研究課題/領域番号 |
23K20865
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補助金の研究課題番号 |
21H01126 (2021-2023)
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 基金 (2024) 補助金 (2021-2023) |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分16010:天文学関連
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研究機関 | 信州大学 |
研究代表者 |
三澤 透 信州大学, 学術研究院総合人間科学系, 教授 (60513447)
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研究分担者 |
柏川 伸成 東京大学, 大学院理学系研究科(理学部), 教授 (00290883)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
14,950千円 (直接経費: 11,500千円、間接経費: 3,450千円)
2024年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2023年度: 5,460千円 (直接経費: 4,200千円、間接経費: 1,260千円)
2022年度: 5,720千円 (直接経費: 4,400千円、間接経費: 1,320千円)
2021年度: 2,210千円 (直接経費: 1,700千円、間接経費: 510千円)
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キーワード | AGNアウトフロー / AGNフィードバック / 共進化 / 活動銀河核 / クェーサー吸収線 |
研究開始時の研究の概要 |
銀河中心巨大ブラックホール(SMBH)の周囲に形成される降着円盤から、輻射圧によって系外に放出されるガス流(アウトフロー)は、SMBHとホスト銀河の共進化に貢献していると考えられている。幅広い波長領域で検出されるアウトフローのなかで、なぜか紫外吸収線として検出されるものだけが銀河に与える影響が数桁小さく、連続性の観点から見ると明らかに不自然な状況にある。本研究では、高速アウトフローの詳細観測と、リアルタイムな加速状況のモニターを通して、アウトフローの生成から行く末に至るまでの全貌を解明することを目的とする。
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研究実績の概要 |
AGNアウトフローのフィードバック効率と加速機構を通して、その全貌を解明することが本研究の目的である。ひとつめのテーマである「フィードバック効率」については、他波長(X線~ミリ波・サブミリ波)の観測結果と比べて、紫外光で観測された吸収線 (BAL) によるフィードバック効率が数桁小さいという不連続性が問題として残されている。この問題を解決すべく、放出速度が大きい「高速BAL」に着目して、紫外アウトフローのフィードバック効率の評価を行った。 ふたつ目のテーマである「加速機構」については、線幅の小さい吸収線 (NAL) を対象とした加速度評価を行った。すでに解析用データ(世界主流の8-10メートル級望遠鏡で取得された高分散分光スペクトル)は揃っている。期待される速度変化は極めて小さいため、従来用いられてきた幅の広い吸収線 (BAL) ではなく、幅の狭い吸収線 (NAL) を調査対象にした。NALの速度変化の検出を行うためのコードの整備は順調に進んでいる。 さらに今年度は、BluDOGsとよばれるクェーサー形成初期にある天体と極めて似た性質を持つ天体が、遠方宇宙 (5 < z < 9) にも存在することを確認した。BluDOGsは、紫外輻射によってダストを吹き飛ばし、クェーサーに進化する前段階にある天体だと考えられている。このような天体はアウトフローを放出するという点で本研究とも密接に関わっており、AGNアウトフローのフィードバック効率の宇宙論的進化を追う上で重要な天体である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
計画全体としては順調に進んでいる。紫外アウトフローのフィードバック効率の評価については、高速BALを対象とした研究を進めている。フィードバック効率は放出速度の3乗に比例するため、他波長アウトフローとの間に見られるフィードバック効率の不連続性を、高速BALが解決する可能性がある。すでに解析を終えている1天体に対しては、不連続性問題が解決されている。今後はすばる望遠鏡の追加観測などを通してサンプル数を増やし、その一般性を検証する予定である。 アウトフローの加速機構の解明については、NALの放出速度の変化を通して研究を進めている。すばる望遠鏡をはじめとする、世界主流の8-10メートル級望遠鏡で取得された高分散分光データを用いることで、先行研究の4倍以上のサンプルを確保済みである。期待される速度変化(加速、または減速)は極めて小さいため、統計的な信頼度を上げるべく、膨大な数の疑似スペクトルとの比較が必要となる。この作業を効率よく行うための一連のコード整備はすでに完了している。
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今後の研究の推進方策 |
紫外アウトフローのフィードバック効率の評価については、すでに特定の天体に対する調査を終えているが、今後はサンプル数を増やした統計調査が不可欠である。すばる望遠鏡による観測時間の確保ができているため、少なくとも3天体に対する同様な解析が可能となる。これにより、波長横断的なフィードバック効率の連続性の検証が可能となる。アウトフローの加速メカニズムについては、NALの速度変化の有無、およびクェーサーパラメータとの相関を通して絞り込みを行う。予備解析の結果からは、明らかな視線速度を示すNALはほとんど存在しないことが分かっている。このことは、NALの加速に対して輻射圧はほとんど寄与していないか、あるいはNALをもたらすアウトフローがすでに終端速度に到達している(すなわち光源からの距離が大きい)可能性を示唆する。これらの結果をもとに、紫外アウトフローの生成(加速メカニズム)、現状(加速状況)、そして行く末(フィードバック効果)の統計調査に着手し、AGNアウトフローの全貌解明を試みる。
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