研究課題/領域番号 |
23K20856
|
補助金の研究課題番号 |
21H01110 (2021-2023)
|
研究種目 |
基盤研究(B)
|
配分区分 | 基金 (2024) 補助金 (2021-2023) |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分15020:素粒子、原子核、宇宙線および宇宙物理に関連する実験
|
研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
與曽井 優 大阪大学, 核物理研究センター, 特任教授 (80183995)
|
研究分担者 |
堀田 智明 大阪大学, 核物理研究センター, 准教授 (30332745)
|
研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
|
研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
|
配分額 *注記 |
17,810千円 (直接経費: 13,700千円、間接経費: 4,110千円)
2024年度: 2,730千円 (直接経費: 2,100千円、間接経費: 630千円)
2023年度: 2,860千円 (直接経費: 2,200千円、間接経費: 660千円)
2022年度: 2,860千円 (直接経費: 2,200千円、間接経費: 660千円)
2021年度: 9,360千円 (直接経費: 7,200千円、間接経費: 2,160千円)
|
キーワード | 光ー原子核反応 / ハイペロン励起状態 / 核媒質効果 / LEPS2スペクトロメータ / 中性子TOF検出器 / 光-原子核反応 |
研究開始時の研究の概要 |
本来軽いクォークから成る核子やその仲間であるハドロンが、如何にして質量を獲得するかの解明は、ハドロン物理学の重要な課題の一つである。カイラル対称性の自発的破れが質量獲得の重要な機構であるとすると、原子核内のような高密度下ではハドロンの質量が変化することが理論的に予言されている。 本研究は、3クォークから成るバリオン系に対して、比較的崩壊幅の小さいバリオン励起状態を光-原子核反応によって核内に生成し、その質量変化を測定することによって、質量の起源に対する知見を得えようとする研究である。
|
研究実績の概要 |
本研究では、SPring-8のレーザー電子光ビームライン(LEPS2)における大強度のGeV光子ビームを用いて、光-原子核反応により原子核中にハイペロン励起状態を生成させ、既設の大立体角スペクトロメータに新たに前方中性子検出器を加えて生成と崩壊に関与する粒子を捉え、測定された質量スペクトルを自由空間での質量や崩壊幅と比較して質量獲得機構やハイペロン励起状態と核子との相互作用を調べることを目的とする。 R5年度前期はR4年度後期に引き続き、R3年度に完成させた中性子検出器アレイを含めたLEPS2ソレノイド・スペクトロメータ全系を用いた実験を遂行し、液体水素及び液体重水素を標的とするデータの取得を行った。並行して実験データの解析を進め、タイムプロジェクション・チェンバーとバレル抵抗板チェンバーを主とする側方データにおいてはπ中間子、K中間子、陽子を識別することに成功し、K中間子原子核探索などの物理解析が進展している。また、中性子検出器のデータに対する較正も進んでいる。一方、前方に放出される荷電粒子に対しては、粒子識別のためにドリフトチェンバーと前方抵抗板検出器からの情報が必要であるが、抵抗板検出器のデータに不具合があることが判明し、本研究に必要な前方K中間子の識別ができていない。元々、R5年度の計画として、抵抗板検出器より容易に荷電粒子を区別するための補助検出器として新たにプラスチック・シンチレータ・アレイからなる飛行時間測定器を設置することを企図していたが、その緊急度・重要度が増したこともあり、旧LEPSビームラインで使用していたTOF検出器を移設することとし、R5年度後期にその作業を進め、3月にはデータ収集系の追加も含めて移設が完了して実験に供する準備が整った。また、前方抵抗版検出器の不具合の原因の究明も進め、一部の回路モジュールに原因があることが判明し、交換を行った。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度の研究実施計画は、「データの統計を更に上げるために継続して実験を行うとともに、これまで取得したデータの解析を進め、各検出器の較正と液体重陽子標的からの前方中性子放出を伴うハイペロン励起状態の同定を行う。一方、中性子TOF検出器からの信号が中性子によるものか荷電粒子によるものかを区別するためには、ドリフトチェンバーや前方抵抗板検出器などの他の検出器からの情報が必要であるが、解析が複雑で時間がかかっており、より容易に荷電粒子を区別するために新たに別のプラスチック・シンチレータ・アレイを設置することを計画し、他の実験で使用された既存の検出器の移設を進める」であり、研究実績の概要で述べたように、ほぼこの計画に沿って研究が進んでいる。これまで取得したデータにおいて前方抵抗板検出器のデータに不具合があり、前方に放出される荷電粒子の識別が困難であることから、前方中性子放出を伴うハイペロン励起状態の同定は既存データではできていないが、バックアップの飛行時間検出器として、旧LEPSのTOF検出器の移設は完了した。時間分解能は抵抗板検出器よりは劣るが、仮に前方抵抗板検出器の情報が無くても移設したTOF検出器により粒子識別が可能であることがシミュレーションによって確認されており、R6年度には本格的に本研究課題のための原子核標的を用いた実験データの取得が可能となっている。
|
今後の研究の推進方策 |
今後の研究の推進に関しては特に当初計画からの大きな変更はない。既に取得したデータからLEPS2ソレノイド・スペクトロメータの各検出器の較正と解析プログラムの整備を進めながら、R6年度は先ず移設したTOF検出器を含めた前方検出器系でのデータを取得し、データ収集系まで含めたシステムのチェックを行ったのち、液体重水素や原子核標的を用いた光-核反応実験を行う。原子核標的への変更時期はLEPS2ソレノイドスペクトロメータ実験の主目標であるエキゾチック・ハドロン粒子の研究を中心とする物理実験の進捗状況、及び、別の測定器であるBGOegg電磁カロリメータ実験のスケジュールにも依るが、R6年度中には本研究課題である、核媒質中でのバリオン励起状態の研究のためのデータを取得する。 本研究は研究代表者、研究分担者、研究協力者で密に協力しながら遂行するが、與曽井が研究全体の総括とスケジュール管理を行い、堀田及び研究協力者(柳善永)が中性子及び荷電粒子TOF検出器の較正・解析を担当する。本研究の遂行に必要なLEPS2スペクトロメータの運転や長期に渡る実験はLEPS2グループの全面的な協力・支援を受けて実施される。
|