研究課題/領域番号 |
23K20844
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補助金の研究課題番号 |
21H01081 (2021-2023)
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 基金 (2024) 補助金 (2021-2023) |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分15010:素粒子、原子核、宇宙線および宇宙物理に関連する理論
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
樽家 篤史 京都大学, 基礎物理学研究所, 准教授 (40334239)
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研究分担者 |
西道 啓博 京都産業大学, 理学部, 准教授 (60795417)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
16,770千円 (直接経費: 12,900千円、間接経費: 3,870千円)
2024年度: 4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2023年度: 4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2022年度: 4,420千円 (直接経費: 3,400千円、間接経費: 1,020千円)
2021年度: 2,990千円 (直接経費: 2,300千円、間接経費: 690千円)
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キーワード | 宇宙論 / 宇宙の大規模構造 / ダークマター / ダークエネルギー / 銀河サーベイ / 銀河の固有形状 / 一般相対論 / 宇宙の構造形成 / 標準宇宙モデル |
研究開始時の研究の概要 |
本研究では、大規模な銀河サーベイからもたらされる無数の遠方銀河からなる観測データの中でも、これまで宇宙論の研究で用いられてこなかった観測情報、具体的には、銀河固有の形状と分光観測から得られる重力赤方偏移を用いた研究を目指している。これらを宇宙論の情報を有する新奇なシグナルとして活用する手段を開発することで、(1) 従来の手法と組み合わせてより精度が高い宇宙論の検証を行うとともに、(2) 従来では難しかった新しい検証手段を確立、観測へ応用することで、現在標準と思われている宇宙モデルの綻びをあぶり出すことが、本研究の最終ゴールである。
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研究実績の概要 |
代表者・樽家は、スローンデジタルスカイサーベイの延長観測プロジェクト extended Baryon OScillation Spectroscopic Survey の最終カタログを用いた宇宙論データ解析に外部共同研究者として参画、2種類の銀河サンプルを組み合わせたマルチトレーサー解析から、赤方偏移0.7と0.845の高赤方偏移宇宙での宇宙膨張と構造の成長率の測定に成功した。なお、解析では、代表者が開発した赤方偏移空間ゆがみの摂動論的理論モデルが、理論テンプレートとして使われたが、この理論モデルを駆使することで、構造の成長率の測定時に問題となっていたパラメータの縮退が解けることを定量的に示し、将来観測での有用性を明らかにした。加えて、代表者・樽家は、新奇観測プローブである銀河の固有形状について、長距離空間相関に現れる広角度効果を定量的に予言する解析表式の導出に成功、広角度効果のインパクトを明らかにした。さらに、観測領域を凌駕する波長スケールのゆらぎ(スーパーサーベイモード)による形状相関の影響を解析的に見積もる手法を導出した。
一方、分担者・西道は、高解像度の宇宙論的N体シミュレーションをもとに、高次元の宇宙論パラメータ空間の探索を可能とするエミュレータ開発を進め、ニュートリノ質量がゼロでない宇宙に現れる銀河バイアスのスケール依存性の特徴的ふるまいについての定量化を行なった。さらに、Baryon OScillation Spectroscopic Survey のアーカイブデータを使った宇宙論パラメータ解析に参画、分担者が作成した模擬銀河カタログを使って有効場理論にもとづくパワースペクトル、バイスペクトルのテンプレートの性能評価を行い、それを踏まえて実データから宇宙論パラメータの高精度測定に成功した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度は、代表者が中心となり、新奇観測プローブの理論的基盤の整備を目標に研究を進めてきたが、解析的な取り扱いにもとづく系統効果に関する研究は、概ね、問題となる影響を調べ尽くすことができた。また、分担者は、宇宙論的N体シミュレーションにもとづくエミュレータ開発を推進し、新奇観測プローブの数値モデリングにも利用可能なデータベースの作成が進めることができた。これに加えて、これまで代表者、分担者が開発した手法や理論モデルを既存の観測データへ応用することで宇宙論的な制限が得られるなど、予想を超える成果も得られている。これらは、従来の観測プローブをベースにした共同研究による成果ではあるが、共同研究ネットワークを拡充することができ、本課題に関連する有益な情報も得られた。コロナ禍で人的交流が制限された中で、海外研究協力者との対面の打ち合わせは延期せざるをえなかったが、zoomなどのオンラインツールを活用することで議論を続け、一定の成果を挙げることができた。加えて、研究員の雇用も行うことで、次年度以降に進める研究の組織的な準備なども進行している。総じて、おおむね順調といえる。
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今後の研究の推進方策 |
本年度の理論的成果をもとに、次年度以降はより実用性の高い研究を進めていく。具体的には、数値シミュレーションによる銀河の模擬カタログ作成とそのカタログにもとづく新規観測プローブ(銀河の固有形状の相関と観測的相対論効果)の数値的なモデリング、観測的な系統効果の定量的見積もりである。こうした研究は、本研究経費による雇用研究員が中心になり、分担者の手助けの下、進めていく。具体的には、海外の研究協力者とも協力しつつ、高解像度N体シミュレーションを駆使した模擬カタログを作成する。一方、新奇観測プローブの理論的研究としては、理論テンプレート計算の高速化と最適な解析手法の開発が課題として残されている。こちらは、代表者と分担者が、国内の研究協力者と連携を取りつつ、順次進めていく。
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