研究課題/領域番号 |
23K20884
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補助金の研究課題番号 |
21H01165 (2021-2023)
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 基金 (2024) 補助金 (2021-2023) |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分17020:大気水圏科学関連
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研究機関 | 国立研究開発法人海洋研究開発機構 |
研究代表者 |
内田 裕 国立研究開発法人海洋研究開発機構, 地球環境部門(海洋観測研究センター), 主任研究員 (00359150)
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研究分担者 |
前田 洋作 国立研究開発法人海洋研究開発機構, 技術開発部, 技術主任 (30725619)
粥川 洋平 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 計量標準総合センター, 主任研究員 (50371034)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
17,290千円 (直接経費: 13,300千円、間接経費: 3,990千円)
2025年度: 2,600千円 (直接経費: 2,000千円、間接経費: 600千円)
2024年度: 2,600千円 (直接経費: 2,000千円、間接経費: 600千円)
2023年度: 2,600千円 (直接経費: 2,000千円、間接経費: 600千円)
2022年度: 2,340千円 (直接経費: 1,800千円、間接経費: 540千円)
2021年度: 7,150千円 (直接経費: 5,500千円、間接経費: 1,650千円)
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キーワード | 塩分変化 / 海洋循環 / 気候変動 / 屈折率密度センサー / 標準海水 / 海洋深層 / 屈折率海水密度センサー / 低塩分化 |
研究開始時の研究の概要 |
再評価した塩分標準海水の認証値のバイアス補正を適用し、北太平洋底層の塩分変化を精密に評価する。係留観測による水温および屈折率海水密度センサーによる密度時系列データと合わせ、塩分変化のメカニズムを明らかにする。塩分バイアス補正を船舶観測による北太平洋の水温・塩分・密度・溶存酸素データに適用し、広域の底層水の長期変化との整合性を評価する。さらに密度の精密評価に基づき、海水の状態方程式の改定・国際標準化を目指す。
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研究実績の概要 |
塩分測定の国際標準であるIAPSO標準海水について、認証値のオフセットに関する研究をレビューするとともに、最新の知見をまとめた(論文受理:History of batch-to-batch comparative studies of International Association for the Physical Sciences of the Oceans standard seawater)。また、IAPSO標準海水の特性値の時間変化(ケイ酸塩の増加と全炭酸の減少)を明らかにした(論文受理:Changes in the composition of International Association for the Physical Sciences of the Oceans standard seawater)。さらに、マルチパラメータ標準海水の特性値の安定性を評価した(論文受理:Development of Multiparametric Standard Seawater (MSSW) for CO2 parameters, dissolved oxygen, and density of seawater)。これらの結果を基に、IAPSO標準海水とマルチパラメータ標準海水の比較から、IAPSO標準海水の実用塩分は1年あたり0.0001 PSU増加していることを明らかにした。再評価した認証値のオフセットと時間ドリフトを考慮し西部北太平洋で蓄積している船舶観測データを補正することで、北太平洋底層における等温度上の塩分変化を再評価した。従来の見積もり(10年あたり-0.0006 g/kgの低塩化)はIAPSO標準海水の時間ドリフトに起因するもので、実際には高塩化トレンド(10年あたり0.0003 g/kg)があることを発見した(論文投稿中)。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究では、深海の微小な塩分変化を検出するためのブレイクスルーとなりうる2つの技術:既存の塩分計より分解能が高い屈折率海水密度センサーと、10年スケールで密度・塩分が安定しているマルチパラメータ標準海水を塩分測定に導入している。マルチパラメータ標準海水の導入により、塩分測定の国際標準であるIAPSO標準海水の時間ドリフト(1年あたり0.0001 PSU)を明らかにしたことは、海洋深層の塩分変化の評価に極めて重要な成果である。海洋深層の微小ではあるが検出可能な変化を正しく評価することで、深海環境の変化のメカニズムを正しく理解することが可能になった。屈折率海水密度センサーについては、新型コロナウイルス感染拡大の影響で、海洋底層での係留観測の実施が遅れたが、2023年8月から海洋底層での係留観測を開始した(2024年10月回収・再設置予定)。また、2023年度から大洋を縦横断する高精度船舶観測でデータの蓄積を開始した。さらに、屈折率海水密度センサーを高精度に校正するために、マルチパラメータ標準海水の密度を認証するための液中秤量装置を改良し、温度・圧力が一定の元で標準海水の密度を認証することが可能になった。
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今後の研究の推進方策 |
塩分測定の国際標準であるIAPSO標準海水の認証値のオフセット評価とマルチパラメータ標準海水との比較を継続する。再評価したIAPSO標準海水の認証値のオフセットと時間ドリフトを考慮し、船舶観測で取得する塩分データを高精度に補正する。西部北太平洋の底層で発見した等温度上での高塩化トレンド(10年あたり0.0003 g/kg)の原因を明らかにするために、海底直上に設置した温度センサーで得られた12年間の時系列データを基に底層水温の長期トレンドの大きさを精密に評価する。これを、等温度上での高塩化トレンドの大きさや溶存酸素の変化の大きさと比較し、変化のメカニズム:「純粋な昇温による見かけ上の高塩化」、あるいは、「等密度面の深度変化および純粋な高塩化」のどちらかを探る。そして、海底直上に設置した屈折率海水密度センサーから底層での微小な塩分変化を検出することで、変化のメカニズムの検証を目指す。さらに、再評価したIAPSO標準海水の認証値のオフセットと時間ドリフトの補正を、太平洋を縦横断する高精度船舶観測データに適用することで、太平洋全域で海洋深層の海水特性値・深層循環の長期変化の実態の解明を目指す。
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