研究課題/領域番号 |
23K20853
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補助金の研究課題番号 |
21H01098 (2021-2023)
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 基金 (2024) 補助金 (2021-2023) |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分15020:素粒子、原子核、宇宙線および宇宙物理に関連する実験
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研究機関 | 国立研究開発法人日本原子力研究開発機構 |
研究代表者 |
浅井 雅人 国立研究開発法人日本原子力研究開発機構, 原子力科学研究所 先端基礎研究センター, 研究主幹 (20343931)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
17,680千円 (直接経費: 13,600千円、間接経費: 4,080千円)
2024年度: 390千円 (直接経費: 300千円、間接経費: 90千円)
2023年度: 5,460千円 (直接経費: 4,200千円、間接経費: 1,260千円)
2022年度: 2,340千円 (直接経費: 1,800千円、間接経費: 540千円)
2021年度: 9,490千円 (直接経費: 7,300千円、間接経費: 2,190千円)
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キーワード | 核分裂 / アインスタイニウム / メンデレビウム259 / ローレンシウム259 / 波高欠損 / メンデレビウム258 / 重アクチノイド |
研究開始時の研究の概要 |
中性子過剰重アクチノイド核領域では、2つの核分裂片の質量が等しい対称核分裂と質量が異なる非対称核分裂が競合する極めて特異な核分裂現象が観測される。これらの競合のメカニズムを明らかにすることは核分裂現象自体の解明に重要な知見を与える。本研究では、合成が極めて困難な中性子過剰重アクチノイド核を、99番元素アインスタイニウムに加速器からの重イオンビームを照射することで合成し、核分裂片の質量-TKE分布を測定する。対称及び非対称核分裂の競合割合やそれらの質量-TKE分布から、対称及び非対称核分裂がどのようなメカニズムで起こるのかを解明する。
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研究実績の概要 |
中性子過剰Fm同位体では、自発核分裂片の質量分布が非対称分布から対称分布へと突然変化する極めて特異な物理現象が観測される。本研究では、合成が極めて困難な中性子過剰Fm領域核を、半減期276日のEs-254標的に重イオンビームを照射することで合成し、対称・非対称分裂それぞれにおける質量分布と全運動エネルギー(TKE)分布の相関、並びにそれらの励起エネルギー依存性を測定することで、対称・非対称核分裂それぞれにおける分裂核の変形状態や障壁ポテンシャル構造を明らかにし、この領域の特異な核分裂現象の発生メカニズムを解明することを目的とする。 令和5年度は、非対称核分裂とTKEの高い対称核分裂、TKEの低い対称核分裂の3種類の核分裂成分が同時に観測されるLr-259の自発核分裂測定を実施した。Lr-259については過去に我々が測定を行ったデータがあるが、統計量が少なく、特にTKEの低い対称核分裂の質量-TKE分布の形状が明確でなかった。過去の統計量が266事象であったのに対し、今回合計で約3倍の統計量を蓄積することができた。また、核分裂片を測定するSi検出器の波高欠損を補正するための新しい経験式を実験データを基に考案し、エネルギー決定精度を向上させることができた。Lr-259のデータは現在解析中であるが、TKEの低い対称核分裂の発生メカニズムを解明するための重要な成果が得られると期待している。 また今年度は、これまでに得られた成果を2件の国際会議で招待講演し、2件の国際会議で口頭発表した。更にエネルギー分解能に優れた新しいSi検出器を新たに購入し、その特性試験を開始した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
令和3年度にEs-254を入手して極微量Es-254標的の作製に成功し、それを用いて令和3年度末から4年度にかけて対称・非対称核分裂の競合が観測されると期待される中性子過剰Fm領域核Md-259の自発核分裂の測定に成功した。データ解析の結果、Md-259の自発核分裂片の質量分布とTKE分布の相関を精度良く導出することに成功し、これまでTKEの低い対称核分裂と考えられてきた成分が、異なる性質を持つ核分裂であることを示唆する非常に興味深い結果が得られた。上記の研究に関しては当初の計画通りに研究が進行し、期待以上の成果が得られた。 更に、Md-259の自発核分裂測定終了後、速やかにEs-254標的を溶解・再精製して標的を再作製し、令和5年度から6年度にかけて実施予定であった中性子過剰Fm同位体の対称・非対称核分裂の励起エネルギー依存性測定を前倒しで実施した。核子移行反応を用いて励起エネルギーの低い状態から高い状態までの広いエネルギー範囲で即発核分裂を測定することは実験条件の関係でできなかったが、捕獲反応を用いて励起エネルギー15~18 MeV程度の範囲での対称・非対称核分裂の混合割合の励起エネルギー依存性の測定に成功した。この研究に関しては、予定を前倒しして実施したため進捗が早く、励起エネルギー依存性に関しても非常に興味深い結果が得られ、期待以上の成果が得られた。 令和5年度には、Lr-259の自発核分裂測定実験を行い、統計量をこれまでの3倍に増やすことに成功した。これによりTKEの低い対称核分裂の発生メカニズムを解明するための精度の高いデータを取得することができた。 よって現在までの進捗状況としては、当初の計画以上に進展していると評価した。
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今後の研究の推進方策 |
令和6年度は、これまでに測定した中性子過剰Fm領域核の自発核分裂の実験データの解析を進め、特に質量-TKEの2次元分布の多成分解析手法を開発し、対称・非対称核分裂の競合やTKEの低い対称核分裂の分布形状を定量的に明らかにする。それらの実験データを揺動散逸模型を用いた理論計算の結果と比較し、対称・非対称核分裂の競合及びTKEの低い対称核分裂の発生メカニズムを解明する。自発核分裂の成果に関しては、解析終了後論文に取りまとめ、出版するとともに、学会等で発表する。Si検出器の波高欠損に関する新しい経験式についても、論文に取りまとめる予定である。Md-258の即発核分裂の励起エネルギー依存性に関しては既に論文を投稿済みであり、査読結果を受けて修正し、現在再投稿中である。
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