研究課題/領域番号 |
23K20845
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補助金の研究課題番号 |
21H01082 (2021-2023)
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 基金 (2024) 補助金 (2021-2023) |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分15010:素粒子、原子核、宇宙線および宇宙物理に関連する理論
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研究機関 | 金沢医科大学 (2023-2024) 大阪公立大学 (2022) 大阪市立大学 (2021) |
研究代表者 |
佐合 紀親 金沢医科大学, 一般教育機構, 講師 (50540291)
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研究分担者 |
藤田 龍一 追手門学院大学, 共通教育機構, 准教授 (50816626)
中野 寛之 龍谷大学, 法学部, 教授 (80649989)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
12,480千円 (直接経費: 9,600千円、間接経費: 2,880千円)
2025年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
2024年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2023年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2022年度: 2,470千円 (直接経費: 1,900千円、間接経費: 570千円)
2021年度: 5,980千円 (直接経費: 4,600千円、間接経費: 1,380千円)
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キーワード | ブラックホール / 大質量比連星 / ブラックホール摂動 / 重力波 / 理論波形 |
研究開始時の研究の概要 |
ブラックホールの精密観測時代において、一般相対論の検証やブラックホール形成シナリオの解明など、物理学・天文学に大きなインパクトを与える成果が期待される。本研究では、銀河中心の大質量ブラックホールとその周辺を運動する恒星由来のコンパクト天体から放射される重力波を考え、銀河中心ブラックホールの情報を正確に引き出す手法を構築する。重力波信号から情報を最大限に引き出すため、ブラックホール摂動法で導出される理論波形の精度向上を目指し、どのレベルまで一般相対論を検証できるのか明確にする。また、データ解析で実用可能な理論波形を提供するため、波形生成の効率化や利便性の向上を目指す。
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研究実績の概要 |
本研究では、宇宙重力波望遠鏡LISAの有望な重力波源のひとつである大質量比連星合体(EMRI)に注目する。カーブラックホール時空を運動する粒子でEMRIをモデル化し、ブラックホール摂動法を用いてEMRIの軌道進化と放出される重力波波形を導出する。粒子に働く自己力の永年効果を含めた運動方程式から軌道進化を計算し、粒子に対するエネルギー運動量テンソルを構成する。これに起因する重力場摂動は、カー時空における摂動を記述するTeukolsky方程式から導出することを目指す。 令和4年度までに、低速度、低離心率近似に基づく軌道の永年進化と重力場摂動の解析的近似公式を用いたEMRI重力波波形モデルを構築し、数値計算コードに実装した。実装したコードの計算結果を基に、解析的波形モデルの数値精度、適用可能な軌道パラメータ領域を明らかにした。令和5年度には、解析的波形モデルの数値精度と適用可能範囲を改善するため、より高次の近似公式の導出や計算の効率化などを進めた。その成果として、軌道の永年進化と重力場摂動の近似公式をポストニュートン展開6次精度まで、離心率展開16次精度まで導出することに成功した。低離心率近似を用いない計算手法についても検討を進め、現在、ポストニュートン展開の2.5次精度までの計算が完成に至っている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
令和5年度は、研究代表者の異動があり、異動先で研究環境を整えるまでに時間が必要となった。軌道の永年進化と重力場摂動の近似公式について、高次補正項の導出までは完了したが、その収束性や適用可能なパラメータ範囲の評価、波形モデルへの実装を行うまでには至らなかった。 一方で、一般相対論の検証の観点から、相対論自身は正しいと仮定しブラックホールのまわりに存在する物質などの周辺環境が、ブラックホールの性質に及ぼす影響の議論を進めた。今後、この影響はEMRI重力波モデルに組み込まれることとなる。 以上を踏まえて、現在の達成度は「やや遅れている」とした。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、前年度までに完了した計算結果を基に、高次補正の効果をEMRI重力波モデルに組み込み、波形計算コードへの実装を進める。また、数値的手法による計算結果との比較や展開係数を用いた収束半径の見積もりなどから、近似公式の収束性と適用可能なパラメータ範囲を評価する。この解析から導かれる系統誤差は、重力波観測による相対論の検証を議論する際に重要となる。 低離心率近似を用いない計算手法はポストニュートン展開の2.5次精度まで完成しており、より高次の計算に向けて引き続き取り組む。
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