-2023) |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分14010:プラズマ科学関連
|
研究機関 | 核融合科学研究所 |
研究代表者 |
吉村 信次 核融合科学研究所, 研究部, 准教授 (50311204)
|
研究分担者 |
寺坂 健一郎 崇城大学, 情報学部, 准教授 (50597127)
荒巻 光利 日本大学, 生産工学部, 教授 (50335072)
|
研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
|
研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
|
配分額 *注記 |
17,550千円 (直接経費: 13,500千円、間接経費: 4,050千円)
2024年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2023年度: 4,030千円 (直接経費: 3,100千円、間接経費: 930千円)
2022年度: 4,030千円 (直接経費: 3,100千円、間接経費: 930千円)
2021年度: 7,930千円 (直接経費: 6,100千円、間接経費: 1,830千円)
|
キーワード | トポロジカル光波 / 光渦 / レーザー誘起蛍光法 / プラズマ / 流れ / レーザー計測 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究は,従来の平面波光の代わりにトポロジカル光波と呼ばれる特殊な光の一種である光渦ビームをその強度・位相分布を能動的に制御して用いることで,これまで原理的に測ることが不可能であったビームを垂直に横切るプラズマ(イオン)の流れ計測を実現することを目指している.これにより,磁化プラズマの境界面へのイオンの流入を装置配位に制限されることなく詳細に調べられるようになり,エッチング・薄膜形成といったプラズマ応用プロセスへの展開も期待される.
|
研究実績の概要 |
本研究の目的は、従来の平面波光を用いたレーザードップラー分光では原理的に不可能なレーザーの進行方向に垂直なイオン・中性粒子の流れ速度計測を、トポロジカル光波と呼ばれる特殊な光の一種である光渦(ラゲールガウスビーム)を用いたレーザー誘起蛍光(LIF)法によって実現することである。光渦がもつ螺旋状の等位相面のため、方位角方向の速度成分にもドップラー効果が働くことが理論的に示されており、実験による検証が進められている。 本年度は、ビームを横切る流れの効果がLIFスペクトルの周波数シフトとして観測されることが予想される方位角方向に強度の非対称性をもつ光渦(非対称光渦)ビームを用いたLIF法の検討を理論・実験の両面から行った。 非対称ラゲールガウスビームを用いた場合、LIFスペクトルの周波数シフトは非対称パラメータ、ビームウエストでの強度分布およびビームサイズ、ビームを横切る流れの速さに依存する。また、Gouy位相の効果によって、伝播とともに強度分布が回転する。これらの効果を数値計算により評価し、非対称光渦LIF法がビームを横切る流れの計測に対して非常に有効な方法であることを示した。この結果について、現在、成果論文を投稿中である。 実験では空間光変調器へのレーザー光の入射位置を制御することで、非対称光渦ビームを生成することに成功した。また、伝播に伴う強度分布の回転が理論計算と一致することをビームプロファイラを用いた直接計測で示した。核融合科学研究所のHYPER-I装置で生成したプラズマ中にトポロジカルチャージ50の非対称光渦ビームを入射する初期実験を行った結果、トポロジカルチャージの符号の違いによってLIFスペクトルの周波数シフトが変化する結果が初めて得られた。この成果について、学会・国際会議で口頭発表を行った。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
昨年度までの対称な強度分布をもつ光渦ビームに強度非対称性をもたせた場合の効果について、理論・実験の両面から検討を行うことができた。数値計算による結果から、非対称光渦ビームを用いた場合、LIFスペクトルの周波数シフト量をビームウエストにおける最大強度位置で制御できることが期待される。また、このシフト量は伝播に伴って強度分布が回転しても変化しないことが示された。希薄なプラズマ中でのLIF計測では、ビーム内の準安定粒子数の少なさが計測を難しくする場合があるが、ビームウエストから離れた場所でも同様の計測が可能となれば、相対的な準安定粒子数を増やすことができる。本研究の進捗によって、対称な光渦ビームから非対称光渦ビームへと発展させることで、ビームを横切る流れのより定量的な計測が可能となる。非対称光渦ビームを用いることは当初計画していなかったが、今年度の研究成果から、非対称光渦ビームを用いることの優位性が示された。
|
今後の研究の推進方策 |
2022年度は、トポロジカルチャージ50の非対称光渦ビームを用いたLIFスペクトル計測実験を行ったが、今後はより高次のトポロジカルチャージをもつ非対称光渦ビームの生成にも挑戦する。研究分担者が九州大学で行った予備実験では、トポロジカルチャージ100の光渦ビームの生成に成功している。トポロジカルチャージを大きくすることでビームウエストでのビームサイズは大きくなるものの、結果としてLIFスペクトルの周波数シフト量を増加させることができるため、よりノイズに強い計測が可能となることが期待される。実験では、核融合科学研究所のHYPER-I装置のフランジを改良して、スパッタリングによる観測窓への影響を低減させることができている。これにより、2023年度は、より高いS/NでのLIFスペクトル計測によって、世界初の非対称光渦ビームを用いたビームを横切る流れ速度の定量的計測を目指す。最終的には、ビームウエストでの強度分布を制御することで、単一光路での3次元速度ベクトル計測へと発展させたい。 HYPER-I装置で生成されるプラズマの磁力線方向の流れ速度を増加させるため、磁場配位の変更も行う。これにより、磁場配位がイオンの流れに与える影響も間接的に研究できるようになる。非対称光渦ビームを用いた単一光路での3次元流速ベクトル計測が可能となれば、プラズマ推進器などの応用分野への波及効果も期待される。
|